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パリの料理人の働き方が変わってきた件について


みなさんは料理人というとどんな感じの仕事を想像をしますか?


料理人になる前の私の想像は、キラキラした面もある一方、厳しい世界、男社会で体力勝負こんな感じを想像していました。恐らく皆さんも少なからず同じようなイメージはされているかと思います。そしてそれはあながち間違っていなく。   私がパリに渡った理由は日本よりも外国の方がそういう面でもう少しリラックスした環境で働けるかなということも渡仏理由の1つ。

実際のパリのレストランの働き方は(もちろん差はあるけれど、ちょっとした高級なお店だと)大体1日平均の労働時間は13−14時間、私は三つ星レストランで働いたことはないけれど友人曰く三つ星は18時間くらい。(確か1日って24時間だったよね?って時間)
でも週2回は確実に休めるし、何より年にバカンスを5週間取らなければいけないという法律(取らないならばその分をオーナーはお金で払わなければいけなく、とても高くつく。のでお店を閉めてみんなで休むというのが小規模レストランでは一般的)なので、ほとんどのレストランは8月3−4週間閉めて年末に2週間くらい閉めるのが本当に普通。このバカンスという大イベントがあるからそれをめがけて頑張れる。
そんな感じだった。


そう、それがパンデミックが起きてロックダウンがあって以来、ガンガン突っ走ってきたパリの料理人たちに疑問が浮かんだのだ。


「俺たち働きすぎじゃね?」


フランスの子たちは進路を決めるのが比較的早くて、18歳くらいからそのレストランの当たり前の環境に入れられて疑問を持たずにとりあえず頑張ってきた人が多い。そんな子たちがロックダウンになり働かなくてよくなって、冷静に自分を顧みる瞬間がみんな同時期に起きたのだ。そしてロックダウン解除後何が起きたかというと、「パリの料理人が減った」ということ。これは私も結構驚いた。     もっとゆっくり働くため田舎に戻った人、料理人自体を辞めて違う職に就いた人。そして残った子たちも急に労働時間について苦情を申し立て始めた。この現象についてネガティブにとらえた人もいるけれど、私はすごく良い流れだ、と思った。周りに、社会に合わせるのではなく、自分に基準を合わせる。日本でもあれ以来働き方への考え方が変わったと聞いたけれどここでも、
というか世界の多くの人が自分の幸せとは何だろうと真剣に考えさせられる貴重な期間だったんだろうと思う。

それぞれが色んなシチュエーションで大変だったと思うけれどそこから見出した何かが皆んなあったと思う。労働時間を減らすことは怠けではない。その浮いた時間を自分のために思いっきり使えばいい。人生は限られているのだから。もちろんもっと働きたいのなら働いたらいい。問題なのは「自分がどうしたいか、どんな働き方をしてどんな生き方をしたいのか」それを尊重し、上にたつひとは全員(自分、従業員、お客さん、生産者も含めた全て。)が幸せになれる方法を見出し美味しい料理も作る。このバランスを上手くとっていくのがこれからの飲食で大切になっていくと思っている。


世界のレストランの順位やミシュランの星などは食べる側の基準になってわかりやすいかもしれないけれど、何だか古い感じがしてしまうのはきっと私だけじゃない。作り手も食べ手ももっと自分の基準を大切にしてひとつひとつ判断していけたらいいなと。
そんなことを思ってます。


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