見出し画像

自己責任ローグライク「LOOP HERO」で時間が溶けた

ローグライクゲームは面白いですよね。
自分でダンジョンに潜り、アイテムを拾ってはどうやって敵を倒していくか戦略を立てたり、運要素に振り回されて思い通りにいかなかったり。それでもそこから立ちなおせたりするとまた、他のゲームでは味わえない気持ちよさが生まれるものです。

しかし、割とどのゲームもキャラクターやビジュアル、システムに多少の差はあるものの、ゲームの骨格部分は似たようなもの。変わらない良さもありますが、革新的なゲームの魅力も欲しいもの。

そんな、ローグライクの良さと革新性、どちらも兼ね備えたゲームが発売されました。



LOOP HERO

このゲーム、もちろん基本的にはローグライクなんですよね。
いわゆる風来のシレンとか、トルネコの大冒険とか。ダンジョンに潜って、アイテムを手に入れて、敵を倒して、最終的にボスを倒したらクリア。
ただちょっと違うところがあって、それがまた面白く、あっという間に時間が溶けたので紹介します。



「ぐるぐる円をループする」ダンジョン

「LOOP HERO」という名の通り、主人公が探索するダンジョンは円になっている一本道なんです。(↓の画像のような道がランダム生成される)
その形状は毎回違いますが、変わらないのはマップが全てマスに分けられた円状というところ。画面に収まるくらいの大きさです。ここを主人公が自動でぐるぐる回るのが基本となります。

画像1

ぐるぐる回るんですが、それだけではなく一定時間ごとにモンスターがマスに沸くんですよね。

そのモンスターのいるマスを通ったら、戦闘が始まります。勝つことで、戦利品として「マップ用のカード」や「装備」が手に入ります。これを活用してどんどん自分に有利な環境を作ったり、装備を整えたりして先に進んでいくのが、このゲームの基本となります。

ダンジョンに階層などは無いんですが、その代わりに周回するごとに敵が強くなります。ある意味、自分のペースで敵と戦うことは出来ず、周回する間に装備やマップなど次の周回の準備をしないといけません(後述)。計画を持たずに周回していると、あっという間に強くなった敵にやられてしまいます。考えて行動しながら、ぐるぐると回る主人公を見守ります。



「自分で作る」ダンジョン

敵を倒して手に入れた「カード」を、マップ上に「配置」します。これはダンジョン(主人公の通る道)の上に配置できるものや、道の横に配置できるもの、逆にそれらから離れた場所に配置するものなどがあります。

画像2

例えば、「木立」カード。これをダンジョンに配置すると、一定時間で狼のモンスターがそのマスに発生します。一方で、そのマスを主人公が通ると、木材のアイテムが手に入ります。このアイテムは、クラフトに必要なため沢山集めるほど多くのものをクラフト出来るようになります。
「敵」というマイナス要素と、アイテムというプラス要素、どちらも手に入るようになるのです。

一方、「山」カードは、ダンジョンの道やそのそばには配置できず、それらに関係の無い、少し離れた場所に配置することが出来ます。
このカードは、主人公の最大HPを増加させることが出来ます。沢山配置するほど、主人公が強化されていくのです。

この「自分でマップを構築する」というのが、どこかシムシティ的なシミュレーションゲームにも似通っていて、クセになるポイントです。

画像3




装備はダンジョンで調達、しっかりローグライク

敵を倒して手に入るのはマップ用カードだけではなく、装備も手に入ります。単純な攻撃力や防御力だけではなく、吸血(ダメージの数%分HP回復)や攻撃速度アップなどの追加効果もあるので、取捨選択の面白さに繋がります。
このあたりは運要素が強めなので、敵を倒すことで何が手に入るか、ワクワク感を生んでいるところです。

