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百字小説⑪~⑳いっき読み ▶魔法


⑪「水」

水が澄んだ。世界中の水が透き通り、水溜まりが青空と繋がるほどであった。これによって、かつての「綺麗」を売りにしていた観光地の湖や海はもてはやされなくなった。今の湖や海は電飾で集客しているらしい。
 
(97字)
 

⑫「腕」

道に腕が一本生えていた。その腕は下校中の小学生の足を掴んだ。腕の存在に気づいていなかった小学生は転んで泣き出した。その泣き声は大人たちを心配させて集まらせた。ただ一人、小学生をつけていた大人を除いて。
(100字)
 

⑬「売買」

この世に二つとない珍品だと言われ露店でよく分からない木彫りを買ってしまった。しかし今になって、相手の話を信じて熱を持って変なものを買ったのが馬鹿らしくなった。さて散財したこれらはどう売り飛ばそうか。
(99字)
 

⑭「手がみ」

「この手がみはこのジャンボジェットがついらくすると思ってかいている ゆれがすごい 死ぬ前にもっとしゃべりたかったな 由美子あいしているよ まあボクは一人身でカノジョの一人もいないんだけど 告白したかっ
(100字)
 

⑮「お供え」

最近毎朝。玄関先にお供えがある。果物や菓子で食べれるもの。不法投棄でないのは明らか。だから金欠の私はありがたくいただいていた。しかし今日になって心境が変わった。謝礼と書かれた封筒が置かれていたのだ。
(99字)
 

⑯「吸血鬼」

吸血鬼であることがばれてしまった私は研究所に収容されていた。私としては人の生き血と寝床があって良いのだが、研究員はやたらと採血する。何に使うのか聞くと「この血を蚊に吸わせて殺虫するんですよ」と答えた。
(100字)
 

⑰「飼いたい」

かわいいから家に持ち帰ったのにママは帰してきなさいと言うんだ。でも、どうしても飼いたいから家の裏で育てることにした。今は寝てるけど明日になったら一緒に遊びたいな。そうして彼は亡骸をなでるのだった。
 (98字)
 

⑱「運転」

私は逃げるように運転していたが、スピードを出しすぎた。私は今、フロントガラス越しにひしゃげたバンパーと崩れかけの塀を見た。これ程の衝突なのに。さっき轢いてしまったヤツは無傷で笑顔で走って追ってきた。
(99字)
 

⑲「失踪理由」

昔に父が蒸発した原因を探るべくタイムマシンを作り、父が失踪した日に向かった。父に会って事情を話すと父は目を輝かせて未来をみたいと勝手にタイムマシンに乗って出発した。置いてかれた私は事の顛末を理解した。
(100字)
 

⑳「寿命計測機」

寿命計測機を作成した。この機械は野生の動物の残りの寿命を計る。計測結果が数日だった奴は捕まえて家で飼う。そいつが寿命で死んだら闇ルートを通して精肉として売る。殺生が禁止された今、合法的によく稼げる。
(99字)
 

▶魔法

魔法を作り上げた。呪文を唱えることで炎や雷を出せる。試しに友人に披露すると拍手喝采を浴びた。私も図に乗って原理を説明しようとしたら「因果が無いから魔法なんだ。よしてくれ」と言われ口をつぐまされた。
 (98字)


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