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危険度は?日本への拡大は?イギリスで見つかった”変異種”について現在判明していること【全文無料】

この1週間ほど、日本のメディアでイギリスが取り上げられない日はなかったかと。Brexitの合意(これについてはまた後日)もビッグニュースでしたが、それと同じくらい注目を浴びたのが「イギリスで確認された新型コロナウイルスの変異種」でした。

わたしは医療の専門家でも何でもないただのライターなので、突っ込んだご質問などにはお答えできませんが、現在、イギリスや他国の主要メディアで取り上げられている内容をできる限りわかりやすくまとめたいと思います。長いので、気になるところだけお読みいただければ💓

①イギリスで見つかった「変異種」ってそもそも何?

イギリスで見つかったこの変異種(B.1.1.7と呼ばれています)は、ウイルスのスパイクたんぱく質と呼ばれるパーツが変化したことで、ウイルスが人体の細胞に容易に入り込めるようになったと考えられています。つまり、今までよりも人から人へ感染しやすくなったということ。

感染力が実際にどの程度上昇したかという点については、研究機関によって70%増、60%増、100%増など、さまざまな数値が出ています。ただ、これらは実験室での培養試験の結果なので、実際に人から人の感染で得られたデータではありません。

また、感染力が高いという以外の特性(重症化率や致死率が高いなど)は確認されていません。

②なぜイギリスでその変異種が発見されたの?

そもそも、ウイルスの変異自体は世界各地でしょっちゅう起こっています。たとえばヨーロッパでは今年2月、変異種D614Gが出現。現在世界でも主流の変異種となりました。また、ヨーロッパ内では他にもスペインで夏期に出現したと見られる変異種A222Vが広まっています。

今回の変異種B.1.1.7がイギリス国内で発生したのか、他国から運ばれてきたのかはわかりません。そもそも、自国にどのような変異種が存在するかを知るには、ゲノム配列の解析が必要。そして、この解析をどの程度行っているかは実際のところ国によってまちまちなんです。

イギリスはゲノム学が進んでおり、早期からこの変異種の存在を確認していました。しかしこれが仮にゲノム解析の点で遅れている他国(たとえば発展途上国)から来たものの場合、その国や周辺国でB.1.1.7が広まっていても認識されていない可能性があります😧

なお、「変異自体がどのように起こるか」という点については、免疫の弱い患者の体内にウイルスが長期間留まっている間に出現した可能性が濃厚。つまり、ウイルスを体内に保持し続けるとウイルスの一部が変化してしまう場合があるんですね💦

③どこでどの程度、感染者が出ているの?イギリス発の空路や陸路を止めれば、その変異種の拡大を食い止められるの?

B.1.1.7は今のところイギリスの首都ロンドンやイングランド南東部を中心に感染者が増えており、イギリスの他エリアでも少なからず見つかっています。しかし上述の通り、そもそもこの変異種がイギリスで発生したものかどうかも不明なんです。

この数日で、日本やフランス、ドイツなどのさまざまな国でもB.1.1.7の感染者が次々に発見されてニュースになっていますが…。

イギリスでは今年9月にB.1.1.7の感染者が確認され、11月頭からは急スピードで増加しました。そして、その間ずっとイギリスと他国との間の行き来は行われていたため、ざんねんながら、すでにB.1.1.7は世界のさまざまな国に広まっているでしょう。今慌ててイギリスに対して国境を閉じたとしても、すでに感染が広まっている他国から持ち込まれてしまうかも。

ただし、それが空港の検査などでちゃんと検知されたり、あるいは無症状のまま隔離期間に治癒したりしている可能性はもちろんおおいにあります。それは、その国が普段からどれだけ厳しく検査や隔離を実施しているかにかかっているかと。

なお、日本はこれを踏まえて、2020年12月28日から2021年1月31日までの間、すべての国や地域からの外国人の新規の入国を拒否する方向で最終調整を行っています。本気で流入を防ぐためにはこのくらいしないとダメなのでしょう(日本国内ですでにどれほど広がっているかはわかりませんが…)。

④その変異種に既存のワクチンは効くの?

新しい変異種B.1.1.7に対しては、ファイザー、モデルナ、オックスフォードが開発したワクチンはどれも「おそらく」効くとされています。ただし、今回のように何か所も変異したウイルスが同じようなスピードで変異を続ける場合、数か月後には現行のワクチンが効かない変異種が現れる可能性も。ただその場合、ワクチンの一部に変更を加えことで対処できます。

しかし、変異の方向性によっては、長い目で見るとそのうち今のワクチンの部分的な修正では対応し切れなくなる可能性はあります。上に書いた通り、ウイルスは基本的に患者の体内で変化するので、予防などで感染者数を減らして「なるべく変異のスピードを遅らせる」ことも目指していくべきです。

⑤感染拡大が止まらないイギリスで、ロックダウンやワクチン以外のコロナ対策は進んでいるの?

ちょうど今日、ユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドン病院(UCLH)で、英製薬会社アストラゼネカが開発した抗体をコロナ感染者に投与するという臨床実験が始まったことがニュースに。

ワクチンを接種しても体内で完全な免疫が生成されるのには数週間かかります。しかし、抗体投与では出来上がった抗体がダイレクトに体内に送り込まれるため、新型コロナウイルスをただちに無力化するという仕組み。同様の技術はすでに狂犬病などの他のウイルスに使われており、コロナウイルスに対しても大きな期待がもてます。

免疫力が低下する病気に罹患している人やアレルギーのある人など、何らかの理由でワクチン接種を受けられない人に対しても、この抗体投与が役立つ可能性があります。

抗体の効き目は最長1年間持続する見込みと言うし、なんだか夢のような治療方法ですが…。1回の投与で数万円のコストがかかると試算されているため、あくまで特別な人に特別な場合のみ使われることが想定されています。基本的にはやっぱりマスクやソーシャルディスタンスなどによる感染防止と、そしてワクチンなんですよね!

⑥おまけ:エリザベス女王からのメッセージ

恒例のクリスマスのメッセージ。日本語訳付きの動画が上記から観られますので、よろしければどうぞ~♪

わたしは下記の部分だけ引用させていただきたいと思います。

This year, we celebrated International Nurses Day on the 200th anniversary of the birth of Florence Nightingale. As with other nursing pioneers like Mary Seacole, Florence Nightingale shone a lamp of hope across the world.
今年、フローレンス・ナイチンゲールの生誕200周年を迎え、国際看護師の日を祝いました。メアリ・シーコール(※ジャマイカ出身の看護師)などの他の看護分野の先駆者らと共に、フローレンス・ナイチンゲールは世界中を希望というランプで照らし出しました。

苦境に見舞われているイギリスですが、歴史ある「科学の国」そして「看護の国」であるこの国が、このパンデミックで世界に大きな貢献をすることを願ってやみません。今は一時帰国中ですが、イギリスで活躍する科学者や医療従事者(日本人の方も大勢います!)に心よりエールと尊敬の念を送りたいと思います🥰

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