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読書日記(4冊目)『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』アビジット・V・バナジー&エステル・デュフロ(日本経済新聞出版)

ビルゲイツのこの夏の5冊の1つとのこと。という訳ではないが、僕も夏休みに読みました(クーラーの効いた部屋ですみません)。厚い経済学の本で最初は読了できるかかなり不安があったのですが、身近な話題を扱っているためスラスラ読めました。翻訳もいいと思います。著者の2人はいずれもMITの教授で、夫婦でもあり、そして昨年のノーベル経済学賞の受賞者です(デュフロは史上最年少での受章とのこと)。

冒頭に経済学者がいかに信用されていないのか、やや自虐気味に書いています。あとは彼らの仕事は論文を書くことなので、本の出版は全然業績にはならないのですね。でも、折角の研究をこのような一般書にするのはとても意味があることだとは思う。

さてバナジー&デュフロといえば、この本が有名です。

僕も8年前に読んだのですが、その時は正直あまり本として面白いとは思えなかった記憶があります(そもそも内容もほとんど忘れている・・・)。なので本書も心配だったのですが、結果は杞憂でした。

移民や自由貿易からはじまり、経済成長や温暖化までちょっとテーマが多過ぎないか?というくらい。弱者に立つ視点を忘れないのが著者たちの素晴らしいスタンス。

そして普段日本でメディアに触れていると、日本やばい・アメリカ最高!みたいな論調がわりと一般的ですが、アメリカにもたくさんの問題があるという超絶当たり前のことがわかります。これを読んで、日本はやはりかなりましだと思って安心してしまうのは本末転倒でしょうが、それでも相対的に物事を見る視点は養われる。

「どうすればもっと成長しもっと富裕になるかということではなくて、どうすれば平均的な市民の生活の質を向上できるか」(P243)という一文がこの本のスタンスを物語っている。富める者がますます富んで、経済全体のパイを大きくしていけば社会が底上げされるというのは幻想のようです。

あと後半にいくとか、アメリカの富裕層とか金融業界のことを結構ボロクソに書いていて、ここまで言うのかと意外でした。それくらい米国での格差や一極集中は凄まじいということなのでしょう。

なかなか要約するのが難しい本ではありますが、読んで損はない。経済のことだけではなく、米国、そして世界のことが知ることができる。

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