英国スターマー政権の今後はいかなる歩みとなるか

去る7月4日(木)に行われた英国の総選挙では、与党保守党が改選前から251議席減の121議席と惨敗する一方、労働党が改選前の2倍を超える211議席を増やして412議席とし、単独で下院である庶民院の過半数を獲得しました[1]。

これにより、労働党のキア・スターマー党首が同党として14年ぶりの首相に就任しました[2]。

今回の選挙の結果はジョンソン、トラス、スナクと3代にわたり国民の信頼を失ってきた保守党が招いた当然の帰結であることは明らかです。

また、ジョンソン氏が約3年1か月、トラス氏が44日、スナク氏が約1年8カ月と、英国の首相としては任期が比較的短く、総選挙を経ないまま党首選挙という党内の手続きのみで政権の移譲が行われたことでその正統性が問われたことも見逃せません。

特にトラス首相の任期については英国の憲政史上で最短であるばかりでなく、例えば英国に比べて首相の在任期間が短い日本の場合と比べても、異常な事態であったことが分かります。

すなわち、日本の最短記録である東久邇宮稔彦内閣の54日を下回ったことは、トラス政権だけでなく保守党の統治能力を疑わせるには十分なものであり、こうした点にも政権党としての末期的な症状が現れていたと言えるでしょう。

一方、保守党の勢力の後退を見て政権を獲得するために急進的な主張を抑え、EU離脱の結果に失望した有権者の意向を汲んで中道的な政策を掲げてEUとの関係改善を標榜したのは、トニー・ブレア氏が労働党から左派的な要素の多くを抜き取り、中道政党に移行したことで政権を獲得した故事に倣う、現実主義的な対応がもたらしたものと言えます。

それだけに、公約をどの時期にどの程度まで実現できるかは政権に対する有権者の信頼を獲得するためには必須です。

そして、もし党内の調整に失敗して公約の多くを実現できなかったり、党内の主導権争いが起きたりすれば、スターマー首相が政権運営に行き詰まることは明白です。

末期の保守党政権がそうであったように、党内の争いは政権の根幹を揺るがし、最終的には有権者の信頼を失うことに繋がりかねないだけに、輿望を担って内閣の首班となったスターマー首相の手腕がどのように発揮されるのか、今後の英国の政治の動向が大いに注目されます。

[1]General election 2024 results. House of Commons Library, 7th July 2024, https://commonslibrary.parliament.uk/research-briefings/cbp-10009/ (accessed on 11th July 2024).
[2]Starmer vows to serve whole UK as new Labour. BBC, 5th July 2024, PMhttps://www.bbc.com/news/articles/crge8g9qxj3ohttps://www.bbc.com/news/articles/crge8g9qxj3o (accessed on 11th July 2024).

<Executive Summary>
What Is the Future of the Starmer Ministry? (Yusuke Suzumura)

The UK General Election was held on 4th July 2024, and the Labour Party won the 412 seats and Party Leader Sir Keir Starmer became the Prime Minister. On this occasion, we examine the future of the Starmer Ministry while referring to the past political situation of the United Kingdom and Japan.

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