8,つかの間の安定期

女優を演じて、夫が不在の時に本来の自分に戻る自分は、心身にはよくなかった。いくら食べてもゆっくり過ごしているつもりでも、体重は増えず、立ちくらみが時々起きたりと、不健康ではあった。ただ、子供と散歩したり、笑顔が見れることは何よりも大切な事で、私に経済力が無いうちは現状を維持するしかなかった。友人には「大丈夫?やせすぎてない?頬こけてるよ」と心配されることはあったけど、今は忍耐。それしかなかった。単純な発想で、安定期のうちに夫に実家近くに家を移り住みたいことを話してみた。周りの医者友達が結婚して家族をもって自分の家を建てているのも意識してか、すんなり受け入れてくれた。夫は自分の実家が嫌いで、実家には近寄りたくない人だった。夫の生い立ちや実家についてはまたどこかで話せたらと思う。実家や生い立ちの影響で夫の人格が形成されたのだろうなと、支援団体の人にも言われたのと、私も夫と過ごしながら欠片ほどの同情はした。しかし、だからといってそのしわ寄せを私や子供が受けるのは違う。色々な気持ちを持ちながらも、とりあえず自分の知る土地へ行けば少しは辛さは減るかもしれないと、漠然と思い地元へ引っ越すこととなった。

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