「小池百合子都知事の出馬表明」はどのような意味を持つか

昨日、東京都の小池百合子知事が東京都議会本会議において7月7日(日)に投開票される都知事選挙への立候補を表明しました[1]。

都知事選にはすでに立憲民主党を離党した蓮舫参議院議員が立候補の意向を示す一方で、自民党は独自候補は擁立せず小池氏の支援を表明しています。

そのため、現職である小池氏と新顔である蓮舫氏を中心として展開されることが予想される今回の都知事選挙は、両者の対立を軸に行われるでしょう。

一般に現職と新顔の対決となる選挙の場合、前者はこれまでの実績を強調するとともに政策の継続性の重要性を唱え、後者は現職の政策の不十分さや問題点を挙げて諸政の一新を主張します。

ただ、実際には国に先駆けて行っている政策や他の道府県より充実した制度が導入されているのが現在の東京都であり、それらの政策や制度の少なからぬものが小池氏の下で取り組んだ結果です。

例えば子育て世帯への支援やいわゆる私立高校の無償化などは小池都政の重要な成果となります。

もし小池氏の政策や成果を批判する際に対象者の好評を博している上記のような取り組みをも批判すれば、当事者のことをよく知らない、都政の実際に疎い候補者として有権者の嫌気するところとなりかねません。

一方、小池氏も過去の成果のみを強調し、具体的な政策は従来の内容と変わらないとすれば、都政の一層の発展に対する意欲が高くないと思われることになります。

特に依然として国政への復帰の噂が絶えない小池氏だけに、有権者から都知事の職を全うする意志がないと思われてしまえば、どれほど現職が有利とされる首長選挙であっても安閑としていられない状況に直面します。

その意味で、現職である小池氏は3選を目指す姿勢に他意はなく、あくまで都政の発展に尽力することを具体的な政策の中で訴えなければなりませんし、有力の中で最も有力な新顔である蓮舫氏は小池都政の全てを否定するのではなく、現にある優れた政策を一層より良いものとし、改めるべきものを具体的に改善するという柔軟な対応を取ることが求められます。

何より、都政は都知事のためのものではなく、一人ひとりの都民のためのものなのですから、党利党略、個利個略を離れ、大局的見地から東京都のよりより将来の重要な一歩を印すことを期すのでなければ、有権者が重要な一票を行使する意欲を失いかねません。

それだけに、6月20日(木)の告示日から行われる選挙戦の中で、「与野党対決」といった狭隘な状況を脱し、都民のための都政を実現するために最大の努力が払われることが期待されます。

[1]事実上の与野党対決へ. 日本経済新聞, 2024年6月13日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Tokyo Governor Yuriko Koike's Announcement of Candidacy? (Yusuke Suzumura)

Tokyo Governor Yuriko Koike announced to enter the Tokyo Governor Election 0f 2024 on 12th June 2024. On this occasion, we examine the meaning of this announcement.

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