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【前日譚】陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件 【-妄想、或いは夢-03】

元消防士系Vtuber、朝霧侑志の過去、
それは、スレタイみたいな本当の話でした。


目次

陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件 通称:オタけし

前日譚:-妄想、或いは夢-03


──これは、太陽に近づき過ぎた少年の物語


※本noteは事実を元に作成されていますが、身バレ防止のため2割ほどフィクションを混ぜています。(主に消防の組織関係)




【自己紹介】

(話が進むにつれて年表が更新されていきます。)

-スペック-

名前:朝霧侑志(あさぎりゆうし)
年齢:28歳
性別:男
属性:陰キャ

-年表-

1994年  5月 
 誕生
1995年  1月 
 兵庫県南部地震発災 被災する
 祖母宅(静岡)に引き取られる
 不憫な子のレッテルを貼られる
 消極的な子として育つ
2007年  4月
 愛知にて両親&姉と4人暮らしが始まる
 中学に進学するも陰キャは変わらず
2011年  3月
 東北地方太平洋沖地震発災
 連日テレビに映るオレンジに魅せられる
 消防士になりたいと言う夢を持つ 
2011年  4月
 高校2年生 友達作りを頑張る
 努力の結果かけがえのない友達が出来る
2012年  1月
 消防になりたいと言う夢を友人に打ち明ける
 夢は口に出すと強い
2012年  2月
 貧弱 筋トレを開始
 体育の先生のご指導を受ける
2012年  8月
 平均並みの体力を手に入れる
2012年  9月
 筆記試験 余裕過ぎて書くことがない
2012年 10月
 二次試験開始 朝霧を待ち受けるものとは



2013年  4月
 高校卒業と同時に消防士へ。



2021年  9月
 とある事情で退職
2021年 10月
 Vtuber活動開始




【前回までのあらすじ】


自身の貧弱な肉体を改善するため 動き出した朝霧侑志

熱血体育教師の指導の下 平均的な肉体を手に入れることに成功する

少しずつ それでも着実に足を前に進めてきた彼に怖いものなどない

「やるべきことは全てやった」 そう自分に言い聞かせて前を向く

そんな彼を次に立ちはだかるは “あの”トラウマであった

震える手で 声で 

己を偽り トラウマを超えろ 





【6.朝霧侑志はトラウマがある】


皆さんは圧迫面接を受けたことがあるでしょうか?

いや、あえて言い直します。
体格の良い陽キャに囲まれて高圧的に話しかけられたことがあるでしょうか?

ここまでに長々と書いてきた通り、朝霧侑志は全く逆の環境で育ってきた化物(陰キャ)です。

そんな事への耐性などある訳がありません。
よくTwitterや配信で「陰キャだから喋れねーよ」などという事があります。

これは今でこそ冗談で言っていますが、当時は本当に冗談ではなかったのですよ。
陰キャにしか分からない気持ちでしょうね。
僕らは、陽キャに話しかけられただけで声が出なくなるのです。

これは根本をたどれば自身の自信のなさ(おやじギャクではない)が原因であり、そして更にそのルーツはと問われれば、当然あの日の災害と言うほかありません。こればかりは時間でしか解決できない問題です。

筋トレをする過程でメンタルはそれなりに強くなった自身がありました。
しかし、それはあくまでも自分との戦いにおいて作用する強さです。

当時の朝霧は、外的な分からない事、知らない事が怖かったのです。

きっと無いはずの震災の記憶が、トラウマのように纏わりついているのでしょう。

というか……。今ですら治りきってません。
電話や来客に対応するだけで一苦労です。

これが採用試験でも悪い方向に作用します。

当然、当時の担任の先生に面接の練習はしてもらいましたし、一通りの回答は用意していましたが、なんというのでしょうか……。

そもそもオーラが、威圧感が違う。
試してくるように、答えを急かすように問い詰めてくる圧迫面接のプレッシャーを、ガタイが良い消防職員(陽キャ)の風貌が助長するのです。


