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904回目:【人生】LIFESHIFT〜我々は生きてしまう〜

2024年02月23日の備忘録

最近、ニュースでは「定年引上げ」「定年無し」「シニア層の戦力化」「労働力の低下」「人材不足」等のニュースを多く見る様になった。特に、「人材不足」は、ニュース以外にインドに住んでいる日本人のお偉いさんからもよく聞く話。しばらく日本を離れている分、私はその実感があまり無かったが、どうやらニュースで書かれている様な内容は、身近に起きている事だと実感が湧き始めた。

そんな中、2016年、今から約8年前に発売された当時のベストセラー「LIFESHIFT」という本を見返してみた。これは、リンダグラットンという方が書いた本で、言わば、これからの世界がどう変わっていくかを綴った本。私は5年前の2019年当時、これを読みかなり衝撃を受けた覚えがある。今の私が生きる上で選択する基準ともなっている名著だ。そんな本を今一度見直し、2024年の今この本の通りになってきているのか少し考えてみる事にした。

【1】Q1:あなたの周りには100歳以上の人は何人いますか?

この問の答えを思い浮かべてみる。周りを見渡した時に、肌感覚としては、それほどたくさんいらっしゃるわけでは無いはず。しかし、カリフォルニア大学の研究結果によると、2007年生まれの子供の半分は107歳まで生きるという研究結果が出ている。今一番私にとって親近感のある国の一つ「インド」に言及すれば下記となる。

  • 1900年時のインドの平均寿命が、24歳

  • 1969年時のインドの平均寿命が、41歳

  • 2014年時のインドの平均寿命が、67歳

先進国だけではなく、後進国であったはずの国々が「中進国」となり世界の寿命は急激に延び始めている。寿命が延びるということは、「介護医療費」などの医療コストが上昇するという「マイナス側面」。しかし、別角度から言えば、「健康年齢が長くなり、不健康期間率が小さくなる可能性が高い」ということ。つまり、我々は、「健康に長く生きてしまう可能性が高い」という視点だ。しかし、どうだろう。我々のイメージはいまだに、”20歳ぐらいまで勉強して、65歳ぐらいまで仕事して、その後ゆっくり余生を楽しむ”なんて心の中で、ついつい最近まで考えていたはず。ただ、この考え方は、80歳まで生きるだろうという想定のものであって、まさか100歳まで生きてしまう事を想定したものではない。”20歳まで勉強して、40歳まで仕事して、50歳までもう一回勉強して、75歳まで仕事して、その後余生を楽しむ”なんて、考えてる人は少ないだろう。

現在38歳の私、私が死ぬ時は分からないが、仮に私が65歳を迎えた時は、間違いなく”20歳ぐらいまで勉強して、65歳ぐらいまで仕事して、その後ゆっくり余生を楽しむ・・・”という時代にはなっていないだろう。そもそも、2024年の今、ついついこないだまで思っていたその概念は、既に変わろうとしている。だから、24歳から働き始め、38歳となった私は、実は日本社会の中では、統計的に「若手」に部類されてしまうのだ。私が24歳の頃には、38歳の先輩はベテランで若手に部類されている何て全く思わなかった。だが、統計的に38歳の私は今だに社会の中では若手に部類される。24歳から働き75歳で定年するとする。そしたら、社会人満14年を迎える私は実は、まだサラリーマン人生の30%にも到達していない。

【2】何人で何人を支える必要あり?

2020年の統計の出生率は1.32人。2022年は1.26人。2023年は更に減ると言われている。2023年統計の男性未婚率は28%女性は17%。加えて、総務省が「日本の生産年齢人口の推移」を公表している。生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の層で、社会の中核を担う層と定義されている。それをみると、2020年時は、7500万人。私が60歳となる2055年は4500万人となる。

「10世帯で何人の年金受給者を支えるのか」という%を算出した表が公表されている。1950年は約10%。つまり、10世帯で1人の年金受給者を支えていた。2019年当時で、約45%。つまり、10世帯で4.5人の年金受給者を支えている。未来予測では、私が60歳となる2055年では、10世帯で何と7人の年金受給者を支えていることになる。

つまり、これから私の私の人生では、更に増加し続ける税金を払う未来がやってくる。この本によれば、今のおじいさん世代は、収入の4%を貯金すればよかったが、我々世代は25%を貯金しなければ、老後が厳しくなると書いてある。

【3】産業の新陳代謝

S&P500(主要上場市場が米国の取引所(ニューヨーク証券取引所、NSDAQ等)の米国企業で、流動性がある大型株から選ばれた500銘柄)の企業存続年数は、1920年時は67年間、一方で、2013年時では15年間。つまり、産業の新陳代謝が活発になったということだ。

