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元彼オールスター感謝祭 冬の陣

これは、いつもの記事同様に全て私の私生活でリアルに起きているノンフィクションである。

そして、相変わらず…いや、むしろいつにも増して今回は、今世紀最大の身も蓋もない話を繰り広げる予定なので、皆様にはこの先一切何も期待せずにただただ読み流して戴きたい。

1. 毎年恒例!元彼オールスター感謝祭

私はここ数年の間ずっと、何故だか知らないが毎年5月に“元彼オールスター感謝祭”が開催される。

「元彼オールスター感謝祭」とは、ある決まった時期に過去の男達から一斉に何らかの連絡やアクションが重なってくること。また、その連絡の根底には“あわよくば”という非常に程度の低い下心を孕んでいるケースもある。開催時期は、大体GW明けの5月に多く、別名“男の5月病”とも呼ばれる。

そもそも、昔の恋人達と別れた後も未だに繋がりがあること自体に疑問を持つ方も多くおられるが、私は比較的“男女の友情”というものが成立する人間なので、中には10年前の元彼の恋愛相談を今でも受けたりする事がある。

「何だよダッセェ男だな!」と感じる方もいるかもしれないが、歳を重ねれば重ねるほど、異性から異性の目線で率直な意見を素直に伝えてくれる存在というのはなかなか見つけることが難しい。

そして、大人の恋愛で行き詰まった時、もちろん当事者同士の問題で他人が口出しする事ではないのだが、時として起こった事実を恋愛感情抜きに俯瞰し、異性の思考や視点を踏まえて冷静に指摘してくれる存在なんぞ、最早天然記念物に等しい。そう、それは即ち私の事である。

「もしや、引き続き身体だけの関係が?!」なんて疑われる事もあるが、残念ながら皆様のそういった浅はかな期待に応えられる様なドラマティックな関係は皆無であり、むしろ、当時何故自分たちが恋愛関係であったのかすら疑問に思えるくらいの、まるで夏の温水プールの様に温かくも冷たくもない絶妙な温度感で、現在は男と女という性を取っ払って人と人としての関係を続けているのだ。

しかし、その昔の男シリーズの中でも、突如として何をどう勘違いしたのか、時として三流品がぽろっと混じる事がある。

三流品なら三流品らしくひっそりと身を潜めていればいいものを、彼らはやはり期待通りに間違った異彩を放ち、存在感を存分に示してくるあたりが非常に鼻につくのである。勿論、悪い意味で。

私のこの「三流品」とやらが何を示すかは、このお話が終わる頃にきっとご理解頂けるのではないかと思う。

2. 不意の事故が生んだ悲劇

今年はどうしたことか、例年よりもなんと4ヶ月も早い1月に“プレ元彼オールスター感謝祭”たるものが急遽開催され、「つっっっっ!遂に今年からプレも開催するんかっ!」と、私は今までとは急に変わった開催スケジュールに驚きを隠せなかった。

「きっ、聞いてないぞぉお!!」と昨年までとは違った流れをひしひしと感じながらも、5月の本チャンの約1/3に値する方々から久しぶりの連絡が殺到するという、プレを飾るに相応しい参加人数となった。

しかし先に述べておくが、この元彼オールスター感謝祭というものは、男性サイドが毎年勝手になんの口合わせもなく同スケジュールで自由開催しているだけであり、それに対して私が対応するかどうかは全くの別問題である。

そんな私は、例年通りに最早LINEの友だちリストにすら非表示扱いとなっている彼らからのメッセージを一切開封することなく、携帯画面に映し出されたバナー表示から垣間見える最初の短い文章のみで彼らの心を読みとり、華麗にも“未読”の状態のまままるで何もなかったかの様にゴミ箱へと葬るのであった。


そんなある夜、私はのんべんだらりと良い香りに包まれた温かな浴槽に身を浸しながら、また新たに届いたメッセージを左にスワイプしゴミ箱に捨てようとしたその時だった。

指がお風呂の水滴で滑ってしまい、なんと不覚にもそのメッセージを開封してしまったのである。

「なっ、なんという失態!!」と私は愚痴をこぼしながら、仕方なく開封してしまったメッセージをよくよく確認すると、かれこれ半年以上連絡を取っていなかった相当昔の男であった。

「うわぁ。マジでどうでもいいやつじゃねぇか…」と自然と額からは汗、口からは毒を吐くという全身を使った究極のデトックスをしながら、「未読だの既読だの余計な機能付けやがって…」と、現代テクノロジーに対して大人気なく憤慨するのであった。

3. 「今何してんの?」って聞くな

本来未読のまま闇に消えるべく昔の男からのメッセージに、不意の事故によって既読を付けてしまった私は、疑問文を投げかけてくる文章を敢えて既読スルーするという事に抵抗がある為、今回だけ仕方なく返信することにした。

彼からのメッセージの内容は以下のものだった。



「今何してんの?」



は?

