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『Crime Scene Cleaner』感想:殺人現場の証拠隠滅のための「掃除屋稼業」がやめられない、抜け出せない

病気の娘の治療費が払えない。
でも、今の単なる清掃員の仕事では稼げない。
そこで始めたのが…ギャングが殺した相手、つまり死体とその現場を徹底的に綺麗にすること。
犯罪現場(Crime scene)を掃除する仕事(cleaner)を淡々とこなす、そんなゲームがこの『Crime Scene Cleaner』です。

私が過去にプレイしたゲームだと、最も似ているのが『powerwash simulator』になります。高圧洗浄機を使って、建物や乗り物の汚れを吹き飛ばすその仕組みが、殺人現場に応用されたゲームが、この『Crime Scene Cleaner』となります。
つまり、このゲームも大枠ではただの掃除なわけです。ちょっとそこに、死体や血痕があるだけ。それだけです。

プレイヤーのやることはいくつかありますが、基本的には全ステージで大きく変わりません。最初のステージでやることを覚えたら、あとはその応用、もしくはボリューム増加。シンプルなシステムはとてもとっつきやすいものでした。

まず、現場についたら水場を探します。浴室やトイレなど、バケツに水を入れられるところに、空のバケツを設置。これで、掃除するための水が手に入ります。

プレイヤーが持っている掃除用具は、モップ、スポンジ、高圧洗浄機。
モップは広い空間を一気に掃除することができます。
スポンジは狭い範囲しか掃除できませんが、細かい場所や布製のもの(カーペットなど)の掃除に適しています。
高圧洗浄機は一気に広い空間を掃除できますが、タンクに入れた水がなくなると掃除できません。

水が重要なのはモップやスポンジも同じで、掃除をしていくと血の汚れが溜まっていきます。それぞれの掃除用具は血で汚れすぎると掃除できなくなり、逆に床や壁を血で汚してしまうこととなります。血が吸収され、真っ赤になったモップで床を掃除したら、逆に綺麗な床も赤く染まってしまいますよね。

そのときにどうしたらいいか。前述した、水のたまったバケツにバシャバシャとモップを浸して洗うことで、また掃除が出来るようになるのです。
スポンジも同じ。高圧洗浄機は、蛇口から直接水を貯めて放水する必要があるため、水場は必須。
バケツに洗剤を入れ、モップを浸したら準備完了。

血痕のついた床や壁を擦り、痕跡を消します。
血がついた物の素材によってモップやスポンジを使い分けたり、その血痕の範囲によって道具を選び、ひたすらクリーニングします。
掃除用具が汚れたらまたバケツにバシャバシャと浸して綺麗に。その繰り返しをひたすら行っていくのです。

もちろん、現場で乱れているのはそれだけではありません。
様々な物が壊れて散らばっていますね。
ちゃんとゴミ袋にしまっておきましょう。

そしてもちろん、殺害された死体も放ってはおけません。
ちゃんと運び出して、シートにくるんだり、トラックに乗せましょう。
証拠隠滅。

他にも、家具や絵画などが乱れていたら、綺麗にした後にちゃんと元の位置に戻す。

殺害現場は、普通の一軒家から豪邸、美術館まで。シチュエーションも、猟奇的な殺人から痴話喧嘩、パーティーでのドラッグ中毒にデスゲームの後片付けまで。掃除しながら、どんな理由で殺しが発生したのかがわかるのもストーリーがあって良かったです。

システム的には、1ステージの舞台となっている家屋等がいくつかのエリアで分けられ、「そのエリアでどんな掃除が残っているか」が%で表示される仕組み。汚れの残りがどのくらいあるのかがわかり、遊びやすかったですね。
あと、お助け機能でまだ掃除が残っている部分を強調表示できるのも良かったです。例えば、小さな血の染みなんかを見落としていて、ずっとエリアの中をうろうろするのはストレスですが、強調表示されることで掃除残しに気がつきやすくなります。
このゲーム、かなりユーザーに寄り添った仕様が整っており、ストレスなく遊べました。


