誰の歌
六畳一間の小さな部屋
薄いカーテンから深夜の街燈の灯りが部屋を淡く満たす
僕はギターを携え東京事変の「落日」をかすれた声で歌う
地べたに座り、ベッドを背もたれにして
小さなこたつ机には安物のウイスキーが注がれたグラスが二つ
隣では酔っ払って寝落ちした女の子、多分好きな子
彼女は時々目を覚ます
そして何をいうでもなく黙って真っ暗なテレビを眺めている
ベッドで寝ればいいのに
それでも僕は歌う
歌が彼女のどこかに響いているか
彼女の耳にすら入っていないのだろうか
そんなことはどうでもいいの、ただ歌うの
タバコの香りがするねって心で呟く
そろそろだ、金木犀はいつ嗅げるんだろ
”確かなのはただ唯一 君のさっき迄の温もり” -落日より抜粋