立憲民主党と国民民主党は合流を実現できるか

昨日、立憲民主党の福山哲郎幹事長と国民民主党の平野博文幹事長が会談し、福山氏が両党が一度解散して新党を結成した上で党名を「立憲民主党」とする案を示す一方、平野氏は持ち帰って議論すると回答しました[1]。

立憲民主党側が両党の解党による新党の結成を提起したのは、1996年に発足した民主党が、1998年に民政党、新党友愛、民主改革連合を吸収した際、民主党の議員は全員が離党して再度入党し、それ以外の政党は解党した先例を踏まえた措置と言えるでしょう。

民主党とその後進の民進党に由来するという立憲民主党と国民民主党の特徴を考えれば、新党の結成の方法や略称を「民主党」とすることなどは一定の合理性があると考えられます。

福山氏による「政権交代を果たした知名度のある政党名だ。有権者の親近感も大きい」[1]という指摘は、このような点を踏まえた発言です。

その一方で、確かに「民主党」という名称には「知名度」や「親近感」があるとはいえ、政権を獲得した後は政権公約の実現よりも党内の主導権争いが優先され、最後は消費税の増税を巡って党が分裂し、下野を余儀なくされた民主党に対する「イメージが悪い」という指摘[2]もあります。

あるいは、2016年に民主党と維新の党による民進党が発足した理由の一つが民主党の印象の刷新[3]であったことを考えれば、福山氏の発言はこの4年間で有権者の「民主党」に対する印象が好転したのでなければ、故意であるか否かは別として、過去の経緯が忘れ去られたことになります。

1998年の民主党と他党との合流においても、党の基本理念を巡り保守中道と中道左派とが対立し、最終的に両者を合わせる形で「中道民主」となるなど[4]、政党の集合には大小様々な相克が生じます。

今回の場合も、野党第一党である立憲民主党と野党第二党の国民民主党の合流ではあるものの、実際には各種の世論調査で支持率が振るわない後者を支持率の高い前者が吸収しようとし、それ故に吸収される側が難色を示し続けているのは周知の通りです。

それだけに、立憲民主党側はいかにして国民民主党の体面を保ちながら合流の環境を整えるかが重要な課題となりますし、国民民主党は面目に拘泥して合流の機会を逸することが党勢にいかなる意味を与えるかを十分に見極めなければなりません。

何より、一時は頓挫した両党の合流が再び話題となった最大の理由が東京都知事選挙における「野党共闘」の結果が不振であったこと[5]に求められるだけに、速やかな新党の結成を実現できなければ、解散総選挙の足音は確実に近付くことになるでしょう。

[1]新党「立憲民主」 立民が合流提案. 日本経済新聞, 2020年7月16日朝刊4面.
[2]首相 民主政権「悪夢」発言. 読売新聞, 2019年2月13日朝刊4面.
[3]民進党発足 衆参156人. 読売新聞, 2016年3月28日朝刊1面.
[4]小西德應, 竹内桂, 松岡信之, 戦後日本政治の変遷. 北樹出版, 2020年, 120頁.
[5]鈴村裕輔, 得票数と得票率でみる東京都知事選挙. 2020年7月7日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/293ad23393d1441c009d9a63a1184e8a?frame_id=435622 (2020年7月16日閲覧).

<Executive Summary>
Will the CDPJ and the DPFP Be Able to Realise to Merge? (Yusuke Suzumura)

The Constitutional Democratic Party of Japan and the Democratic Party For the People restarted a discussion to merge on 15th July 2020. It is very remarkable opportunity for them, since they have not enough power to compete against the Liberal Democratic Party and small powers have to become a mightier unit.

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