「安倍元首相の国葬終了後」に岸田文雄首相に求められるのは何か

昨日行われた安倍晋三元首相の国葬儀について、実施を決定した岸田文雄内閣が十分な説明を行ってこなかったことが賛否の対立を深めた一員であるという点を本欄で指摘しました[1]。

しかし、当事者にとってこうした見方は、たとえその通りであると了解されていても認めることが難しいのは明らかです、何故なら、ひとたび説明の不十分さを認めれば、国葬の正当性そのものが失われかねないからです。

それだけに、昨日自民党の萩生田光一政調会長が国民に対する政府の思いが伝わらず、野党にも丁寧に説明することが必要であったと指摘したこと[2]は遅きに失するばかりでなく、当事者として事柄に取り組もうとする意欲に欠ける、適切さを欠く発言であったといえるでしょう。

それとともに、安倍氏の国葬は昨日で終わったとしても、開催の決定に至るまでの検討の過程が適切であったのか否か、国葬の実施に関する明確な基準を設ける必要があるのか否か、あるいは今回の経費が適切な金額であったのか否かといった事項について、今後の国会の審議の中で検討し、結果を公表することは、政府にとってのみならず、与野党にとっても重要な措置となります。

もし、こうした対応を行わず、政府・与党が「国葬は終わった」と適切な対応を怠り、野党も国民の関心が薄れるのに従って検証を十分に行わなければどうなるでしょうか。

国民の政府や政党に対する失望を招き、最終的には政治への関心の低下を加速させかねません。

その意味でも、国葬を実施することを主導した岸田文雄首相には、行政府の長としても立法府の一員としても、主体的に議論を行うことが求められるのです。

[1]鈴村裕輔, 安倍晋三元首相の国葬を巡る重要な問題点は何か. 2022年9月28日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/f3a3c38d423dc0ab6947a80bd135f13b?frame_id=435622 (2022年9月28日閲覧).
[2]国葬参列、割れた野党. 朝日新聞, 2022年9月28日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Prime Minister Fumio Kishida against Former Prime Minister Shinzo Abe's State Funeral? (Yusuke Suzumura)

The State Funeral of Former Prime Minister Shinzo Abe was held yesterday. After the end of a national funeral, what is required for Mr. Kishida is to examine its validity and legitimacy as soon as possible at the both diets.

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