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橋田寿賀子さんが4月に亡くなっていたそうだ

『おしん』や『渡る世間は鬼ばかり』の脚本家の橋田寿賀子さんが4月に亡くなっていたそうだ。晩年は、安楽死を提唱する本を出版したり、テレビでもご意見を述べたりとわりに活躍されている印象的があったので、意外だった。

橋田さんは橋田文化財団というものを設立し、すぐれたテレビ番組に「橋田賞」というものを贈呈していたそうである。財団の資金は、若いころからの原稿料を旦那さんが株式投資でふやしたものでまかなっていた。財務状況はこちら(http://www.disclo-koeki.org/11a/01064/index.html)に公開されているが、資産が6億円くらいで、それほど大きいとはいえない。ちなみにゲイツ財団が5兆円なのでざっくり1000分の1である。

ところで先週末にNHKスペシャルで、『迫る“介護崩壊” 新型コロナで揺れる老後』というのを見た。

あらゆる分野でそうなのだが、パンデミックは社会にあらたな変化をもたらしたというより、もともとくすぶっていた問題を表面化し、加速させた面が大きい。それは介護現場でも同じらしい。パンデミックが起ころうが起こるまいがいずれ介護崩壊が起こるはずだったが、それが前倒しでやってきている。

番組では、鎌倉で介護施設を経営していた稲田さんがコロナ渦で施設を閉鎖せざるを得なくなり、やがて、換気のよいあらたな物件を見つけて再オープンにこぎつけたものの資金繰りに苦しむ姿を追っていた。

稲田さんの施設が閉じられたことで、自宅待機を強いられた若年性アルツハイマーの男性の病状がしだいに悪化していく様子や、施設が再オープンし、彼に笑顔やうごきが戻っていくすがたなども捉えられていた。

稲田さんは政府の「小規模事業者持続化補助金」を申請したが不採用になったそうである。いまはアパートを引き払って施設の2階に住み込み、生活費を浮かせて借金返済にあてている。

番組では他の福祉サービス事業者の姿も紹介されていたが、苦しいのはなじだ。待遇が悪い上に、いつ感染するかもわからない中で、お年寄りを見捨てることができずギリギリのところでがんばっている。日本の高齢者介護は、こうした人々に支えられている。しかし、「個人の献身ではどうにもならないところまで状況は悪化している」と番組は指摘する。

「個人の力はどうにもならない」となると、「政府の対応を求める」のがお決まりだが、この番組もおなじで、厚生労働大臣に対応策を聞きに行くという流れになっていた。しかし、大臣も大したことは言わない。政府=税金なのだから、政府が対応するということは、若い人の稼ぎの上前をさらにはねていくということでしかない。

これから高齢者がふえていく日本で、福祉の充実にむけて税収を上げれば、若い人はこの国で働く気が失せるだろう。また政府の力はたしかに大きいが、官僚にとって税収は「他人の金」でしかないので、どうしてもムダ使いが増えてしまうのも事実である。

こういうときに橋田寿賀子さんのような人が参考になる気がする。橋田さんは成功し、小さな財団を設立した民間人だ。優秀なドラマに賞金を出すのももちろんいいのだが、安楽死についてすぐれた業績を上げた人を表彰するというのはどうだろう。自分で稼いだお金なので、小回りの利いた使い方ができるはずである。

今後、日本がさらに政府を大きくして福祉国家へ向かうのはムリがある。しかし、アメリカのような弱肉強食の国もごめんである。そのあいだをとる方法はないのだろうか。若くて稼ぐ才能のある人は税制的に優遇して思いっきり稼いでもらう。そして、好きなようにお金を使ってもらえばいい。しかし、年齢とともにやがて世の中のことも考える余裕がでてくるはずだ。そうなった段階で、心ある人にはプチ財団を設立してプチゲイツ的に活動してもらえるような方向へもっていくことはできないものだろうか、というようなことを自分を棚に上げて考えました。

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