いかついおっさん1「兵庫生まれなんだ。地震の時のもいたの?」

俺「はい。実際に兵庫県南部地震を経験しました。」

いかついおっさん2「経験ってwさすがに君の年齢だと記憶ないでしょ。あるの?」

俺「あ……えっと……。」

いかついおっさん2「はっきり答えてくれないと分からないけど」

俺「え……と……ありません。しかし……」

いかついおっさん2「あーもういいよ。分かんないなら。思い出受験みたいな感じで来られてもなぁw」

俺「いえ……そんな事は……ないです」


みたいな。
震災の事に踏み込まれると、当時の朝霧では捌き切ることが不可能でした。

相手は初めて会うタイプの人種ですからね。
正しい対応の仕方が分からない。
ましてや、答えのない質問なんてされたらもっての外。

分からない、知らない=怖い なのです。

ついでに、これは半分余談なのですが、朝霧はちっちゃいです。
身長が165cmしかありません。おまけに童顔。

このため陽キャは朝霧を見ると初手舐めてかかってきます。
マジで。体感9割は上から目線で高圧的に来ますアイツら。
陽キャ本当に嫌い。

中には朝霧の外見を見た時点で「こいつ嫌いなタイプだ」みたいな態度とってくる人もいましたね……。なんせ外見がチー牛なので。
きっと、奴等が過去に虐めて来た対象に容姿が近いからでしょうね。

そんなこんなで……。
本物の陽キャに相対し朝霧は、己の無力を知る日々が続きます。

東京消防庁、地元である愛知県内の計4か所は体感で「落ちた」と分かりました。

実際に内2か所は不合格通知が届いており、正直もうこの時点で朝霧侑志は諦めていました。

今思えばだからでしょうね。あそこまで振り切れたことが出来たのは。

最後の一か所の試験、土地勘も一切なく、家からJR換算で30駅近く離れたその場所で、朝霧侑志は最後のあがきを見せるのです。




【7.朝霧侑志は中二病である】


朝霧侑志のVtuberとしての活動を知ってる方に説明不要ですが、
朝霧の動画には「青サムネ」と「オレンジサムネ」と言うものが存在します。

前者は朝霧がオタクをはっちゃける動画、後者は中二病満載で物申す動画となっています。

この後者の朝霧は、かなり誇張していますが現役時代の陽キャを装っていたスタイルを元に考案されました。(ある意味RPGなのに考案とか言うな)
そこに+αでエンターテインメント性を混ぜた結果、今の姿になった訳ですね。

そのルーツがどこにあるのかと言うと、採用後に編み出された技です。
陰キャでは、当時の消防を生きる事は不可能でしたので。
しかし実はもっと前、スタイルの更に原型はこの採用試験にあります。

朝霧には3人のかけがえのない友人がいます。(ちなみに陽キャ。)
(詳しくは以前のnote参照)

「どうせ受かんねーし、友人の陽キャのマネして行ってみよ!」

それは、開き直った男がたどり着いた迷走の極致でした。

プロフィールは朝霧侑志そのままで、喋り方や態度だけ例の三人組の中のお調子者を真似る。
要するに友人を演じるRPG作戦です。

最後の最後でとんでもないことをやりだしたのでした。

だってどうせ受かんねーし。
つーか○○市消防本部の○○市ってどこだよ 笑
しらねー。

完全に舐めた態度で挑むことにしたのです。

後々考えてみて分かったのですが、朝霧にとって、こと人と絡むと言う事象においては、この方法が最適解でした。

朝霧侑志の陰キャを後押ししているのは圧倒的な自身のなさ、そして不安です。
ここまでの採用試験は今後関わるかもしれない人たちが相手だからこそ、「変なことは出来ない」と余計に肩に力が入ってしまっていました。

しかし、今回はどこぞのよく分かんねー本部の、2度と会う予定のないよく分かんないおっさん中二病演技見せに行くだけです。

中二病と言うのは、誰しも黒歴史ノートが存在するし、出てくる登場人物の設定はアホみたいに緻密に組んでるんですね。(これがプロセス絶対至上主義の原点)

それが完全なオリジナルではなく友人ならば、当然解像度も高くなる。

人の顔色だけはしっかり窺って生きてきました。友人の喋り方、仕草マネするなら造作もない。

「朝霧ならどう答える」じゃない。
「このキャラ(友人)ならどう答える」かなのです。

無責任でいいのだ。だって俺じゃないし。

うん。なら余裕や。

そう考えれば面接官も可愛いもんです。
そもそも何言ってもこっちに手は出せないし。

朝霧侑志は、チョロ舐めで最後の面接に臨みました。


いかついおっさん1「実家は愛知なんだ。ってことはこっちは滑り止め?」

俺「いいえ!○○が第一希望です。(大嘘)」

いかついおっさん2「いやいやいやいやw」

いかついおっさん1「嘘でしょそれは」

俺「他は落ちてしまったので第一希望で間違いないです!」

いかついおっさん1「素直だな!」

いかついおっさん2「(爆笑)滑り止めでも受かりたいんだ?」

俺「はい!本命に落ちたので」

いかついおっさん2「wwwあんまりそういう事を言うもんじゃないよw」


これも後で聞いた話なのですが、英検の面接でも、面接官を笑わせたり、朗らかな空気を作れば、難易度がグッと下がると聞いたことがあります。
このクソガキ舐めプ面接が、奇跡的に面接官のタイプとかみ合ったんです。

