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ケアマネが持つべき医療の知識

基礎資格が介護職のケアマネは医療知識がないから使えないとか、随分な言い方をされることがある。
ケアマネとして使えるか、使えないかは医療知識の有無とは関係ないと思うけど、医療的な知識はケアマネに限らず持っているに超したことはない。医療との連携がスムーズにできれば、ケアマネジメントでの失敗や嫌な想いは半減できるような気がする。

ケアマネが持つべき医療の知識とはどのようなものか、少し考えてみた。
医療分野で扱う事象は本当にたくさんある。一般常識的な部分と線引きはできないけれど、思いつくまま挙げてみると、人体の構造と機能及び疾病(社会福祉士の試験科目)療養のこと、リハビリのこと、薬のこと、処置のこと、入院や診療に関する制度的なこと等多岐にわたる。
それぞれが誰でも知ってるような基本的なことから、医療従事者でなければ気に留めないような詳細まで深さも様々なので、「医療の知識」の共通認識などあるのか疑問だけれど、いろいろな部分から幅広く知ることが大事。

そして、日々業務を行う中で、これは知ってなければケアマネジャーとしてヤバいよってことはいくつもある。
認知症、高血圧症、脳血管疾患、心疾患、糖尿病など主に生活習慣病のこと、フレイルとかサルコペニア、ロコモティブ関係、骨折の頻発部位とかリハビリのこと、高齢期の心身状態の変化と死への道筋、精神疾患、特定疾病とか難病とか訪問看護の医療給付と介護給付の違いや指示書のこと・・・
普通に仕事してれば、身近なことなので経験的に理解できることも多く、新米のNSやリハ職、MSWより熟練のケアマネの方が、実践での理解や経験は勝っている面もある。

ケアマネが病名の診断をしたり利用者に症状の説明をすることはない。そんな中で医療の知識を必要とするのは以下の理由だと考える。

1点は利用者がどのように心身状態や疾患を捉えているのか確認するため。利用者が一般的な病識とかけ離れた理解をしてる場合に、説明を聞いてないのか、誤解してるのか、超越してるのか確かめたい。それによって介護サービスの関わり方が違ってくるから。明らかに違うなって場合にはもう一度先生に確認してみたらどうだろうか?って利用者に助言する

1点は介護サービスの導入や調整を適切に行うため。リハビリや訪問看護の必要性は主治医に確認だけれど、医療系のサービスの説明や提案をするのに利用者の状態を知る必要がある。利用者からの聞き取りや入院中の病院からの情報提供も受けられるけれど、情報を正しく読んで使うために基本的な知識は必要

1点は利用者の生活状況をモニタリングしていくとき、異常のあるなしとか予後の良不良とか、自分の目で見て状態把握をするため。進行性の疾病やターミナルの時期など、適時に必要なサービスに繋げるためには、医療職からの報告をすぐに理解して迅速な対応をする必要がある。医療依存度の高い方などは、事前に情報共有の場があるけれど、ケアマネがあまりにも疎い場合には、やっぱり医療職は不信を持つだろうし、そういう雰囲気は利用者を不安にさせる。

高度な最先端とかあまりにも細かすぎる専門知識ってことではないけれど、日常的に利用者が罹りやすい疾患とか病態とかは、理解していないと厳しい

そして、医療に限らないけれど、知識として得られる情報は取得した時点で古くなっていく。自分が覚えたことが唯一ではなくて、知識や情報は変化していくものだって意識も必要。
自分が知ってること、覚えてることが万全ではなくて、例えば新規の利用者を担当したとき、馴染みのない疾患は当然ググって勉強するけど、見慣れた病名であっても時々は検索してみるとか、医療職から説明聞いたときもう一度復習するとか、自分にしっかり根付かせる努力をしたい

ケアマネの医療知識の使い方として、利用者が参加するカンファレンスの場で医療的な専門用語とかデータの数値が出てきたときに、「それってどういう意味ですか?」って利用者の代弁をすることもある。多分、こんなことって見当はつくけれど、利用者さんが所在なさげにしていたら、ケアマネが医療側の顔でいるのではなくて、患者側として理解できる説明を求めるのも支援の一環と思う。その時にケアマネが的外れな事を言ってしまうことがないように基本的な知識の裏付けが不可欠。

知識は持っている分には邪魔にはならなくて、職務を遂行するために適切に使っていくことが大事。知らないことは、恥ずかしいことではないけど、知らないことを知ったかぶりしたり、間違ったことをごり押しするのは、とても恥ずかしい。知るための努力を続けて確かな知識を身につけることは自分の力になるし利用者のメリットにつながる。

基礎資格が医療職であっても、ケアマネの職歴が長くなれば医療的な知識や経験は過去のものとなる。学ばない人は基礎資格がどうでも、取り残されていく。