「ウクライナ問題」の解決のために求められる一層の外交的努力

昨日、ウクライナ各地に侵攻したロシア軍は首都キエフを包囲する一方、ロシアのプーチン大統領はウクライナとの停戦交渉を行う用意があることを表明しました[1]。

ロシア軍が軍事施設や空港などを制圧してウクライナの制空権を掌握したこと[2]は、ウクライナ政府に対する威嚇にほかなりません。

また、プーチン大統領は停戦交渉をロシア国内ではなくベラルーシで行う意向を示しているものの[1]、ウクライナ問題に関してベラルーシがロシアと一体となって行動していることを考えれば、ロシアはウクライナと対等の条件で交渉するのではなく、相手に対して優越する立場を活かしつつ、自らに有利な状況で交渉を妥結しようと考えていることも明らかです。

今後、ロシアはウクライナのゼレンスキー政権との間で自国の権益を拡張に資する停戦合意を行い、その後新たにゼレンスキー大統領の退陣と親ロ政権の樹立により、ウクライナを実質的な支配下に置くという方策を取る可能性があります。

ところで、米欧を中心とする各国は、現時点でロシアへの対応で基本的には結束しています。

一方で、世界の1万を超える金融機関が決済ネットワークに使用する国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを追放し、国際決済から完全に排除するという強硬ながら実現性に疑問の余地のある案が示され、反対の意見が出されるなど、各国の連携は必ずしも万全とは言えません。

何より、経済制裁であれ金融制裁であれ、どのような制裁も効果が表れるまで一定の期間を要することを考えれば、様々な対策はロシアを追い込むためというよりは各国の連携を象徴する行為という側面が強いものです。

そのため、各国はロシアと長期にわたり対峙する強固な意志を備えていることを示すのでなければ、早晩ロシアの懐柔により結束が綻び、ついには「ロシア包囲網」そのものが崩壊しかねません。

その意味でも、外交上の取り組みにより事態を収拾するための努力は、これまで以上に重要になると言えるでしょう。

戦争が始まったから外交は無用となる、ということは決してないのです。

[1]ロシア軍、首都キエフ包囲. 日本経済新聞, 2022年2月26日朝刊1面.

[2]軍事施設を狙い撃ち. 日本経済新聞, 2022年2月26日朝刊2面.

<Executive Summary>

Do We Need Diplomatic Efforts to Solve the Russo-Ukrainian Conflict? (Yusuke Suzumura)

The Russo-Ukrainian Conflict began on 24th February 2022 is a serious issue for the international society. In this occasion we need to solve the situation not military strength but diplomatic efforts.

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