足がつかない
プールの底に足がつかないとき
例えば、根無し草みたいに
僕はぷかぷか浮かんでいる
ぷかぷか浮かべるまでには様々な工程を辿ったのだが、今ではそれができる
別にそうしたかったわけではないけれど
気づいたらそうなっている
性というか、なんというか
そこに理由はないのだろう
始めてプールに入ったとき
とっても怖かったのは覚えている
足がつかない
僕は手足をバタつかせる
そうするたびに口の中に水が入ってきて
体重は重くなり、沈んでいく
それを見かねた先生は
水の中をゆったりと歩いて近づいてくると
僕を抱き上げる
僕は落ち着きを取り戻し
大きく深呼吸をする
今では僕もプールのそこに足がつく
それでもなぜか
ふと
足がつかない感覚に襲われる
しかし僕はぷかぷか浮かぶ
一瞬だけ手足をばたつかせたけど
無駄だと気づく
ゆっくりゆっくり波に揺られ流される
ゆっくりゆっくり波に攫われ沈んでいく
そして足がつく頃にはもう息が出来ない
今ではもう誰も抱き上げてくれないもんな
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