半年以上ぶりに連絡してきて「今何してんの?」とは何事か。

この突如として届く「今何してんの?」は、私が男から届くイラつくメッセージランキング堂々1位を何年も連続で受賞している。

まだ一度も返信していないこの時点で既にイラっときている私は、明らかに冷めた様子でこう返信したのである。



「風呂」



私は、この彼に対して微塵もない気持ちを何処と無く簡潔に文面で伝えるべく、私のこの落胆と苛立ち混じりの想いを「風呂」という二文字に込めて送信した。

皆さんにも想像してほしい。

男「今何してんの?」

女「風呂」

というやり取りに脈ありも脈なしもなく、むしろ脈さえ通っていないことくらい容易にお分り頂けるだろう。(ちなみに、女性の脈ありの模範解答は「今は○○してたところだよ♪○○君は何してたの?」となる。)

私は、そんな一か八かの「風呂」という二文字に全てを賭け、あわよくば既読スルーをされる側になって一刻も早く肩の荷を下ろしたいというのが本音だったのだが、まさか皆さん忘れてはいないだろうか。

此奴が「三流品」だということを。

4. お前のそういう所なんだよ

「三流品」という部類の方々は、基本的に総じて“察することが出来ない”というケースが多い。

勿論、空気を読める人間が絶対的に正しく優れていると言いたい訳ではないが、人間として生まれた以上、自分以外の人間たちと何らかのコミュニケーションを取り、良い関係を築いていくというスキルは極めて重要性が高く、恋愛関係に於いては尚更の事である。

そういったスキルが著しく乏しい人間は、事あるごとに悪びれもせずに人の地雷を次から次へと踏みまくり、各地で全く持って不必要な紛争を起こし続けるのである。

基本的に平和と調和を重んじる私の庭では、そういった紛争とは一切無縁で、白い鳩が飛び交うエデンのような場所なのだが、奇しくも今はプレ元彼オールスター感謝祭真っ只中。一筋縄ではいかないのであった。


そして、「風呂」と二文字だけのメッセージを返し、願わくば返信が来ないことを望んでいたにも関わらず、なんと3分もしないうちにまた着信音が鳴り響いたのである。

緊急地震速報よりも恐ろしい着信音は、これが初めてだった。

そして、あの恐怖の「今何してんの?」「風呂」のやり取りから、どう話を切り返してくるのかと恐る恐る画面を開いたその時、予想とは到底かけ離れた話の展開に私は度肝を抜かれた。



「めっちゃ今じゃんw」



…………。



貴様ぁぁぁぁあああ!しばき倒してやろうかぁぁぁああああ!!

「めっちゃ今じゃんw」って何やねんこらぁぁあああ!!

私の怒りは一気に頂点に達し、直ぐ様Twitterで毒を吐いては白い鳥をパタパタと飛ばしまくるのであった。


話の意図が見えない方の為に丁寧に説明しよう。

要は、久しぶりに連絡してきた彼は、私に対して「最近どうしているの?」という意味で「今何してる?」という連絡をしたかった様なのだが、その質問に対して私が言葉通りに捉え、本当に今してる動作を素直に伝えたので、彼は「本当に今何してるか聞いてるわけじゃねーよw。」と、半笑いでツッコミを入れてきたというなんとも言えない屑話なのである。

もうこの際言わせてもらうが、先ず、久しぶりに連絡する元カノに対して「今何してんの?」という文章しか送れないという乱雑さや気配りの無さ、その不誠実さにマイナス20点。

そして、“同じ国で同じ言語を使ってきた日本国民なんだから、それくらい説明しなくても意味分かるでしょ?”という言語や文化、相手に対する甘えと幼稚さにマイナス50点。

そして、私の「風呂」という二文字の返答で相手の温度を感じ取れないという不感症体質とその鋼のメンタルにマイナス30点。

……そう、もう存在自体がマイナス100点満点なのである。


私は、彼のその余りにお粗末なコミュニケーション能力に終始白目を向きこう悟った。

おい、お前さん。

そういう所。

そういう所なんだよ。

お前にずっと女ができないのはよぉ…。

私は、非常に手入れが行き届いた平和なエデン敷地内で緊急大爆発を起こした地雷の片鱗たちを自分の手で静かに仕舞いながら、先ほど届いたそんじょそこらのホラーよりよっぽど恐ろしいラインに敢えて既読を付けた状態で、此奴をブロックという形で永久の闇に放り投げたのは言うまでもない。

5. 最後に

こんなどうしようもないただの悪口を最後までお読みになって下さった勇者の方々、お疲れ様でした。そして、有り難うございました。

まさか、こんな男の話の為に約4000字以上もつらつらと執筆してしまったという事実に若干の後悔を感じています。

これを読んでいる女性の方で、男性から特に何の要件もハッキリとせず「今何してるの?」と連絡をもらったという方は恐らく少なくないでしょう。

それを嬉しく思う女性はさておき、その連絡をもらった際に「ん?」とどこかに違和感を感じた方は、その直感に従うことをおすすめします。

私の経験上、およそ9割5分ろくな男ではないです。



窪 ゆりか

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