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今日も寝る前に、とっておきのお茶を

約1年前ぐらいからだろうか。夜、寝る前にあたたかいお茶を飲むようになった。当時全然眠れなくて困っていたわたしは、「カモミールティーが睡眠にいい」と聞き、「おお、それはよさそう!」と飲んだのが始まりだった。


カモミールティーだけでは飽き足らず、ローズヒップティーや、カフェインレスの紅茶、とうもろこし茶など、様々な種類のお茶を買って毎日寝る前に楽しむようになったのだが、「選ぶ」という行為にだんだん疲れてしまい、結局今はカモミールティーと黒豆茶の2種に落ち着いている。

髪の毛を乾かしたり、化粧水や乳液でお肌をととのえたり、コロコロで床の髪の毛をとったりしている間にポットのお湯が沸き、お気に入りのマグにコポコポとお湯を注ぐ。


そしてカモミールティーか黒豆茶のティーバッグをその中に浮かせて、何分か待つ。それからお茶を飲みながら次の日の予定を確認したり、日記を書いたり、本を読んで、ベッドに入る。



これが、寝る前のルーティーンとしてすでにできあがっていたので、つい最近まで何も考えず、当たり前のこととしか思っていなかったのだが、「もしかしたらこれってとても大切な習慣なのかも」と気付かされることがあった。


それは最近コロナに感染し、自宅療養していたときのことだ。

感染は2回目だが、喉は焼けるように痛いし、体はだるい。熱は37℃〜38℃を行ったりきたり。どの症状も1回目よりはマシだけれど、「普通の風邪」とひとくくりにされるには、全然納得できないほど辛い。5日間会社を休んで、通常なら働いているだろう時間分をベッドでゴロゴロして過ごした。

ベッドで横になっていると、体が弱っているせいか、なんだか悪い想像ばかりしてしまう。たまっているだろう仕事のこと、この症状や熱はいつまで続くのだろうという不安、自分の将来のこと…。


普段は日常によって忘れていることが、こうやって横たわっているとくっきり浮かび上がってきて、考えれば考えるほど気持ちが塞がってくる。「ああ、今わたしひとりなんだ。」
そう思うと、ぐるぐると孤独の渦にのみこまれそうで、目がばっちり冴えてしまった。

こういうときはどうしたらいいのか。

「いつも寝る前に何をやってたかな」と思い、おもむろにぬっと立ち上がり、お茶を飲むことにした。冷蔵庫の冷たい麦茶をコップにいれて、レンジにかけただけのものだったけど、いつものお気に入りのマグでひとくちずつゆっくり飲むと、呼吸もだんだん落ちついてくる。

そのあと、雑誌をペラペラめくったり、ゆったりした音楽を聴いているとまたベッドに入りたくなって、そのまま眠ったら朝になっていた。 

 ⭐︎

「寝る前にお茶を飲む」というなんとなく身についた習慣が、自分の思った以上に支えとなってくれていたことに驚いた。

「いつも通り」って強くて、しなやかだ。多分それは一朝一夕でできあがったものではないからで、毎日の一見弱く見えるような、小さな小さなものが積み重なったからなのだと思う。


それから日々、一日の終わりにかみしめてお茶を飲んでいる。

その日が無事に終わったということで、「ああお疲れさん」と自分に言えるひととき。理不尽なことも、イライラすることもあるけれど、とりあえずお気に入りのマグを手にとり、お茶を飲む瞬間だけは、フッと忘れる。



そして、いつ切れてもおかしくないような「いつも通り」を今日も紡げることは、きっとたくさんの力が陰で働いて、実はとてもありがたいことで、すごいことなのだろうなあ、と思った。


今日も寝る前に美味しいお茶を飲むために、自分なりに工夫しながら、目の前にあることをしっかりこなしていこうと思う。それが楽しみなのだ。そうやって、自分の中にあるしなやかさも育てていきたい。

「いつもカモミールティーと黒豆茶だけど、これからの季節は鳩麦茶やルイボスティーなんかもいいなあ」と変わりゆく季節を感じながら、今日も靴を履く。


ありがとうございます。文章書きつづけます。