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「仕方ない」で終わらせられなくて、エアコン掃除を終わらせた

あああ、また雨。

小雨ならまだかわいい。
けれど残念なことにザアザアぶりの大雨だ。
ここで、はあ…とため息をひとつ。
そのなか出勤しないといけないということで、またため息をひとつ。
幸せはすでに2つ、ひらひらと逃げる。

朝起きたら雨、というだけで、今日1日始まってもいないのに負けたような気がするのは、わたしだけじゃないと思う。

湿気のせいでもわもわにふくらんだ髪の毛、その割には化粧のりも血色も悪いお肌、吹き込んだ雨の加減で座る部分だけわざとらしくべちょべちょに濡れている自転車。


この時点でどんだけ雨がリードとってんのよ、
と座る部分をタオルでサッと拭きながら、予選でとんでもない強豪校と試合している、弱小校の選手の気分になる。

コールド負けかもしれない。

けれどやっぱりこのまま負けになるのは癪に触る。なんか少しでもこの雨に勝てそうなものはないだろうか。そう思いながら、自分の身の回りにある武器を探す。

頭痛薬、元気が出るサプリメント、雨から身を守るレインコート、傘、レインブーツ。レインブーツは少し値段が高かったけど、そこそこ気に入っている。靴下もぐちょぐちょにならずに気持ちわるさを感じずにいられるのは、このレインブーツのおかげだ。…ただ、やはりザアザアの雨から完璧に身を守れるものはなかなかなく、ちと心細さを感じる。


駅に着くと、彼氏や旦那さんに車で送ってもらったらしき女性が結構いて、「バイバイありがとー」って手を振ったりして、心底羨ましかった。

いいなあ、と思いながら駐輪場でレインコートを脱いで鏡を見ると、自分のとりあえずセットした前髪が崩れて、もうぐねんぐねんにうねっていた。

…泣きたい。

 ・


「天気のことは仕方がない、誰も悪くないんだから」皆、そう言う。それはそうだ。だが、だからこそ悔しい。怒るべき相手がいないからこそわたしは悔しい。自分の力でどうにもならないことが、悔しいのだ。


西加奈子さんのエッセイ、『まにまに』にはこんな文章がある。エッセイによると西さんはよく泣く人らしい。西さんは大丈夫と思って洗濯物を干して、出かけた後に雨が降ると、外出先でも憚らず泣くそうだ。

ああああちょっと違うけど、なんかわかる、と思った。気象も災害もどうしようもなくて、1番恩恵を受けているけど時々罪深くて、いや、もう言い出したら世の中どうにもならないことのほうが多くて、「仕方ないよ」って言われても受け入れられない。


やっぱり雨に負けたくない。


幸い今日は早く帰れる日だったので、帰って突如エアコンの掃除をすることにした。「晴れたらやろう」と思っていたけど、その晴れが一向に来ず、先延ばしにしていたのだ。掃除中、ずっと外はどしゃ降りで、雷が轟いていた。家でビビりながらエアコンのスプレーをシャアシャアかける。


そして終わった。

…よし、やったった。
試運転も順調。

掃除が終わったあと、勝った、と思った。ちっぽけだけど勝った、と思った。

雨はちょっと小降りになっていた。




ありがとうございます。文章書きつづけます。