【2020年都知事選】小池氏の票はどこから来たのか? 大差になったのはなぜなのか?
2020年7月5日に行われた東京都知事選挙は、現職の小池百合子氏の圧勝に終わりました。ここで小池氏の得票率の分布を見ると、渋谷区で最も低く、そこから離れるにつれて同心円状に高くなっていることが明らかです。
しかし2016年に行われた前回の都知事選で、小池氏の票にこのような傾向は見られませんでした。当時はむしろ都心に近いほど高くなっています。
小池氏の得票率の高い地域は、なぜ図2から図1へと変化したのでしょうか。ここではその理由を地域分析から解き明かしていきます。
自民が不在の都知事選
2016年の都知事選の有力候補について、構図と結果を下にまとめました。このとき自民党が推薦したのが新人の増田寛也氏です。
けれども2020年の都知事選には、自民党が推薦する候補がみられません。
2020年の都知事選では自民党の候補が不在となっていたわけです。すなわち選挙のはじめから、そもそも大量の自民支持層の票が宙に浮いた状態にありました。
小池氏の票はどこから来たか
2020年の小池氏の得票率(図1)から2016年の小池氏の得票率(図2)を引き算し、どこでどの程度の増加があったのかを明らかにする地図を作りました(下図5)。都心に近いほど増加が小さく、離れるにつれて大きくなる傾向が読み取れます。
この図5の分布を再現しうるデータを探したところ、次の結果を得ることができました。この図6は、2016年の増田氏の得票率から2020年の小野氏の得票率を引いた分布です。
これはつまり、②増田氏の票のうち、小野氏に流れなかった分が、①小池氏の得票率の増加分とかなりよく一致するということです。図5と図6の高い整合性に驚かれる人は少なくないのではないでしょうか。
2020年の小野氏の得票率の分布も下に示しました。この図7は、ちょうど裏返しにあたるものとなっています。
2016年都知事選の増田氏の票は、小野氏と小池氏に分配されるように流れていったのです。その分配のされ方は、都心ほど小野氏に流れ、都心から離れるほど小池氏に流れるというように、同心円状に分布していたことがこれでわかりました。
下の図8に示すように、東京の維新は西で弱く東で強い傾向がありますが、小野氏はそれとは少しずれている分もあるので、それは選挙運動のやり方などの個別の理由になるように思われます。
大差になったのはなぜなのか
2016年当時にいた自民党推薦の候補(増田氏)は、2020年にはいませんでした。ですから増田氏の179万票は宙に浮いていたわけです。それが2020年の選挙では小池氏と小野氏に流れ込んだことをここまでに見てきました。これが意味するのは、立憲・共産・社民やれいわが、そこにほとんど食い込めなかったということです。
確かにもともと自民党の候補に投じられた票なので、国政野党とは距離があるのは当然です。しかし今回は、その票をまとめる中心となる存在(自民党の候補者)がいないので、この票は流動性を持っていたはずです。
この宙に浮いた票に野党がことごとく食い込めなかったこと、他方で小池氏が大きく取り込んだことが、大差の結果をもたらしたのではないでしょうか。
長い目で見た準備を
野党側は今回の敗北を直視して、やり方を見直す必要に迫られると思います。告示直前になって勝てそうな候補にとびついても、告示直前で共闘をめぐってもめていても、それではもう勝負には絡んでいないのです。
小池氏は2020年のはじめから優位に立っており、3月から5月にかけてコロナ対応で支持率を上げると独走態勢に入りました(会見などで露出が増えるため、コロナ対応は現職に大きくプラスに働きます)。
告示前の頃、山本氏と宇都宮氏で統一できないかということが問題になっていたとき、小池氏とはおよそ5倍差がありました。「一本化できず候補者が割れてしまったから」「テレビ討論がなかったから」「マスコミの報道が少なすぎたから」負けたのではありません。はじめから途方もない差があったのです。
今回のことに学ぶなら、選挙が近くなって候補者を決めるのでは遅いということになると思います。勝負にするならもっと長い目で見て時間をかけながら、その地域地域での対抗馬を育てていく必要があるのでしょう。インスタントな選挙をやっていては体力がつきません。だからこそ、選挙までの準備が大切になるのだと思いました。