都知事選の結果は今後の国政にどのような影響を与えるか

7月5日(日)に投開票が行われた東京都知事選挙について、再選を果たした小池百合子都知事がいかなる課題に取り組むべきかについては一昨日の本欄で、また、得票数と得票率からみた選挙の概要については昨日の本欄で検討した通りです[1],[2]。

そこで、今回は、都知事選挙の結果を受け、今後の国政与党と野党の動向を検討します。

まず、2019年3月4日にいち早く小池百合子都知事の再選を支持する意向を明らかにし[3]、その後も一貫して小池氏との連携を維持した自民党の二階俊博幹事長は、得票数と得票率の点で圧勝したことで、改めて政治的な感覚の鋭さを示したと言えます。

そして、今年9月で任期満了を迎える幹事長職についても、留任の可能性を高めたことが推察されます。

次に、立憲民主党、共産党、社会民主党の三党が連合して宇都宮健児候補を推薦し、いわゆる「野党共闘」の体制によって都知事選に臨んだものの、結果が不振であったことから、安倍晋三首相に衆議院を早期に解散し、総選挙を断行しようと考える余地をもたらしました。

何故なら、衆議院における野党第一党である立憲民主党と第二党の国民民主党が連携や合流を模索するものの議論が停滞し、共産党や社会民主党との共闘では集票力に限りがある可能性が認められたため、野党側の体制が整う前に総選挙を行い与党の勢力を安定させることは合理的な戦略となったからです。

もちろん、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の徹底や自然災害への速やかな対応が求められる中で総選挙を行うことは、有権者の顰蹙するところかも知れません。

しかし、例えば「これまでの新型コロナ対策に対する信を問い、国民の支持の下により強力に対応するため」といった題目を掲げれば、表面的であるとはいえ体裁は整います。

一方、野党側については、今回の都知事選挙で党勢を拡大したかのように見えるれいわ新選組や日本維新の会に比べ、「野党共闘」を行った三党は準備不足を露呈し、国民民主党も党の方針が定まらない様子を示しています。

特に、2016年と2020年の都知事選の結果を詳細に検討すれば、「告示直前になって勝てそうな候補にとびついても、告示直前で共闘をめぐってもめていても、それではもう勝負には絡んでいない」のであり、「その地域地域での対抗馬を育てていく必要がある」[4]ことが分かるだけに立憲民主党などは衆院選への対応を速やかに行わない限り、与党の後塵を拝する結果になりかねません。

その意味でも、今回の都知事選が国政に与える影響は、小さくないと考えられるところです。

[1]鈴村裕輔, 都知事選で圧勝した小池百合子都知事は何をなすべきか. 2020年7月6日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/fd6ae6fed61efb74e8516c5e28a02b14?frame_id=435622 (2020年7月8日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 得票数と得票率でみる東京都知事選挙. 2020年7月7日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/293ad23393d1441c009d9a63a1184e8a?frame_id=435622 (2020年7月8日閲覧).
[3]二階氏発言 党内を刺激. 日本経済新聞, 2019年3月6日朝刊4面.
[4]三春充希, 小池氏の票はどこから来たのか? 大差になったのはなぜなのか?. 2020年7月8日, https://note.com/miraisyakai/n/n060eff0ce96d (2020年7月8日閲覧).

<Executive Summary>
What Is an Influence of the Tokyo Governor Election 2020 for the Future of National Politics? (Yusuke Suzumura)

The Tokyo Governor Election 2020 was conducted on 5th July 2020. In this occasion we examined its influence for the future of national politics.

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