大体この手の面接はアメとムチがいるのですが、ムチをこちら側に引き込む事に成功しました。
面接5か所目にして初の圧迫なしの面接です。

あとこれは持論ですが、消防に最も適しているのは「素直な人」です。
開き直った結果、この辺がいい感じに当てはまったのでしょうね。

とは言え、その時には朝霧の心はもうここに在らずです。
駅で「二度と来ねーよバーカ!」と中指を立てて自宅に帰りました。





しかし数日後、完全に切り替えてお受験に向けて勉強していた朝霧に、一冊の封筒が届きます。

それは他の不合格の通知よりも確かに分厚くて。

中には合格通知が入っているのでした……。




【8.朝霧侑志は悩みに悩む】


この合格通知に朝霧は素直に喜ぶことが出来ませんでした。

理由はたった一つ。受かった場所が滑り止めも滑り止めだから。

採用試験で初めて踏み入れたような場所です。
冷静に考えると、なんで俺こんな場所を守らんといかんの?
完全に頭が受験にシフトしていた朝霧はイラついていました。
受験の方の準備全くしてなかったし。

え?前回「消防に受かるか死ぬしかない」って言ってたって?
それはあの、あれよ。表現の一種よ。比喩表現よ。HAHAHA。

ともかく、熱が冷めたと言ってしまうと語弊があるのですが、自分の感情がよくわからなくなってしまっていたのです。

知らない土地を守ることは、本当に自分のやりたいことなのか」と。

悩みに悩んだ朝霧が縋った先は、例の三人組でした。
今までの朝霧侑志にはなかった選択肢、「友人に打ち明ける」事。
もう、朝霧は一人ではありませんでした。

合格通知が届いた数日後、朝霧は例の三人組に消防に受かった事を伝えます。合わせてその場所が全く縁もゆかりもない地である事を伝えようとしたのですが、その声は空振りに終わります。

何故って彼らは大喜び。ワイワイ叫ぶものだからクラスメイトの耳にも入って一気に注目の的です。
高校の3年間で一番目立った瞬間でした。未だに思い出すと恥ずかしい。

そして、一人が朝霧にこう声をかけるのです。

「おめでとう!夢叶えちゃったじゃん!!」

その瞬間、朝霧の不安や迷いは一瞬で晴れたのでした。
思えば迷う必要なんて最初からなかったのでしょう。

だって、確かにこれが少年の夢だったのですから。

(※この考えこそが、朝霧を最後まで苦しめた元凶でもあったのですが、それはまだ知らぬ未来の話です※)


1995年1月。
何も分からないまま、全てを失ったあの時から。

あるいは2011年3月。
テレビに映った、眩しいほどのオレンジに魅せられた時から。

きっと、朝霧侑志の進む道は決まっていたのです。




【9.朝霧侑志は消防士(仮)である】


かくして2013年4月、朝霧侑志は無事消防士となりました。

消防士は採用後、半年間消防学校と言う環境で初任教育を受ける事が必須であり、基本的にはこれを修了することで初めて消防職員として認められます。

つまり現状、朝霧はまだ(仮)です。
ガールフレンド(仮)みたいで良いですね。(たとえが古いんよ)


そしてこの消防学校がどんなところかと言いますと……。



ええ。



まぁ。



あの。






ぶっちゃけ刑務所です。




朝霧の戦いはまだ始まってすらいなかったのです。

メシウマが好きな皆様、大変お待たせいたしました。

ここまではなろう系、オタクの自分語り……。




そして、ここからが胸糞系でございます。





【次回予告】


大海だと思っていた場所は、水たまりでした。
理不尽な日々 追い込まれる肉体と精神。

それでも 贋作はめげずに立ち上がる。
歩いてきた道だけは 決して贋作ではないのだから。

圧倒的“本物”達を前に あがき、張り合い、同じ方向を向いて。
彼らとかけがえのない絆が芽生えた時 物語が産声を上げる。



次回、

【消防学校編】
陰キャオタクの俺が消防職員に記念受験したら採用されちまった件
【-本物と贋作-】


そのうち更新予定


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