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突然のお誘いベルリンクリスマスマーケット、ゼンマイコーラスおじさん

2023年のクリスマスも目前、クリスマスはドイツで一番と言っていいほど大きなイベントじゃないだろうか。

クリスマスマーケットやクリスマス特有の焼き菓子、チョコレート、マジパン、シュトーレン、温かいグリューワイン、
網に包まれたもみの木を抱えて帰路につく人。

ドイツに来て4回目のクリスマス、ようやく賑わいを取り戻しているんではないだろうか。


2019年、あんなに目をキラキラさせて見て回ったクリスマスマーケットも、今年は正直「どこ行っても一緒ですわ〜」とスレたような発言をしている。

「クリスマスマーケットなんて観光客が行くとこだよ、」と言うドイツ人も少なくはなく、私もドイツ人ぶってみたいお年頃なのだ。

実際日本の祭りほどの屋台のバリエーションは無いにしても、実際ハンドメイドの一点ものなどが売られている場所も多く、プレゼント探しにはとてもいいと思う。

そして何より思い出なんだ、ああいうのは。
祭りごとに求めるのはエネルギーで、なんとなく楽しかった思い出があればいい。
売ってる食べ物がホットワインと焼いたソーセージだけでも、友達とそれさえも笑えれば割と楽しいもんである。

この前、用事があり駅を歩いていたら、前から歩いてきた友人と偶然鉢合わせて
「これから彼女と合流してジャンダルメンマルクト(ベルリン一美しいと言われている広場でのクリスマスマーケット)に行くから一緒に来なよ」

と誘われ、来た道を戻り一緒にマーケットに向かうことにした。
用事は次の日済ませることにした、

こういうのは勢いが大事だ。

ジャンダルメンマルクト周辺で彼女と合流し、チケットを買って広場に入る。
ほとんどのクリスマスマーケットは出入り自由だが、一部の大きい規模のマーケットは微々たる入場料を払う。
去年より1ユーロ値上がりしていた。

中に入ると人で溢れかえっていて、人をかき分けてグリューワインを購入する、日本のような順番待ちの列は基本ない、

こういうのは勢いが大事だ。


ちびちび暖かくてスパイシーなワインを啜りながら、歴史的な建物がオレンジの光で彩られた風景を眺める、
ここにいる大半の人は風景なんかよりおしゃべりに夢中だろう。

向こうの方では白髪のおじさんたちが燕尾服でコーラスを歌っていているのが見える、周りが騒がしく歌声は聞こえない。
口を同時に大きく開けるおじさんたちは、なんだかゼンマイの人形のように見えた。





友人が彼の両親に送るプレゼントを選ぶと言うので色々ついて回った。
アクセサリーや食器、パズルなど、誰かへの贈り物前提でものを見て回るのも楽しいものだな、と思った。

売っているものも幅広いが値段も幅広く、手作りの皮の鞄なんかは数十万するものもある。
売ってるということは少なからず買う人もいるということで、
なるほど、こういうところに金持ちが紛れているのか…
と、人目につくところにカバンに忍ばせておいた自分が開く草木染のワークショップの宣伝チラシを置いてきた。

ー偶然暇を持て余したお金持ちが興味を持って、大量の友達を引き連れてワークショップの席を埋めてくれますようにー
ー偶然暇を持て余したお金持ちの目にとまり、パロトンになってくれますようにー
と一抹の思いを込めて。


実際ワークショップの参加者にはこのチラシを見て来た人はいなかった。

一通り見てまわり、友人は2個目のホットドッグを買ってマーケットを出た。
三人で地下鉄に乗って帰った。


とても楽しかった。
やっぱりお祭りは楽しいという記憶さえあればそれでいいや、と思う。

地元の小さいお祭りも慣れると今年はいいや、毎年一緒だし、と足が遠くるもので、
爺さん婆さんや両親もいつでも会えるから今回は帰省しなくていいか、と後回しにしてしまいがちだ、
退屈で、毎回同じで、うんざりするような気さえするものが、実は喉から手が出るくらい恋しくて懐かしいものだと後々になって気付く。


地元の風景も、親戚も、隣の田んぼで鳴いているカエルの声でさえ2度として同じものはないんだ、
この前の帰国で痛感した。

まさかクリスマスマーケットの話でこんな内容に落ち着くとは思っていなかったが、
今の私にとって慣れて来ているベルリンの風景や日常も積極的に味わっていこうと思う、むしろここからが楽しいところだとも思う。