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島がぶつかったり、火山が噴火したり?!:南西部山間地域【都道府県シリーズvol.37神奈川県part1】

神奈川県は平坦な頭部と山がちな西部で大きく分けられ、さらに地形的特徴から9の地域に分けることができました(※筆者個人の見解です)。
今回は箱根火山がある南西部山間地域の地形と地質を紹介します。

念のため

場所を確認しておきましょう。

周辺都道府県_01

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

神奈川県と周囲の都道府県との位置関係は上図のとおりです。

地形区分

南西部山間地域は

地域範囲_市町村

箱根町・湯河原町・真鶴町の全域と、山北町・松田町・秦野市・南足柄市・小田原市それぞれの一部地域です。


地形を見てみよう

では行きます!!

地形_01

神奈川県南西部には随分特徴的な地形がありますね。

画像5

南には、まるでクレーターのように大きな凹地がありますね。
これは箱根火山のカルデラです。
そして箱根火山の山体の北は、山地ですが標高が少し低くなり、さらに北はまた高い山地になります。これは丹沢(たんざわ)山地です。

両サイドには平坦な地形もあり、バラエティに富んでいます。

地域境界_地形図

地域範囲はこんな感じ。西は静岡県です。

地域境界_地質図01

地質図を見ると、やはり北の丹沢山地と南の箱根火山、間の低い山地で地質が違います。
さて、この地域がどのような歴史をたどったのか見ていきましょう。


大地の歴史

この地域はけっこう、波乱万丈な歴史をたどっています。
大きく分けて3段階になります。

〇ステージ1:新生代新第三紀中新世中期
約2000万年~730万年前海底火山が噴火します。
この時の火山はもっと南にあったのですが、長い年月の間にフィリピン海プレートの動きで北上し、本州に衝突しました。

地域境界_地質図02

赤線で囲った範囲です。
緑が玄武岩類、茶色が安山岩類です。

実は伊豆半島も昔は火山島で、北上して本州に衝突し、今も本州をギュウギュウ押している状況のようです。
そして赤線で囲った地域は伊豆半島以前に衝突しました。


プレートの沈み込みと火山活動_地震調査研究推進本部

地震調査研究推進本部より

ちなみに日本の火山の大部分は、このように海洋プレートの沈み込みが原因で発生したマグマが噴火しています。


プレート図_地震調査研究推進本部

地震調査研究推進本部より

そして日本の周囲では、太平洋プレートが北アメリカ・フィリピン海の両プレートに沈み込んでいます。
ですのでフィリピン海プレート上にも火山ができることとなり、それが伊豆・小笠原諸島なのです。

そしてフィリピン海プレートは少しずつ北上しているので、それとともに火山島も北上し、日本列島にぶつかりました。

いわゆる付加体とは少し違うので、この現象を特別に「衝突・付加」と呼んでいる地質学者もいます(※シームレス地質図V2には単に「付加体」と記載されています)。

伊豆半島の付け根にあたる地域(専門家は南部フォッサマグナと呼んでいます)では、他にも過去に衝突した火山の残骸だろうと言われる地域がいくつかあります。

南部フォッサ地質概略図

南部フォッサマグナの地質概略図(天野ほか2007より)

上図のA、B、C、Dそれぞれが衝突した火山島(もしくは海底火山)です。


〇ステージ2:新生代第四紀前期~中期
約258万年~70万年前本州に衝突しつつある島(後の伊豆半島)と本州との間の凹地(海)礫や砂、泥などが溜まります。

地域境界_地質図03

赤で囲った範囲の薄いベージュや灰色です。
一部、火山岩類もあり、黄土色が安山岩類、紫が閃緑岩です。


〇ステージ3:新生代第四紀中期更新世~現在
約65万年前~現在箱根火山が噴火します。

地域境界_地質図04

赤線で囲った範囲です。
これは神奈川県南西部山間地域の範囲内のみで、実際の箱根火山の範囲はもっと広くなります。

岩質や噴出した時代で色が違いますが、全て薄水色の河川・湖沼堆積物以外は、全て箱根火山の火山活動で噴出・形成されたものです。
茶色系は安山岩類、濃い灰色は玄武岩類です。


以上、神奈川県の南西部山間地域は、かつての火山島が衝突したり、箱根火山が噴火したりと、かなりダイナミックな歴史を歩んでいる地域でした。

お読みいただきありがとうございました。


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参考文献

天野一男・松原典孝・田切美智雄(2007) 富士山の基盤:丹沢山地の地質 -衝突付加した古海洋性島弧-.富士火山(2007)荒牧重雄,藤井敏嗣,中田節也,宮地直道 編集,山梨県環境科学研究所,p.59-68.

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