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「INSCRYPTION」、そのデザイン、仕掛け、そして演出は、インディーゲームの歴史に残る(ほとんどネタバレなし感想)

もう散々話題になっていますが、この2021年に突如出現した化け物ゲーム「INSCRYPTION」皆さんはもうプレイされましたでしょうか。
ゲームクリアまでプレイすれば、その仕掛けと演出に意表を突かれるどころか桁違いの展開にとことん振り回され、間違いなく名作であると実感される思います。

最近では人気ストリーマーの方、Vtuberの方々が配信されていたので、そちらで知った方も多いかもしれません。

ただ、やはりこのゲームは知識の無い状態で自分の力で進めるほど魅力を感じられるゲームだと思うので、とにかくネタバレなしでプレイして欲しいと感じています。
そう、ネタバレなしで遊んでほしいんです。
とはいえ、ゲームの面白さがネタバレを多分に含むため何も紹介できないというジレンマを含むというのも事実。

なので、自分なりに「トレイラーでわかる部分のみ」「最序盤のみのネタバレ」でINSCRYPTIONの魅力を紹介してみようと思います。




魅力①「カードゲームを通じたストーリーテリング」

このゲーム、トレイラーを見てもらえるとわかりますが、不気味です。
不気味な中にカードゲーム。謎の人物との対戦。
そしてデッキ構築型とくれば、考えるのは「ああ、きっとSlay the Spireのフォロワー的ゲームかな」というところです。

大名作デッキ構築型ローグライク「Slay the Spire」


ところが、遊んでみるとその異様さに気づきます。
まず、カードが語り掛けてくるのです。

カードの名前欄で語り掛けてくる

カードからの語りかけ。まるで漫画の吹き出しのようにカード内に表示されるセリフは、実は非常に意味のある語りかけとなっています。
というのも、このゲーム、カードゲームだけではないゲームプレイの要素が存在します。そこに、この語りかけが強く影響してくるのです。


主人公がカードゲームをプレイしているのは謎の小屋のような場所。
主人公は謎の人物とカードゲームを行っているのですが、ゲーム中、立ち上がってうろうろすることが出来ます
そして周りを見渡せば、自分のいる小屋の壁には、なんらかの仕掛け、ギミックが。
つまり、カードゲームだと思っていたらそれ以外の全く別のゲームが用意されていたのです。あえてジャンル分けするなら、脱出ゲーム系の仕掛けが。その仕掛け、ギミック類は、何かヒントがあれば解除できそうですが、しかし、どうやって解いたらいいのか全く分かりません。

そこでカギになってくるのがこの喋るカードたちです。
「ルールブックのあのページにヒントがある!」的なセリフをはじめ、様々なヒント…それはカードゲームの攻略についてのヒントではなく、小屋の中の仕掛けを解除するためのヒントを語りかけてくるのです。

そう、このゲームは、カードゲームを主としていながら、カードゲームでは無い周りの仕掛けに対するアクションの誘導がなされているのです。しかも、それが「カードゲームの中から」なされているのです。

これは広く捉えると、ややメタ的な誘導の仕方とも言え、「メインで遊んでいるゲームシステムであるカードゲームを遊ぶ」という段階から、一つ次元を上げて「『メインで遊んでいるゲームシステムであるカードゲーム』を遊んでいる主人公」と、ひとつ高次の、ゲーム自体を俯瞰するような形になります。

それはつまり、カードゲームが主でありながら時には他の要素を主とするゲームデザインであり、加えて「カードゲーム」という、ストーリーテリングになかなか用いられない部分を柔軟かつ器用にストーリーテリングに用いているのです。別のゲームで例えるなら、格ゲーの「対戦」にストーリーテリングを盛り込むような、一見合体しないような要素を組み合わせているということです。
これが非常に新鮮かつ、INSCRYPTIONの最大の特徴であると思います。

なぜかNEW GAMEが選べないスタート画面



魅力②「カードゲームと仕掛け解除の2つの次元を交互に遊ぶデザイン」

その「カードゲームをする」という次元と、「カードゲームはいったん置いておいて、カードゲームをしている環境を攻略する」というひとつ高次の次元という二つの次元を、プレイヤーは行ったり来たりします。

カードのキャラが喋りかけてきた内容の仕掛けを解くと、カードゲームの部分でプレイヤーの有利になるような影響があったり。そして仕掛けを解くとしゃべりかけてくるカードもまた別の内容を話しかけてきたり。そのヒントからまた仕掛けを解いたり…と、プレイヤーは遊ぶ次元を交互に変えることになります。

そもそも、普通、遊戯王とかポケモンカードとか、カードゲームの目的って対戦相手をボコボコにすることじゃないですか。戦略考えたり、強いカードを手に入れたり、相手の攻撃をいかに耐えるかを考えたり。そういうところが魅力の大部分だと思うんです。
もちろんINSCRYPTIONにもそういう要素はあります。カードゲームもなかなか歯ごたえのあるボスと戦いますし、「ぬるい」難易度では決してありません。ちゃんと考えないと、永遠に先に進めないことでしょう。
…とはいえ、明らかに攻略法があるバランスなのもまた間違いありません。
カードの中の特性を活かすことで、通常のカードバトルだけでなく、ボス戦も秒殺、一瞬で終わらせることが出来ます。そこに気づきさえすれば、非常に「ぬるい」ゲームバランスと化してしまうのです。

ここで生きてくるのが「カードゲームだけのゲームじゃない」というところです。仕掛けを解くことと、カードゲームで勝つこと、ストーリーの進行が、全て同列で絡み合いながら進行しているからこそ、カードゲームの攻略法がわかっても、他の要素への魅力への興味、好奇心が途絶えないので飽きやダルさがないのです。
それももちろん、とても求心力のあるストーリーであり、明らかに伏線、謎のギミックもあり、「決してカードゲームをクリアしただけではすっきりし無さそうな」環境が構築されていることが大きな理由です。

これこそ、カードゲームのみがゲームシステムとなっているゲームとの違いで、ゲームとしてのレイヤー、階層が異なる部分に面白さが詰まっているからこそ、結果としてゲーム全体の強力な魅力が生成されているゲームデザインとなっているのだと思います。

ギミック攻略で強いカードが登場



魅力③「トレイラー以後の物語」

いかにも怪しい、陰鬱で暗いカードゲーム。不気味な対戦相手。
そして謎の小屋とギミック。それらを攻略したとき、誰もが予想していなかった展開に突入します。
ゲームトレイラーを見ていた段階ではとても考えられなかったアプローチでのストーリーテリングと、ブラックホールのように物凄く強く好奇心を刺激される展開
ここまでプレイした瞬間、もうゲームプレイの手は止まらず、ゲームを中断した後も「あのあとINSCRYPTIONというゲームはどんな展開になるのだろう」と想像に囚われると思います。

想像を超えた仕掛けと演出、驚きと魅力的なゲームが「山のように」待ち構えているゲームですので、この物語はぜひご自身の目で確かめていただければと思います。

唯一無二な怪作であり、超高クオリティの名作であり、記憶に強く残る傑作であるINSCRYPTION、間違いなくインディーゲームの歴史に残る作品であり、万人にお勧めできるゲームです。

本当に素晴らしい体験でした。
このような体験があるからこそ、ゲームはやめられません。





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