過去を纏う、今の私
「私の描いた絵をTシャツにしたい」と恋人が何度も言ってくれたけれど、私はなかなか行動に移せなかった。なぜかはわからない。ただ時間だけが過ぎていった。
夏になり、毎日のようにTシャツを着る季節になると、恋人からまた「Tシャツ作ろう」と声がかかった。私は「作ろう!」と返事をしたものの、結局夏の終わりが近づいてもまだ手をつけていなかった。
ある日、ようやく気持ちが動いて、これまで候補に上がっていたボールペンで描いた絵をサンプル画像として仕上げ、恋人に見せた。すぐに反応が返ってきて、どの絵を使うか、どのサイズで作るかを話し合い、Tシャツはあっという間に完成した。
自分の描いた絵をTシャツとして身に纏う体験も、恋人がそれを着てくれる体験も、すごく嬉しかった。そこからは他のサンプル画像も作り始め、さらに別の絵を使ってのTシャツ作りも進んだ。なぜもっと早く作れなかったんだろう、と考えてみる。
めんどくさいわけでも、興味がなかったわけでもない。それなのに、どこかで動き出せなかった。それは、もしかすると「過去の絵」を使うことへの抵抗だったのかもしれない。「変化」を大切にしている私にとって、過去に描いた作品を今の自分と結びつけることが難しかったんだと思う。どこかで、Tシャツにするなら「今」の自分が描いたものじゃないといけないという気持ちがあった。
今回Tシャツに使った絵は、病気で長期入院中に描いたものと、入院の前後に描いたもので、生と死について強く考えながら描いた。だからそこに引っ張られるのが、少し怖かったのかもしれない。その絵をどこか「過去のもの」として距離を置いていたように思う。でも、今回Tシャツを作ったら、「過去の絵」という感覚ではなく、「私の絵」として受け入れられた。それがすごく嬉しかったし、今まで抱えていた違和感がやっと消えた気がした。
「過去は過去」で「私は私」だけど、過去の作品も形を変えれば「今の私」の一部になるんだと感じた。だからこそ、今の私がそれを着ても素直に「似合う」と思えた。これからも過去の作品を形にしていきたいし、新しい絵もたくさん描いていきたい。
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