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渡せる幸せは全部君に捧げます。

犬を飼おう、マンションから一軒家に引っ越して数年、父が言った。

犬が好きかと言われたら、普通だった。街で見かけたら可愛いなと思うくらい。小学生の時は犬を飼いたいなんて言っていた時期もあったけど、その時は父と一緒にペットショップで犬を眺めては可愛いねなんて話す程度だった。

昔から生き物が大好きで、その時は誕生日にねだって買ってもらったセキセイインコを飼っていた。

動物が好きだったこともあり、できれば保健所や保護犬を迎えたいと思っていた。あと、単純に雑種が好きというのもあったけど。

ホームページである団体の里親会に行くことになった。子犬で気になる子がいたから見に行くため。「他にはどんな子がいるの?」「うーん、あのブログで見た〇〇ちゃんとか、黒柴風の子が○○ちゃんも行くみたい」私は母にそう言ったらしいけど正直覚えていない。昔、友達が飼っている黒柴が大好きでよく遊びに行っていた。それもあって母は黒柴風の犬を私が気に入っていると思っていたらしいけど、そんなことはなかった。写真を見たときにこの子はちょっと違うなと唯一思ってたくらい写真映りが良くなかった。

里親会当日、沢山の犬が集まっていた。

気になっていた茶色いあの子に会ってみたけど、まだまだ躾途中で室内での粗相が絶えないこと、長時間のお留守番が難しいことなどと実際にあってみてビビっとくる感じはなかった。

「そろそろ帰ろうか?」と言われたとき、別に他に気になる子がいたわけじゃないけどなんとなくまだ帰りたくなくて、もう少しここにいたいと言った。

「じゃあ、この前黒柴風の〇〇ちゃんもくるって言ってたし、その子のところ行ってみる?」正直興味はなかったけど、帰る時間が伸びるならそれでいい、そんな理由で会いに行った。

テントの下でシャキンっとお利口さんにお座りしていた。保護しているボランティアさんと話ながら少し河川敷を散歩させてもらうとバッタに飛びつくはでてんやわんや。初めて持ったリードはピンと前に張っていた。

その時11ヶ月だった。よくご飯を食べ人懐こい。保護主さんは「まだどの家庭からも声がかかってないんです」なんて言ってたけど実は数件希望があったらしい。

あんまり覚えていないけど、気がつけば我が家も希望の申し込みをして、保護主さんは我が家に譲ることを決めてくれた。母はこの子が家に来たのは私が選んだからというけど、私はこの子だけは選ばないと思っていたから不思議である。

焼き芋を食べながら我が家に来た彼女は初日でゲートから脱走し一緒に布団で寝るという荒技を披露し、翌日にはヘソ天を披露してくれた。ピンと張っていたリードも今では隣を一緒に歩いてくれるから弛んでいる。

犬が好きか?と言われたら正直そうでもない。私は犬が好きなのではなくうちの子が好きなのだ。よその犬を触る時は何故か腰がひける。

ある時、歩いていたら反対側に散歩している犬が見えた。犬を飼って以来、自然と近所の犬の顔を覚えるようになった。

「あの子可愛いな、大きくて真っ黒で。初めて他の子に目を奪われたなぁ。でも散歩しててすれ違ったことない気だする?どこの子だろう?」そんなことを思っているとどんどんこちらに近づいてくる。

あらびっくり、父と散歩しているうちの子ではないですか?正直自分でもびっくりした。私はあの子に2度目の一目惚れをしたのだ。その時、多分生まれ変わっても私はこの子のことを見つけ出せるななんて思った。

黒柴カラーリングなのに洋犬の風貌は私がオーダメイドした?っていうくらい好みだし、ペコペコの耳も体の割に大きな脚も、よく笑ってくれるところも、抱っこが苦手なところも、寝言がやたら大きいところも、私が体調を崩すと隣で看病してくれる14kgの愛も全部愛おしくてしょうがない。

保健所で一歩間違えればなくなっていたかもしれない命、神様は少しだけ延長してくれるらしいから、その時まで私は与えられる愛を全部あなたに捧げたい。

だからどうかゆっくり、出来るだけゆっくり歳をとってほしい。

11ヶ月のあの頃もシニアに差し掛かってきた今も、毎日が一番可愛くてこれからも多分それは更新されていってどれだけ歳をとっても私はあなたのことが大好きなんだろう。

あなたが来た時にいいお兄さんだったピッピはもういない。どう頑張っても同じだけ生きることは出来ない。だからこそ後悔なく全部の愛を捧げて愛し尽くしたい。

大好きだよ。私の家に来てくれてありがとう。これからもよろしくね。

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