声変わり

ふと立ち寄った、図書館に佇んでいた「リルケ詩集」
もし僕の言葉が僕のものでないのなら
この言葉はどこに帰属するのだろう

スマホのフリック音とシャープペンシルの擦れる音
誰かの言葉が誰のものでもなくなる場所
それはいつも空気で
それはいつも紙の上で
そしてメタバース的な地球に変わっていく
そして僕も同時に私になっていく
そして私もまた僕に変わっていく

あぁ、またどこかで人の死体
それに見向きもしないで
世間は政治家の不祥事ばかり
マイノリティの尊重なんかより
マジョリティの引きずり下ろし

あれ?この言葉は一体誰のものなんだろう
借り物の自分が本物の自分をゆっくり殺していく
あれ?初めから本物なんてあったのだろうか

作り物の映画
作り物に対して涙で応える、作り物の人
作り手が犯罪を犯せば、その涙は途端に引っ込む
結局、あなたは何に感動していたの??
その質問に対して答えを窮するくらいなら
初めから、「I'm a robot!!」とでも叫んでおけよ
こっちからじゃ、ヒトかどうだか分かんねぇよ

また、僕じゃない僕が話している感覚
若しくは錯覚、されど現実
私は私は私は私は私は私は私は私は今生きてますか?
一頻り話し終わって気づく、私は私であり
僕は僕であり、やはり僕は僕ではなく、私は私でない

キングクリムゾンの21世紀の精神障害者を大音量で聞く
隣の部屋からの張り紙
大きなノック音
「うちの部屋まで響いてますよ」
次第に声を荒げ
「うるせぇな、このボケ」
あなたは今、あなたですか?
私は音楽を止めそう云う
少しの沈黙
その後言葉はなかった

僕は言葉を失くした


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