画像4

・敵を倒すことで手に入れたカードで有利な環境を構築
・敵の出現数をコントロールし、手に入れた装備を整える
・環境と装備を整え、周回後の強くなった敵に備える

これを延々と繰り返し、後に出現する強力なボスを倒す。これがこのゲームの基本となります。



敵を「倒したくなる」ゲームデザイン

敵を倒すことで、「マップカード」「装備」が手に入ることを紹介してきました。
このゲーム、他のローグライクでより深い階層に入ることと、ダンジョンをループすることがほぼ同義です。主人公は自動でダンジョンをぐるぐる回るのですが、回るほどに敵が強くなる。自動的に強くなるのです。そこは、敵の強化スピードを自分ではコントロールできないということとほぼ同義です。「この階層に留まってレベルを上げよう」ということが出来ないんですよね。

ではどうするかというと、敵をちゃんと倒して、マップカードで環境を整えたり、強い装備を手に入れないといけません。そもそも、敵と戦わなければそれらを手に入れるチャンスがなくなるので、とにかく敵を倒したくなるモチベーションに繋がっていくのです。レベル上げが自由に出来ないので、なるべく多く敵を倒したほうが、後々のためにいいわけですから。

画像5

ちなみにですが、戦闘は一切プレイヤーは操作できません。装備品で決まった攻撃力、防御力、攻撃速度などが計算され、自動で戦闘が進みます。何一つ、手助けは出来ません。見ているだけしか出来ません。

画像7

では、敵が増えるようにどんどんマップを構築すればいいのか。
それが、そうもいきません。



敵を倒すことと周回するバランスが抜群。

ボスを倒すには強い武器や有利な環境が必要。そのためには敵を多く倒すことが必要。
そして、敵を多く倒すためには工夫が必要です。マップカードの中には、先ほど紹介した「木立」カードのように、敵の発生を促進するカードがあります。なので、純粋に敵を倒したければどんどん敵が発生するマップカードをダンジョンに配置していけばいいのです。周回し、そのマスに到達するたびに敵と戦うことが出来、いい装備を手に入れられる可能性が高まります。

画像6

しかしここがこのゲームの面白いところ。敵と戦いたいがゆえに敵が発生するカードを多く配置すると、それだけ「周回出来る可能性が減る」のです。

どういうことかと言いますと、敵が増えればそれだけ、主人公が敵に負けてゲームオーバーになる可能性が高くなる、ということです。
それはそうですよね。1周する間に敵が5体しかいなかったら敵に倒されることは無いでしょう。でも、50体では周回は難しいと思います。
ダンジョンを1周する間に、レベル1の敵が50体いても倒せるかもしれません。しかし、2周目に入った瞬間、レベル1の敵が全員レベル5になったら。もう1周したら、レベルが10になったら。
もちろんその周回の間に強力な装備や有利な環境を構築できれば問題ありませんが、無尽蔵に増やすだけでクリアできるほど甘いバランスでは無いのがこのゲームです。
装備や敵の発生スピードを考えて、どこまで増やすべきか(カードや装備が手に入る可能性を高めるか)、そしてどこまで敵を増やした段階でストップをかけるか。戦略を練る必要があります。

補足ですが、このゲーム、自由にHPの回復はできません。HPの回復は、ダンジョンを一周して、周回のスタート地点(たき火)にたどりつくこと。
またはランダムで手に入るカードの中で村カードを引き当て、ダンジョン内に設置し、通過すること。キャンプを通過しても、HPは最大HPの3割しか回復しかされません。また、ダンジョンを周回中一定の時間が経過するたびに回復はしますが、これも全回復ではありません。
※たき火...通過するごとに最大HPの30%回復
※村...通過するたびに15+5×ループ数分のHP回復


その他回復方法もありますが、基本的に物凄く回復は出来ないと考えたほうが良いです。
敵を倒して強い装備やいいカードを手に入れたいという気持ちのあまり、バンバン敵を増やすと、逆にその敵に負けてしまう。しかし、敵を増やさないと主人公がどんどん周回して、敵がそれに比例してどんどん強くなっていく。そのバランスが難しく、面白いのです。敵を増やすも減らすも自分次第。そして、敵を多くし過ぎるとゲームオーバー。
ただそのゲームオーバーは、運というよりは高い確率で自分のマップカードの配置ミス。この駆け引き、ある意味自分との駆け引きが非常に魅力的で、「まだいけるだろう」と「もうやめとこう」のせめぎ合いが素晴らしく、危うい自己責任のバランスの上に成り立っているゲームです。



