田中優子先生の連載「あすへの話題」について思ったいくつかのこと

昨日、日本経済新聞夕刊の連載「あすへの話題」のうち、今年1月5日(火)から毎週火曜日に掲載された田中優子先生の担当分が終了しました。

第1回目の連載の冒頭で「2021年1月5日は旧暦ではまだ11月22日である。「新春」という言葉がぴんとこないわけだ。」と暦の違いに触れつつ、「絵の中に数字を隠して謎解きをする暦まであった。暦に凝ったことで、浮世絵がカラー印刷に技術発展したのである。」[1]とご自身の専門である江戸時代の文化が持つ特徴の一端を象徴的に描き出す様子は印象深いものでした。

その後も、折々の世相と大学教員や研究者の日常生活の様子を結び付けたり、総長として学長が理事長を兼ねる法政大学の制度を反映しつつ「コロナ下」の大学経営を模索する議論が紹介されたことは、大学や研究者と取り巻く状況をより平易な言葉で伝えるために大きな意義持っていたと言えるでしょう。

また、大学のあり方そのものについても、私立大学の場合に最も重要なのが「自立性の確保」であり、形式的に一律の規則に従うのではなく、所定の規則とは異なることで公平さが確保される場合には理由と方法を示すことで「多様でありつつしっかりしたガバナンス」[2]を実現できると指摘されるなど、事柄の本質に迫る議論がなされていた点も、印象的でした。

あるいは、田中先生の特長として広く知られている着物の利用についても、どのような経緯で日常的に身に着けるようになったかが簡潔に紹介されており[3]、興味深く思われたものです。

この他、今年5月22日(土)に法政大学大学院国際日本学インスティテュートが主催した田中優子先生の講演会「国際日本学としての江戸学」の様子が紹介されたこと[4]は、当日の聴講者の一人として、感慨深いものでした。

田中優子先生の連載は昨日で終わりながら、全24回の記事と他の随筆などをあわせ、いずれ書籍として刊行されることが期待されるところです。

[1]田中優子, 江戸の正月. 日本経済新聞, 2021年1月5日夕刊1面.
[2]田中優子, ガバナンス・コード. 日本経済新聞, 2021年4月13日夕刊1面.
[3]田中優子, きもの. 日本経済新聞, 2021年6月8日夕刊1面.
[4]田中優子, 競う心. 日本経済新聞, 2021年6月15日夕刊1面.

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Professor Yuko Tanaka's Essay on "Topics for Tomorrow" (Yusuke Suzumura)

Essay written by Professor Yuko Tanaka of Hosei University was run on the Nihon Keizai Shimbun on 5th January through 29th June 2021. In this occasion I express miscellaneous impressions of Professor Tanaka's essay.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?