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どんなに疲れても、幸せ(ローマ→フィレンツェ編 )
もうイタリアだけで帰国してもいいかな、と一瞬思う。
旅に出たばかりだというのに、そんな風に思うくらいフィレンツェでの時間は濃密で、今回の旅の中でも特別なものになった。
大切な時間を過ごした部屋を後にして、もう二度と通らない道を歩き、そしてもう会えないだろう人々と言葉を交わす。旅の間、何度もそんな経験を繰り返した。
一瞬一瞬が大切で苦しいほど、感覚が研ぎ澄まされて、目に見えるものの鮮やかさが際立つ。
子供に戻ったように、誰でもない自分になって、私もただ全体の一部なんだということを感じたくて、旅をするのかもしれない。
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リアルタイムで書こうと意気込んでいた旅行記は、今回のような移動が多い旅をしながら、文章をまとめて写真も選んで投稿、となると普通に1日2時間くらいかかってしまって、旅の時間が勿体無い(そして体力が持たない)ので早々に諦めた。
その分、毎日おおまかな文章やメモだけは書いていたので、帰国後に反芻しながら執筆するという楽しみが出来たので良かったと思う(仕事中の良い気分転換にもなるし)。
旅行記を書いている間は旅は終わっていない、というのをどこかで読んだことがあるのだけど、本当にそんな気持ち。書くことでようやく時間が進みもするし、ゆるやかに終わってゆく感覚がある。
では、フィレンツェ編です。
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2022年9月15日。
いつの間にか気絶するようにベットで寝ていて、隣の部屋の、水を使う音で目が覚めた。朝の4時。多分寝たのは10時くらいだったと思う。肌寒いしお茶でも飲もうと、共同キッチンでお湯を沸かし、カップを持ってテラスに出る。
まだ外は暗い。きっと1番静かな時間。天気予報の通りに、雲が厚く大きく膨らんでいる。風が吹いて、並木の大きなポプラの木が揺れる音を聴いて、とても懐かしい気持ちになって少し驚いた。ここは初めての国なのに、昔からここに住んでいるような錯覚。季節はしっかりと秋に向かっていて、それはどこにいても同じように郷愁を誘うらしい。
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朝になる前に今日の計画を立てないと。今日は鉄道でローマからフィレンツェに向かう日。次の宿はかなり不便な場所を選んだから、そこまでバスをどうやって乗り継いでいくかのおさらいをしないと。
ひと通り下調べをした後、シャワーを浴びてGoogleマップで見つけた近くのマルカート"Mercato Trionfale"に行く。海外に来たら市場やスーパーには必ず行きたい。私はやっぱり、人の暮らしを見ることが好きだと改めて思う。それは日本にいてもそう。ここで暮らしたらどんな食事を作るだろう、どんな服装で、どんな風に1日を終えるのだろう…そうやって妄想するのが楽しい。もし、いつかどこかの国に住むことになったら、是非とも市場の近くで暮らしたい。
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市場をふらふらと歩いて、見たことのないフルーツを買ってみる。2€。お店の男の子が、味はドラゴンフルーツのようなものだと教えてくれた。とても優しい笑顔。スパイキーだから気をつけてね、と。どういうことだろう…。イタリア語でフルーツの名前を教えてくれたのだけど忘れてしまった。手のひらサイズのオレンジ色の実に、かわいいドット柄。今日の宿で食べてみよう。
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マルカートを抜けて、システィーナ礼拝堂へ。
陽射しが強い。そしてものすごくたくさんの観光客。ここは入場料無しで誰にでも開かれている分、セキュリティーチェックがしっかりしている。長い列に並び、空港に入るときのような荷物チェックを受けて入場。
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改めて思った。
礼拝堂に向かう時、たくさんのシスターを見かけた。みんな胸に大きな十字架を下げているが、人種も修道服もそれぞれ違う。
イスラム教でいうメッカのように、キリスト教徒にとってここは、一生に一度は行きたい場所、行くべき場所なのだろうか。そうだとしたら、私の何倍も何倍もあの空間に感動するのだろうな、と思う。この広場でローマ法皇が演説をするのか…と、信者でもないのに想像しただけで鳥肌が立つような、ものすごい場所だった。
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宿で荷物をピックアップして、駅に向かう。昨日のカルボナーラのリベンジをしようと、テルミニ駅近くのレストランに入る。うん!美味しい!!かりかりのパンチェッタが良い感じに効いている。幸せ!
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列車に乗り、2時間ほどでフィレンツェ駅に到着。トイレが…無い。ヨーロッパにはあまり公衆トイレが存在しないらしく、どこかのお店に入るしかないようだ。コーヒーの気分ではなかったけど、駅構内のカフェでやむなくエスプレッソを初体験することに。
前に並んでいたイタリアの中年女性は、エスプレッソが出されるとその場でグイーッと飲んですぐに出ていった。なるほど、それが本場の飲み方ってやつなんですか!?カッコいい。一杯1.2€。
駅を出てバスに乗りたいのだけど、バスのチケット売り場が分からない。調べていた窓口が閉まっていて、それらしいところが見当たらない。30分ほど重いバックパックを背負って、駅構内や周辺を探し回る。うう、辛い。そういえばTabacchi(タバッキ)というコンビニのようなところで買えると、どこかに書いてあったな…と薄っすら思い出し、とりあえずタバッキを探す。
あった!ここは一体、何屋さんなのだろう……狭い店内。コンビニっぽくはないような??
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店のおじさん達にバスのチケットはありますか?と聞くが英語が伝わらない。10回の回数券が欲しいのだけど…というと、これ?と渡されたチケットは、私が事前に調べていたものとは違った。same?と画像を見せて聞いたら、うんうん、と頷いている。ものすごく不安。このチケットにはataf(イタリアのバス会社の名前)と、どこにも書いてないし…。だけど、これ以上やりようがない。英語で調べても出てこない。おじさんたちを信じよう。もしかしたら最近新しく変わったのかもしれないし…。
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もう疲れて歩けないから、とりあえずバス停まで行って、30分ほどそこで待つことにした。何度も言うが、バックパックが重い!本っっっ当に疲れた〜。歩数を確認すると、すでに2万歩を超えている。移動が1つ1つ大変過ぎる。
でも、それでも私は嬉しかった。こうやって重いバックパックを背負って旅が出来ているだけで、もう満点なんだよ!身体はしんどいけれど、自分が心から望んでいたことで疲れても、心は疲れない。幸せだ。
バスに乗って今日の宿に向かう。大切な場所になったVillamagnaへ。
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カルボナーラリベンジをしたお店。テルミニ駅から徒歩で行けるので立地も◎
Ristorante Amedeo
+39 06 481 7632
https://maps.app.goo.gl/arwVjyhWFbgHSPhz9?g_st=ic
記事を読んでいただいてありがとうございます。いただいたサポートは、次のだれかの元へ、気持ちよく循環させていけたらと思っています。