さらに、1つの企業に長く務める傾向が強かった20世紀から、働いている産業や企業を変更する機会が多くなる可能性がより高くなる。なぜなら、産業構造が変わって、企業の存続年数も短くなってきているからだ。

現に、アメリカ人は生涯のうち平均で12回、転職している。 ひとつの企業での平均勤続年数は4.1年と短く、従業員の65%は常に次の職を探している。 転職する平均年齢は39歳。一方では、統計によると、日本の転職回数は平均3回で、勤続年数は平均11.9年。日本はまだまだ「一社に従属」の傾向が高い。

ただ、これから変化する世界の中では、”20歳まで勉強をしていい大学に行く。その理由は安定した大企業に入って、安定した老後を過ごす”という考え方自体が、そもそも成り立たない世界になりつつあり、どちらかといえば、”20歳まで勉強して、金を稼ぐために仕事する。しかし、そこで勉強をしつつ、次の仕事につくチャンスを伺う。定年はなし”という新しい考え方が生まれ始めると、本書では書いてある。

【4】人間VS機械

技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、英語: Technological Singularity)、またはシンギュラリティ(Singularity)とは、未来学上の概念であり、人工知能(AI)自身の「自己フィードバックで改良、高度化した技術や知能」が、「人類に代わって文明の進歩の主役」になる時点の事である。簡単にいうと、「人工知能が人間を超える時」ということだ。これが、2045年にやってくると言われている。

念頭に入れて置かなければならないのは、「人間にしかできないことはなにか」という考え方であって、「人間が絶対的に優位である仕事」を、しなければならないとも置き換えられる。例えば、「iPhone」。端末自体は、台湾の精密機械工場の子会社が、中国の深センに設けている工場で生産されているが、製造コストは販売コストの5−7%。販売価格の30−60%は、Apple社の懐に金が入っている。つまり、経済的価値を生み出すのは、「製造」ではなく、「イノベーション」であるということ。言い換えるならば、「単純作業」ではなく、「創造性、発想、共感、問題解決」ができるという点に、人間の絶対的優位性がある。そして、そのような仕事を人間はしなければならない。

2020年にはメタバースが取り立たされた。2023年には、Microsoftが買収したオープンAI社によってリリースされた生成AI「チャットGPT」を皮切りに、アルファベット社からのGoogleBardのリリース。各社生成AIを突如リリースし時代が変わった。AIブームに続き、2024年02月は、アメリカの半導体エヌビディア社の株価高騰。Apple社は、「Apple Vision pro」をリリース。世界がまた変わろうとしている。

【5】無形資産を形成する

この移り変わる時代で、私たちがこれから何に注意をして仕事をしなければならないかを3つ本書では紹介されている。その前に大前提として「無形資産を形成する」ということ。22歳から仕事を始めて、貯金をして、家を買って、車を買う。ここで得たものは「有形資産」とここでは定義する。これから意識しなければならないのは、「有形資産」だけではなく、「無形資産」を蓄えなければならないということ。なぜかといえば、前述の通り、「人間はこれから長生きする」ため、「金で買えるもの」と同様に、「金で買えないもの」も蓄えておく必要がある。そして、「無形資産」の蓄積が、結果的に所得をあげる要因にもなる。

【5-1】一つ目、生産性資産

1つ目は、「生産性資産」つまり、金を生み出すために必要な、スキルや知識のこと。

アメリカの大卒22歳年収が3万ドルに対し、アメリカの高卒22歳年収が1.8万ドル。教育格差が生まれていることは事実、世界全体で「教育を施せば年収が上がる」ということは認知されている。さらに、人間が長生きする可能性が高くなっているために、より教育期間が長くなる傾向にある。24歳以降の新卒採用は難しいという概念もなくなるかもしれない。そして、専門知識をもった人材が世の中に解き放たれて仕事に従事する。つまり、専門性の高い人材の価値がより高くなる。

加えて、前述の通り、産業構造は一瞬にして新陳代謝するため、学んだ専門知識が時代の変化とともに一瞬で古くなる可能性が高い。つまり、仕事ステージに移行した後にも、再度、知識の充電を行わなければならない時期が、その都度やってきてもおかしくない。また、人生は87万時間あるとすれば、専門知識を習得するには1万時間が必要と言われている。産業構造の変化に合わせて、1万時間を使って専門知識を得たりアップデートすることが、単に仕事しているよりも余程大事な時間となる。

