百字小説㉑~㉚いっき読み ▶記憶
㉑「有意義」
朝起きると天気予報通りのいい天気だったので有意義に過ごすことにした。洗濯も掃除もしないでゲーム機に手を伸ばし熱中する。これに飽きたら流行りのアニメを見ようか。なんてったって今日の天気は大雨なのだから。
(100字)
㉒「スプレー」
入店時に店員がスプレーをもって手を出してくださいと言われれば断る人はそうあるまい。私は両方の手のひらを出した。プシュという音共に噴射してもらった。しかし吹きかけられたのが青くて粘り気のある液体だった。
(100字)
㉓「倉庫」
薄暗い冷えた物置部屋、扉を確かめてみるとやはり開かない。追手が無理に入ろうとして扉を歪ませたせいだ。何も私は悪いことをしていないのに。ただ私は言われるがままバックを持って歩いていただけなのに。
(96字)
㉔「タクシー」
タクシードライバーで歴は長いが「前の車を追ってくれ」と言われるとは初めてであった。車を走らせながらお客さんに理由を聞くと「自分、追っかけなので」と言った。訳が分かった私は宣伝カーを追いかけた。
(96字)
㉕「電車」
この電車はとても便利にできている。百両編成で全席自由席。席もリクライニングと机と電源が有り、食事まで楽しめる。駅が無くてお客さんの停まりたい所で停まってくれる。毎日大混雑だが快適なので文句はない。
(98字)
㉖「隕石」
世界各国の展望台が5年後には火星サイズの隕石が地球に直撃すると予測した。人類は珍しく協力し、努力の結果全人類の脱出成功となった。そして人のいない地球で、隕石の送り主である宇宙人がリゾート開発を始めた。
(100字)
㉗「昔話」
昔々、村に年配の男がいた。仕事をせず、いつも土手で酒を飲むため村の人からは小金持ちと認識されていた。ある日、盗人が男に飛びかかった。しかし盗人は男をすり抜け土手で転がる。幽霊は変わらず酒を飲んでいた。
(100字)
㉘「堕天使」
黒い天使がカッコイイと思って堕天使になった。一時の勢いで不可逆進の道を進んだため白い翼を後悔しても懐かしんでも戻れない。でも最近新しい趣味ができた。天国の様子を盛って話して地獄の鬼たちを驚かすことだ。
(100字)
㉙「バス」
私以外乗っていないバスの車両。運転席に座る私はハンドルを握って右へ左へ動かしてみた。ペダルをむやみに踏み、シフトチェンジレバーをむやみに動かす。夜に酔っぱらったいい大人が童心に帰れる公園のいいバスだ。
(100字)
㉚「SNS」
SNSで最近知り合った子は自分と同じ小学五年生。すぐに仲良くなって今日もいつものようにふざけあった。でもさっき送られてきたDMは「くぁwせdrfgtyふじこlp」とよくわからない。どういう意味かな。
(99字)
▶記憶
思い出を鮮明に残しておくため外付けの脳となるもの開発した。この装置を被っておくと自動でサーバーにバックアップされていく。かといってまだサーバーを見直したことは無い。鮮やかな思い出って恥ずかしいから。
(99字)
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↓前回の10+1作品
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