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え!?山も御辞儀しちゃうの???:岩盤クリープって何?【災害から身を守る vol.12】

前回では噴泉塔地すべりがどんな地すべりか?
地形図から読み取れる情報で検討しました。
するとどうも、山が御辞儀するように変形して見えるんです。

今回はそんな御辞儀するような変形についてお話しします。

※トップ画像はいらすとやより

本当に御辞儀なんてするの?

ですよね。私も若かりし頃、この現象を知ってビックリしました。

クリープ説明_本

例えば、こんな雑誌があったとしましょう。
これをページが開く側を上にして斜めにする(右上)。
そうすると、グニャンと曲がりますよね?(右下)

実は、山もこうなるんです!!

そう。前回でもお話しした層理面地形の関係。
このパターンの時に、地層(山)がグニャンと曲がるんですね。
この現象を岩盤クリープと呼びます。

受け盤_クリープ

岩盤クリープとは?

山が動く場合、一般的には地すべりのようにすべり面があって、その面に沿ってすべり動きます。
その方が「動きやすい」。確かにそうですよね。

流れ盤地すべり

こっちの方が、確かに、感覚的に動きやすそうですね。
実際にこのタイプの地すべりは沢山あります。

でも、岩盤クリープは、こうなります。

クリープ02

この場合はすべり動くと言うよりは、前方に変形していくと言うイメージ。
まさに御辞儀をするように山が変形していく。
やはり長い年月がかかるでしょう。そして長い年月をかけて、地層(岩盤)がバキバキと割れて、脆くなる。
そして脆くなったところから、がけ崩れ崩壊を起こします。
またある程度まとまった大きな範囲でジワジワと地すべりとして動く場合もあります。

調査事例のご紹介

山があのように変形するとはイマイチ信じられない気持ちもありますが、実際にその現象を実証した論文があります。

クリープ_塩の山_断面

岩盤クリープ断面図:山田ほか(2008)より

これはボーリング調査をした穴にカメラ等を入れて、割れ目の方向を測ったら、「地層が御辞儀してる」と分かった事例です。

その、調査した時のボアホールカメラの画像がコレです。(※右側の黄色や茶色の画像は超音波を使ったカメラです)

クリープ_塩の山_ボアホールカメラ

ボアホールカメラの事例:山田ほか(2008)より

私も実際に御辞儀をするような変形をいくつかの現場で見たことがあります。そして実際に地層がボロボロになり、地すべりになっていました。

クリープ斜面_千木良1985b

岩盤クリープの模式図:千木良(1985b)より

御辞儀のように変形する斜面(図の右側)の山の反対側は、前方にニョキッと飛び出るような変形をする場合があるのですね。

我々人類の時間感覚では山が変形してるようには見えませんが、長い年月がかかれば、山でも重力には逆らえないのですね。


いかがでしたか?
天然記念物の噴泉塔を埋めてしまうかもしれない地すべりの上の斜面は、岩盤クリープで変形しているかも知れない・・というお話でした。
(※実際に行って調査しなければ真実は分かりませんが・・)

お読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

千木良雅弘(1985a)結晶岩の大規模岩盤クリープ性地質構造ー関東山地三波川帯大谷地区を例としてー.地学雑誌,94-5,p.39-62.

千木良雅弘(1985b)結晶片岩の岩盤クリープ(そ の2)ー岩盤クリープ性地質構造ー.応用地質,第26巻,2号,p.25-37.

山田正雄・鵜飼恵三・橋本 純・河原裕徳(2002)地盤内線亀裂を考慮した3次元FEM浸透流解析―塩の山地すべり地区を例として―.日本地すべり学会誌,Vol.45, No.3,Sep, pp.196-206.

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