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「信じてほしい」きもちはわかる

心霊スポットにいくとヤンキーが多いそうだ。Yahoo!知恵袋に次のような質問があった。

いろんな人が答えを入れているけど、しっくりこない。「負の存在だから引き合うのだ」と答えていた人がいるけど、ヤンキーは負の存在ではない。

負の存在と呼べるのは、反社会的勢力や犯罪グループだろう。ヤンキーは正の存在でも負の存在でもなく、どっちつかずの宙ぶらりんの若者にすぎない。

暴走族やヤンキーが心霊スポットに出没するのは、かれらが宙ぶらりんの存在であり、心霊スポットも宙ぶらりんの場所だからだと思う。

天と地、女と男

人間は、世界を眺める時に、2つに分けて考えるクセがある。たとえば、天と地。あるいは善と悪。昼と夜。女と男。右手と左手などなど。これは大昔からそうで、神話を見ればみなそうなっている。

でも、2つに分ければどうしてもその境目が生まれるのだ。たとえば、世の中を昼と夜に分けた場合、そのどちらでもない夕暮れ時がおとずれる。

夕暮れ時は、日本では「逢魔が時」などと呼ばれ、魔とむすびつけられ、忌避されることが多い。

性別もそうで、長年、女性とも男性とも呼べない中間的なジェンダーの人々が、抑圧されてきたのも同じことだ。危険な存在ではないにもかかわらず、忌避されてきた。

オカルトは夕暮れの存在

ヤンキーやLGBTだけでなく、オカルトや超常現象も夕暮れの存在である。本当とウソの境界線上にあり、どちらとも判別のつかないあやふやな状態に置かれている。

心霊もUFOもネッシーも、暴力団や特殊詐欺グループのように人に危害を加えるわけではないのだが、なんだかわからない、はっきりしないものというだけで、怖がられたり避けられたりする。

信じてほしい

でも、「はっきりしない」状態にとどまるのはツラい。インドやオカルト・マンガで知られるマンガ家の永見りんこさんの作品に

『誰も信じなくていい… でもボクたちは見た!!』(朝日新聞出版)

というのがあるんだけど、これは全国から送られてきた読者の体験談を集めたマンガであり、表紙に書かれているように、

・カメがクロールで泳いでいた!
・30センチくらいのティラノサウルスが庭にいた!
・中型犬くらいのアリを見た!
・田んぼでタヌキがなにかを取っていた
・緑の小人をゲットした!

などの体験が寄せられている。「幽霊を見た」くらいなら受け入れてくれる人も多いだろうが、

30センチくらいのティラノサウルスが庭にいた!

と主張しても、誰も信じてくれず、バカにされて終わる。

そういう悔しい思いをした人々が、もしかしたら雑誌の読者なら受け入れてくれるかもしれないと投稿してくるのである。タイトルの「誰も信じなくていい」というのは、信じてほしい気持ちの裏返しだ。

信じてほしいアメリカ人たち

いま、アメリカでは「ペンタゴンがUFO情報を秘匿している」と告発する人々が次々に現れて話題になっているが、かれらがこれまで口をつぐんでいたのは、語っても世間からキチガイ扱いされるだけだから・・ということで、あきらめていたのである。

そういう人たちが今、

信じてくれ!ほんとうなんだ!

と力説しており、これまで闇に葬られていた体験を語りだしている。

きもちはわかる

信じてほしい気持ちはわかるし、真相を究明したい気持ちもわかるし、これまでバカにされてきたくやしさもあるだろう。

ぼくもしばらく前までは、かれらと同じ気持ちだったんだけど、昨日の記事に書いた通り最近ちょっと考えが変わってきた。

そもそも超常現象は、本質的にグレーなものだとおもうようになってきた。

この先、人類がどう進歩しても、世界を2元的に見つめることをやめないかぎり、かならず世界を「光と闇」、「正義と悪」、「真実とウソ」に分割してとらえるはずであり、かならずそのあいだにグレーな領域が生まれる。

そして、そこがオカルトの潜む場所だ。

かりに米国防省がUFOについて隠ぺいを行っていることが、明らかにされたとしよう。しかし、それで新しい時代が来るわけではなく、その周縁に新たなグレーゾーンが生まれるだけだと思う。グレーゾーンそのものは永遠になくならない。

LGBTの運動も同じことで、これまで存在を黙殺されてきた人々が声を上げるのはもちろんいいことだけど、かれらが陽の当たる場所に出てくれば、かならずその周縁に、べつのグレーゾーンが生まれる。

心霊現象もUFOも、むきになって主張すれば、狂信者やカルトに利用されてあらたなグレーゾーンを生むばかりだ。それよりも、グレーゾーンにとどめて、楽しめる人だけがよゆうをもって楽しめばいいのではないかと思うようになった。

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