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ルビーロウで染める、テスト

※本記事には虫の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください。

自然の素材を使った染色には植物だけでなく泥や虫や、貝なんかも使うことがあります。
虫で代表的なのがカイガラムシで、エンジムシ(コチニールカイガラムシ、虫の本体からカルミン酸)ラックカイガラムシ(分泌物、ラッカイン酸)で染まる赤色は色調や鮮やかさが独特で、他の素材では代え難いものです。共に染色だけでなく食品の着色料として認められています。
染めでも虫だからダメという人もいらっしゃることは承知した上で、私自身は、虫全般が得意というわけではありませんが、ヒトが安全に活用してきた歴史を尊重する派です。
ラックのフィトピグメントを石鹸講座で使ったこともありました。

ラックとFlame of the forestの顔料の石けん
顔料化(フィトピグメント)

ところで、草木染めの醍醐味のひとつに、植物でどこまで美しい色を出すかというのとは別に、身近な素材、地の物で染めるというのがあると感じています。本来、各地域で後者のように繋がれてきたものだと思うし、逆に強いアピールや再現性が求められるプロではない、素人だからこそ、わざわざ大量に遠くの素材を購入するのではなく、その時限りであっても地元で出会ったものの色を楽しみたい。
生活者としてのワタシは、染めだけでなく、最近は石けんもそんな気持ちが強くなって、通販でオプション素材を買うことがほとんどなくなりました。
一方で探究者であるもう一人のワタシもいて、その目的だと素材を取り寄せるのですが、1-2回の実験程度の量を購入するのが難しいこともあり、気持ちの折り合いをつけるのが大変です。
実験用の残った素材を放出とか、考えようかな。


ルビーロウムシが気になる

話がそれましたが、そんなわけで、
探究者であり生活者でもあるゆりくまは、輸入のエンジムシやラックじゃなくて、その辺にいるカイガラムシでも赤が染まったりするのではないかと思っていました。
目をつけていたのが、ピンクのカイガラムシ、ルビーロウムシです。
実は職場の植木の一本がコイツまみれになっていて、カイガラムシが着くと一緒に併発しやすいスス病で黒くなるので、目について仕方ないのです。

写真はなるべく密集してないきれいなところを選んでいますが、汚めでごめんなさい

ルビーロウムシ、汚くてすいません

ルビーロウムシのメスは、ピンクの分泌物(ワックス)に覆われた状態で木の葉や枝にくっついています。ワックスの量は圧倒的に少ないけどラックに似た感じ? そして中の本体を潰すと赤い汁が出るとのことでこちらはコチニールのよう。
いずれにせよ、どちらかから色が得られるのではないでしょうか??

なんて、ぼんやり考えていたところに、参加しているFBの画材のグループに、集めて染めてみたという猛者が突然現れました。普段は伝統的な日本画剤の展示会や使い方などの話題ばかりなのでリアクションも薄くさらっと流れていったのですが、私一人がワクワク。。。 これは自分も試してみなくては。

採集とルビー色の抽出

ルビーロウムシは、上記の職場の植木から、手袋をして指で剥がしとって集めました。割り箸等でこそげ取るのも試しましたが、硬くて結構力が必要で、剥がれたときに反動で何処かへ飛んでいってしまうことが多くて、結局道具なしが一番という結論です。

人目につかないようにコソコソと5分くらいで集めたものは紙コップの底にサラッと溜まるくらい。小さいものなので何本もの枝と戦った割には少しでした。。。
(結局、何人かに見つかって説明する羽目になりました)

スス病の黒い粉が気になるので、これを洗ってから煮出すという手順を取ったのですが、結論から言うと洗ったのは失敗でした。ススは落ちなかった上に、水洗いした段階でピンクが結構流れ出ててしまったのです。ワックスは冷水では解けないので、おそらくムシ本体の色素が出てしまったのだと思います。

ルビーロウムシ 

しまった〜と思いながらも残ったものをボウルに入れて煮出し、ピンクベージュの染液を得ました。40mlくらいだったかな。
ここでも失敗がありましたが、それは色には関係ないので後述します。

煮出して染めてみました

染めてみる!

3cm角くらいのシルクの試験布を染めてみました。
ミョウバン先媒染、2回染めです。染液と同じ、ピンクベージュに染まりました。

ルビーロウムシ染め

染まることは確認できました。これより大きいものを染めようと思ったらかなりの量を採集しないといけないので、なかなか大変そうです。
逆にいうと染色用に販売されているカイガラムシさんたち、色素量が圧倒的に多そうとはいえ、あの量を集める(育てる)のはとてつもなく大変なのではと、感謝?の気持ちでいっぱいになりました。

残りの染液から顔料、フィトピグメントができることも確認しました。とはいえほんの少しなので濾過したら全部濾紙に持っていかれてしまうため、確認しただけです。自然乾燥で容器の底にこびりついたものを取り出せたらいいなと、ただいま放置中です。

顔料(フィトピグメント)もできます

反省とまとめ

洗ってはいけない

実は初めに流れ出してしまった赤はもっと青みがあったので、洗わずそのまま使っていたら、少し鮮やかさが増していたかもしれません。

煮るときはお茶パックに入れよう

煮出すと熱でワックスが溶解します。冷めるとガッチガチに固まるので、ボウルにこびりついて後始末が大変!
すっかり忘れていましたが、ラックの経験から、あらかじめお茶パック(出汁パック)に入れておくと、ボウル側の被害をだいぶ減らすことができるはずです。スス病の黒いところもお茶パックの中に閉じ込めることができます

道具の洗浄はアルコールで

これはラックの経験が活きたのですが、ボウルや鍋にガチガチにこびりついたワックスはアルコールに溶解させて落とすことができます。消毒用より無水エタノールが良いです。
汚れたボウルを、乾燥した状態で湯煎にかけて外側から温めつつ、たっぷりアルコールを含ませた紙や布で内側のワックスを拭き取る、というのがゆりくまが編み出したテクです。(独学なのでプロがどうしているのか知りません)

アルコールで落とせます

ということで、ルビーロウムシでもピンクが染まりそうだよ、ということを確認した実験でした。
またチャンスがあれば、もう少し量を集めて、でも染めに使えるほどは難しそうなので、顔料にして保管しておきたいと思っています。

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