ダンジョン→建設→強化→ダンジョン

前述した通り、アイテムの中にはクラフトの材料となるものがあります。
それを持ち帰ることにより、主人公がいる居住地(キャンプ)を発展させることが出来るのです。何かの施設を建設することで、主人公が再びダンジョンへと向かう際に多少のバフが加えられます。また、新しい役職やマップカードの開放もされるので、戦略が広がります。
例えダンジョン中に敵にやられて倒れても、取得したクラフト材料の30%は持ち帰られるので、ダンジョンに挑めば挑むほど施設建設が可能になり、攻略・ボス撃破が近づきます。

画像8



ループするか、やめるかの選択が絶妙

目的は数ループ後に出現(おそらくマップカードの配置数で出現)するボスを倒すことですが、前述の通りクラフト用アイテムを持ち帰って施設建設を行うほど、次回ダンジョンに潜ったときに有利になります。なので、そのための材料を持ち帰るのは重要です。持ち帰る方法は下記の通りです。

 ・ダンジョンのスタート位置に主人公が戻ってきたときに、キャンプへ戻る選択をする - 100%持ち帰り
・ダンジョンの途中で強制的にキャンプに帰る - 60%持ち帰り
・ダンジョンの中で敵に倒される - 30%持ち帰り

つまり、ダンジョンの円を1周したちょうどそのタイミングで帰ると一番お得なんですよね。あとはボスもスタート地点に出現するので、ボスを倒した直後とかです。
数周ダンジョンをループしたあとに出現ボスを倒すとご褒美があったりするので、基本的にはそれを目指しているのですが...。当然敵も強いので、ボスに至る前に力尽きてしまうことも多いです。
そして、力尽きることで、持っていたアイテムは7割が消失。時間をかけて集めても、半分も建設に回せないのです。

じゃあ、そうなる前に帰ればいい。「ダンジョンを回って、スタート地点まで戻ってきた。もう1周まわるのはきつそうだから、そろそろ帰っておこう...」と、冷静に帰ることができれば良い。
しかし、これがなかなか出来ないんです。周回するごとに強くなる敵と、主人公のステータスを照らし合わせて、冷静に退却の判断をすることが難しい。「ここまできたし、もう1周くらいならなんとかなりそう...。」と思うのですが、これがなんとかならないことが大半です。引き際と欲求のせめぎ合い、バランスがとても良く、絶妙な面白さです。

画像9



まとめ:既存のローグライクとの差異

・ループすること以上に、自分でマップを構築できる=ダンジョンのバランスを自分で変えられることが圧倒的な面白さとゲームバランスを生む
・周回するダンジョンのため、構築したマップはそのまま残り続ける
・多少損はするがいつでも退却可能


総合的に考えると、既存のローグライクに比べてマップや敵との遭遇率など「自分で構築する」という部分が多いんですよね。もちろん、いつでも退却できるという点も。
そしてそれらに比例して、「自己責任」の比率が高い。いつでも帰れるのに欲に負けて帰らなかった。まだいけると思って進めたら負けてゲームオーバーになった。全て、強制されるわけではないんです。
そこから導き出されるのは、このゲームが「理不尽さ」を感じにくいデザインになっているという事実です。

敵を増やしたのも自分、敵を増やさなかったのも自分。常に逆側の選択肢が頭に浮かぶからこそ、運ではなく自分の判断ミスで失敗したと思ってしまう。だからこそ、次はこうしようという気持ち、ゲームを続けるモチベーションに繋がるのではないでしょうか。

そしてそれが「中毒性」なのだと思います。
人のせいに出来ない。ゲームのせいに出来ない。言い訳が出来ない。
言い訳が出来ない分、ゲームを中断したり投げ出す理由が少なくなります。それは意識的な部分でも、無意識的な部分でも。

気づけば、何度も何度もダンジョンに挑み、戦略を考え、学び、そしてボスが倒せるようになっている。
自己責任という名の中毒性が強固に纏わりついた、間違いないローグライク。
興味ある方は、ぜひこの自己責任ローグライクに挑んでみてはいかがでしょうか。もし夢中になりすぎて睡眠不足になったとしても、そこもまた、自己責任で。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?