クリアまで私の場合は15時間。
これ、2日間のプレイ時間です。
購入初日は驚異の11.5時間プレイ。
もう腕の筋肉が張っていましたが、とにかく止まらなかったです。

なんていうんですかね、物語が気になるとか、ムキになるとか、プレイが純粋に面白いとか、そういうカテゴライズでの長時間プレイじゃないんですよね。

おそらく私自身の多少神経質なところとか、そういうのがこのゲームへの傾倒へと繋がっていったんじゃないかと思います。
このジャンルの大元である「Powerwash simulator」も、購入当時本当に、具合悪くなりながら止められずにプレイしていました。

なんでしょうか、いわゆる人間の心理をうまく突いているというか。
普段掃除はめんどくさがっているけど、一旦始めると細かいところの汚れが気になりだしたり、急に本棚の本を全て取り出して大掃除し始めたり……。最初はちょっとだけの気持ちだったのに、いつの間にか全てを完璧に掃除しないと気がすまない。そんな状況を、ゲーム上で作り出しているのです。

しかも危ないのが、この掃除中は体が疲れないってことなんですよね。
普通11時間も掃除してたら体が悲鳴を上げますが、これはゲームなので腕が張るくらい。
加えていえば、ホコリが舞ったりもしません。私はハウスダストアレルギーなので掃除のときはマスクを着けないとくしゃみが止まらなくなり風邪症状が出てしまうのですが、そんな心配もありません。
心ゆくまで、気になるところを掃除できます。

基本的に掃除って、「途中で投げだす」ということがないと思います。
これが、ゲームの継続に影響しているように感じました。

普段生活していて、掃除を途中で止めるっていうのはなかなか無いと思うんです。
掃除用具を出した状態や、収納を整理しようとして一旦中の物を出した状態…そんな状態で「あとはまた明日!」というように掃除を途中で止めることって、ほとんどないんじゃないでしょうか。だって、掃除用具や整理途中のものが、邪魔だから。
むしろ、掃除って一回やり始めてしまうと、ついでにここも…あそこも…ふと見つけたここも…と、どんどん掃除するエリアが広がっていくものではないでしょうか。私はそんな経験が多いです。

そのような、つい続けてしまう感覚が、このゲームにもありました。
この汚れを掃除したら一旦ゲーム止めよう…やっぱりここのゴミだけまとめたら終わりにしよう…ついでにここの家具だけ直そう…いやこれだけやったらもう最後までやってしまおう…。
RPGに例えるなら、ボス戦ではなく延々とレベル上げをやっていくような感覚。ある意味、ボス戦のような明確な「区切り」がないからこそ、止まらないのかもしれません。

そして、それにプラスして止まらない要素は「物語」です。
先ほど書いたように、それぞれの事件現場、殺害現場にはそれぞれストーリーがあります。
それらは独立してストーリーがあるわけですが、さらのひとつ上のレイヤーとして存在するのが、主人公の物語。
娘の治療費を払うために始めた闇の仕事。その依頼主、ギャングの親玉の物語。それを、掃除人という視点から垣間見る。
さらに、殺害現場では(もはや死んでしまったため取り返しがつかないか)殺される必要が無かったような事実も発覚する。

主人公がメインで物語に介入するわけではなく、なんらかの大きな物語が終わった後の掃除をするだけなので、そこに大きく感情を動かす仕掛けがあるわけではないです。それでも、殺害現場とギャング、両者の思考や視点を唯一知ることが出来る掃除屋の主人公。
だからこそ見えてくるものがある。
このあたりの物語提示の仕組み、今思えばうまかったなと思います。

とにかく、止められない止まらない。
細かいところが気になって、ひたすら掃除を数時間続けてしまう。
でも、その後そこには間違いない達成感。
「綺麗になった」殺害現場。見た目の綺麗さと、一抹の不気味さを残し、主人公はその場を去ります。
達成感と少し残る心の闇。どんどんエスカレートしていく殺害現場。
でも、やっぱり止められない。
ぜひ、この不思議な体験をして、主人公と一緒に「手を汚して」みませんか。


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