月をみていた

先月になりますが、ヴァグラントを観てきました。
ポルノグラフィティの晴一さんが、初めて手がけるミュージカル。
いろんな方々が、ちょっといつもの自分とは違う世界にチャレンジしようと思うのはやっぱりすごいし、ステキだなぁとチケットを取りました。
ポルノ好きだし。
会場に着いてまず、何だかいつもの観劇と少し雰囲気が違うぞ?と思ったのは、あ、お客さんのテンションがライブ会場っぽいのか、というか。
終わってからいろんな方が、「普段はあまり観劇されないのかなと思われるお客さんも多そうだった」という感想を呟いておられて、そうか、なるほどと思いました。
入口にあったキャストさんたちのお写真の大きな掲示前で写真を撮っておられる雰囲気が、ライブ会場前に設置されるフォトスポットのテンションっぽかった。
観劇に馴染みがない方が多いと、マナーとか独特の暗黙ルールとか守られないみたいな話がよく出てきますが、難しい問題だなぁ…といつも思います。
私も慣れてるわけじゃないし…
個人的には、劇場側から出されてるマナーはしっかり守っていただきたいなぁとは思いますけど。
ケータイが何度も鳴るとか、飲食厳禁の会場でコンビニおにぎりバリバリ食べ始めるとかは、過去に泣いた(´;ω;`)ヤメテ…
もちろん今回は特に何もなかったのですが、同じ観劇でも、前回、精霊の守り人で近くに座っておられた方が、「登場シーンでの拍手は、宝塚だと当たり前かもしれないけど、他の作品だと違和感があって自分はあまり好きじゃないからやめてほしいなぁ…」と同行者の方にお話されてたのを耳にしたりしましたし、観劇に慣れておられる方々の中ですら、それぞれ自分の中に基準があるから観劇スタイルの話は難しいですね。
劇場内の飲食についても、もともと幕間にお弁当文化があるので会場によりますしね。
自分の経験が当たり前、と思わずに、できるだけ公式からのお願いには、毎回さっと目を通さねばなぁと自戒も込めて思ったりします。
最近、観劇とは関係ない話ではあったのですが、人のふり見てだね、という話を友人としたところでして、いろいろ気をつけよう…

…などと、話が冒頭から逸れまくりました。

私が観た回は、
佐之助:廣野凌大さん
トキ子:山口乃々華さん
チサ:吉見彗さん
でした。
上演時間は、3時間くらいでしたかね。

*以下、ネタバレを避けたい方はそっと画面を閉じてください。


物語の舞台は、大正、とある炭鉱の町。
人々の人生の区切り、慶弔において歌や舞を行うマレビトである佐之助と桃風は、炭鉱を取り仕切る会社の新社長就任式に呼ばれる。
父から継いだ会社の改善を決意する、新社長の政則。
そこに、幼馴染の譲治を含めた坑夫たちが乱入し、労働条件の改善を要求する騒ぎに。
その様子に強く興味をもった佐之助。
人と関わりを持ってはいけないマレビトの掟。
必要なときには招くものの、マレビトを倦厭する世間の人々。
佐之助は、人様の区切りをつけるのがマレビトというなら、人というものを知りたい、という好奇心にしたがい、炭鉱の人の中に入っていこうとする。
それを諌めつつも、姉貴分の桃風も渋々、付き合うことに。
一方、政則と譲治の幼馴染トキ子は、10年前に両親を殺した犯人を探すため、夜な夜な寝食を忘れ、炭鉱の警邏に没頭していた。


まずは初挑戦の方が新しく作られたミュージカルなので、まだまとまりきれてないというか、そわそわした感じはありました。
あと、時代背景と、晴一さんの音楽がよくマッチしているなぁと。
歌詞なんかも、あ、ポルノだ、うん、ってなるし。
毎度ながら詳しくはないので、感覚になっちゃいますが。
私は「好きだなぁ」って思う方々はたくさんいるのだけど、どうにもこうにも深い情報とか知識とかはほぼ持ちあわせていなくて、人に訊かれても答えられないことが多かったりするので…
せっかく興味をもって話を振ってくれても、話があまり広がらないという( ;∀;)

佐之助役の廣野さん、好奇心いっぱい元気いっぱいなやんちゃっ子って感じですが、ハスキーなお声もあってか、佐之助の身の内にある悲哀がちゃんと含まれていました。
ハスキーなお声って、独特の甘みが出ますよねぇ。
美弥るりかさんの桃風、好き。
佐之助に振りまわされまくりながら、大切な弟分を絶対放っておけない姉御。
ちゃきちゃきっとしてるけど、すごい優しい。
トキ子の山口さんは、SPY×FAMILYのときとはまたうって変わって、終始、真面目、真剣。
自らを追い詰めて削っていく、というか。
水田航生さんの政則と、上口耕平さんの譲治の幼馴染2人が対峙する場面も多いですが、互いの気持ちに心を傷めながら、でもどうしても対立せざるを得ない、道が次々に塞がれていって苦しい、というのが根底にずっとある。
遠く、譲治の歌う「おふねのえんとつ」が、やはり好きかなぁ。
坑夫のリーダー森田の娘、チサは、物語上、とても大事な役ですよね。
話を揺らすためにも彼女をどんな風に演じるか、と考えたとき、子役さんは本当に頑張り屋さんだよなぁとしみじみ。
同時に、父である森田役、吉田広大さん感情の起伏も沁みたし、坑夫の留吉&お花夫妻役の加藤潤一さん&礒部花凜さんや、元マレビトの松&香役の遠山裕介さん&大月さゆさんの、テンポの良い息のあったタッグが、ふっと場の空気を入れ換えてくださったり。
警察署長の大堀こういちさんも、人は良いんだけど…ねぇ?って役で、ああいるよねぇ笑っていう人間みが良きだし、政則の父の宮川浩さんのがっちり動かない立ち塞がる感じも必須。
玉置成実さんが演じる政則の異母姉のアケミ、良いですよね、桃風とはまた違う気風の姐御。
どちらも哀愁はある役なのですが、桃風はティンカーベルっぽさがあるんだよなぁ。
となると、佐之助はピーターパンか笑笑
平岡祐太さんが、うらぶれワルでこれまた格好いいです、静かに広くけぶるような色香がだだもれです。

私自身、お話としては、炭鉱の騒動というより、マレビトの方に気をとられがちだったかもしれません。
観ていく中で、ふと瞽女歌なんかを思い出したりしていました。


帰りに、会場すぐのなかたに亭で、今は今でまた違う難しいことはたくさんあるけれど、こうしていろんなひとが美味しいものを食べられる時代にはなったんだよなぁ、などと、いちじくのミルフィーユを悪戦苦闘しつつ崩しながら。

この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?