そして、産業の新陳代謝を促進させるのはAIや人工知能である。例えば、IBM「ワトソン」は、人間に変わって癌の診断を行う。よって、人間は、「癌を見つけること」だけを専門に学ぶのではなく、AIによって発見された癌が、直感でどの程度のものなのか把握する必要がある。これは、【経験】に基づくもの。また、その報告を受けた患者さんがどう思うのか気を使う必要がある。これは、【対人】に関わる事。最後に、その一連の仕事を行うチームマネジメント。これは、【仲間】をまとめる力が必要となる。なので、「医者」の仕事の内容が変化している。人間の「目」「知識」は、AIや人工知能が代替する。人間として出来ることを磨く必要がある。

【5-2】二つ目、活力資産

本書では、「健康」「友人」「愛」を「活力資産」と定義づける。人間は、医療の発達や食事の改善で長生きしてしまうため、如何に楽しく人生を過ごすかが重要となる。であれば、なんとなく生きるよりも、より幸福に健康的に人生を送ったほうが良い。

働いて富を築く。しかし、その代償として、生活習慣病になったり、うつ病になったり、自殺をしたら、その人生何だったのか?仕事の期間は、今以上にこれからもっと長くなる。だから、人生の短期にめちゃくそ働いて富を築くより、長い時間をかけて、学び、働ける状態をキープしていたほうが、最終的には幸福になるかもしれないということだ。

また、前述の通り、おじいちゃん世代は収入の4%を貯金しておけばよかったが、我々は25%を貯金しなければ、老後が厳しい。つまり、サラリーマンで、一人で頑張って稼いでいても、統計上、老後の資金を十分に得ることは難しい。これを、サラリーマンとして解決するには、共働きと副業の2択しかない。共働き、副業ができる体制を保つためには、時間と心の余裕がある事、更には、健康であるということがそれを可能にする。

ハーバードの長期追跡調査によると、ずっと一人で仕事をしている人よりも、仲の良いコミュにディの中で生きている人の方が、人間的な活力と前向きな状態になるという研究結果が出ている。高齢になったときに、金があっても友人は買えない。数十年も同じ会社で仕事をして、その会社が産業構造の変化で倒産したとしよう。すると、その同じ環境中の、同じ価値観を持った、共通の仕事だけのつながりのみで生きていた人にとって、新しい価値に触れて、変化を遂げることは極めて難しい。つまり、友人関係とは、「無形資産」として人生を豊かにするものである。著者は、また別な本「ワークシフト」という本の中で、この友好関係を、「自己再生のコミュニティ」と記した。

【5-3】三個目、変身資産

何度も記述されているように、一瞬にして世界が変わる時代を、長く生きなければならない我々は、「その都度自分が変化する」ということを認識しておかなければならない。それは、会社が倒産する、必要な知識が変わる、仕事の仕方が変わるなど、外的要因によってもたらされる。この「変化」に対する個人の適応力を、ここでは「変身資産」と定義されている。恐竜が絶滅して人間が生き残った理由は、変化に対応できたからだ。変わりゆく環境に適応する、または自分から変化できる能力は人間特有のもの。以前は、就職して65歳まで安泰、その後は年金で余生を楽しむことがパラダイムだった。これからは、一旦就職するものの、一旦会社を辞めて勉強に勤しみ、その後また新しい会社で働くという新しいパラダイムが生まれてくるように、その時その時の時代に合わせて、自分がその多様性に合わせ変化する必要があると本書では語られている。

【6】まとめ

**著者:**リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット

出版年: 2016年

【6-1】内容:

  1. 100年時代の人生戦略: 平均寿命が延び、100年生きる時代になった。従来の「教育→仕事→引退」という人生モデルは通用しなくなり、個々人が主体的に人生を設計していく必要がある。

  2. 3つの無形資産: 長寿化を生き抜くために必要な資産として、「生産性資産」「活力資産」「変身資産」を紹介する。

  3. マルチステージの人生: これまでの「教育→仕事→引退」から、学び、働き、遊び、社会貢献を柔軟に組み合わせていく「マルチステージ人生」へとシフトしていく必要がある。

  4. 個人の責任: 長寿化の恩恵を受けるためには、個々人が健康維持、スキルアップ、新たな挑戦などに取り組む必要がある。

  5. 社会の変化: 企業や政府も、長寿化社会に対応した制度や仕組みを整備していく必要がある。

【6-2】ポイント:

  1. 長寿化は、個々人、企業、社会全体にとって大きな変化をもたらす。

  2. 100年時代を生き抜くためには、無形資産を蓄積し、マルチステージ人生を送ることが重要。

  3. 変化に柔軟に対応し、学び続けることが求められる。

さて、この本が出版されたのは2016年。現在2024年02月23日。この本が出版されて8年が経過しようとしている。まだ、この本に書かれてある時代にはなっていないものの、何となくその傾向があるのは、薄々感じざるにはいられない。社会が変わる。その都度、自分が変わる必要がある。

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