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料理人が考える美味しいサラダとは


私はレストランに行くとどうしても職業病的に色んなことを見てしまう癖がある。でもなるべくその場を楽しみたいし、それぞれの考え方を尊重したいし、あまりあれこれは考えすぎないようにはしているのだけれど、でもやはり気になってしまういくつかのポイントがあったりして、その1つにサラダがある。


以前いたレストランで初め前菜を担当していた入りたての頃の話しなのだが、入りたての私をずっと指導してくれいていた先輩がいた(彼は今でも尊敬する料理人の一人で彼ほど繊細な感覚と舌を持った料理人は未だ見たことがないと思っている。)                                  その時のコースの中にフォアグラのマリネの上にトレビス(イタリア原産のチコリの一種)のサラダをのせて、上からフロマージュブランのパウダーをかけるといったお皿があった。                             このトレビスのアセゾネ(味をつけること)でその先輩に随分と注意されていた。まずトレビスの状態だけれども、水に戻して(冷たいお水にその野菜がシャッキリと一番いい状態になるまで漬けること)シャキシャキにしておくのがまず営業前の大前提で(ここのレストランでは火を入れる入れない関わらず使う野菜全てこの状態にして使っていたので朝一の仕事としてその日使う野菜を全て冷蔵庫から出して来て水に戻す作業から始めていた。)この作業は意外とやっているお店は少なく(もちろん元気のないハーブやサラダは漬けるけれどそれ以外は意外とみんな少し萎れてても使う人が多い)私はこの習慣はこのレストランを辞めた後も続けている。                                   どうせ火を入れてしまうのに何故?と言われたら即答する。一番いい状態に持って行ってから調理するのがベストだと思うから。それに水を吸って元気になった彼らのエネルギーは全く違うから。そのエネルギーは間違いなく料理に反映される。同じ類のことで、元気のない料理人やイライラした料理人が作った物にも彼らのその感じは間違いなく入ってしまう。私は比較的こういうことが気になってしまう。それはお客さんも食べながら必ず潜在的に感じていると思う。だから私はいつでも自分の状態がフラットであるように、むしろプラスのものを込めれたらいいと思いながら料理している。だってそこの料理を食べたら美味しかった上に元気になる。なんて最高じゃない?なんて。
話は戻るがアセゾネは毎回そのお皿ごと(2−3人マックス)にする。なぜ2−3人マックスかというと多ければ多い程味もバラつきやすいし混ぜる回数が多くなる分状態が悪くなるから。2−3人のサラダを混ぜる回数は本当2、3回それ以上はくたってしまう。
その時は塩、オリーブオイルにゼレス(シェリー酒のビネグレット)にオレンジの自家製コンフィチュール(これすごく美味しくて、主に料理に使えるから皆さんにも知ってほしい!
作り方下に載せます)というシンプルなもの。トレビスの苦味がオレンジのコンフィチュールの苦味と合わさってとても美味しく大好きな組み合わせだった。
そう、先輩に注意された話に戻ると、このサラダを作るポジションは他にデザートやアミューズブーシュ(いわゆる突き出しのようなもの)2つめ3つめの前菜やとりあえず入りたての私にはアップアップになる要素満載な立ち位置だった。(正直いうと肉や魚をやる立ち位置より集中力や繊細さがいると今でも私は思っている)

そんなある日いつも通りお客さんが集中して入って来て一人でバタついていた。 立ち位置的に真ん中で前菜などの冷たい方もシェフの補佐もしていた先輩が私の用意したサラダを見て、ザバッとゴミ箱に無言で捨てた。私はびっくりしたしそんなことしなくてもいいのに、と反抗的な気持ちを持った。しかし落ち着いてみてみるとサラダを混ぜるボールにかましていた氷水(冷たく提供したいものは必ず氷水をかましてアセゾネしていた。)も溶けていたし食べてみたら悪くないがたしかに完璧じゃなかった。                             繊細な味付けでデリケートな立ち位置だからこそ「完璧」じゃなくちゃいけない。ダイレクトにお皿に出てしまう。それを側からみてNGを出した先輩はやっぱりすごい。丁寧にやっていたつもりだったものが焦ってやっていたらあのクオリティーに落ちてしまっていたことに私は結構自分でショックだったし先輩のその行為もインパクトがありすぎてその日以来私はサラダをバタついた状況でアセゾネする時こそ一息必ずついて落ち着いてやる習慣ができた。               だから少し高級なお店でお肉や魚の火入れが完璧でもそういうところが目についてしまう。偉そうだけれども私にとってはとても大切な先輩の教えであり重要事項なので気になってしまうのはしょうがない。でも逆にビストロなどに行って添えてある期待のしていなかったサラダが完璧だとハッとしてしまう。どうした?とさえ思う。それくらい作る方も食べる方も優先事項の下の方になってしまいがちなパーツなのだ。だからこそ目立つこともできたりする。
今日はこんなサラダの話。
読んでくれてありがとうございます。
何だか昔のことを思い出しながら書いていたらとても楽しくて、懐かしくて、忘れかけてたこととかもあって。思いだせて良かった。

お料理に使える万能オレンジコンフィチュール
これはどんなジャンルの料理にも使えてとても便利。砂糖少なめが使いやすいので市販のものより随分と砂糖は少なめ。長期保存は冷凍庫がいいです。季節に大量に作り小分けして冷凍庫へ。こちらではオレンジやオレンジサンギーヌ(ブラッドオレンジ)グレープフルーツ、レモンでよく作りますが、日本でしたら素晴らしい柑橘類がたくさんあるので(柚子、文旦、いよかんなど少し苦味も強いもの)が私はオススメです。
作り方はまず無農薬のものを用意。
皮をピーラーでむく。白いところをは苦いので表面の皮のみ剥くようにする。
皮を一度(苦味が苦手な方は二度)茹でこぼす(水から沸かして沸いたらお湯を捨てること)湯がいている時間が長いと柑橘の香りも逃げてしまうので注意。沸いたらOK。ザルでよく水気をきっておく。
実の白い部分を包丁で落とす。(薄皮は使う。程よい苦味はあえて残したい)
中の実をざく切りにし、種も取る。
先ほど湯がいた皮と果肉、砂糖を鍋に加え火を入れる。
ここでも火を入れすぎると香りが飛んでしまうので入れすぎない。
ミキサーで回して完成。(あまりにも水っぽかったら少し詰めてもいいけれど、香りが飛びすぎないように注意)
私は煮込み料理の隠し味やサラダ、ソースに合わせたり、ドンポーローなど中華系の豚肉の角煮(八角などの中華系スパイスと合う)トリの唐揚げ(味付けの時点で少し加える。あとマヨネーズと合わせるのも爽やかでおすすめ。
とにかくジャンルを超えて色々使えるのでお試しあれ。


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