採用はスキルや経験のマッチングでいいのか?その2

人事領域の仕事をして10年以上になり、50歳を過ぎたが、いまだにスカウトのメッセージをもらうことはある。その内だいたい半分くらいは、給与支払いなどの労務業務のポジションだ。経歴は出来るだけ詳しく書いてあるので、見ればその大半が研修や採用業務だということが分かる。給与計算などの人事労務経験は全く書いてない。なのに、どうしてそういうポジションはどうかと進めてくるのか、不思議でならない。

人材紹介会社のデータベースや、転職紹介サイトの、登録者検索項目設定は、それぞれ微妙に違うが、人事ならば、労務、研修、採用、組織開発など、項目にチェックをし、年齢や、性別、住所などの諸条件を入れ、対象者がリスト化される。あまり絞り込みすぎると、0名になったりするが、あまりに条件が広すぎると、数百名、1000名以上にになる。「時間がない」とか、「めんどくさい」とスカウト担当者は、リストに上がってきた人を”一括チェック”などの機能を使い、テンプレートを使って一斉送信をする。だから、「どうして私にこんなのが来るのだろう?」とスカウトメッセージは、こうした”怠慢”からだ。実に不誠実で、失礼な、迷惑行為だ。

求人票の応募条件にあるスキルや経験と、登録者情報をこうしたマッチンぐ機能だけで、推薦してくる人材紹介会社は実に多い。応募者と1時間程度の面談をし、数回メールしただけで、どうやってその人が”とても優秀です”と言い切れるのか。また、求人票に対して採用担当者に質問をするでもなく、単に応募条件の項目でマッチングしてくるだけで、どうして「とてもいい会社です」と、応募者に自信たっぷりに言えるのだろうか。こんなただのマッチングなら、AIを使うまでもなく、誰でもできること。こんないい加減な人に、転職という、大事な人生の岐路を預けることが出来ようか。こんなことを続けるのなら、そう遠くない将来、人材紹介会社はいらない。AIが転職希望者の経歴はもちろん、性格、好みや、行動のくせなどを分析し、最適なマッチングで、仕事や企業をピックアップし、先回りして応募してくれるだろう。

ではあえて、”人間”の人材紹介会社を介する転職活動する意味は何だろうか。”マッチングのその先”ではないかと思う。私の場合、給与計算などの労務業務に経験はない。だが、労務の人とは連携を取ることもあり、一般社員よりも知識はあるし、興味は多少はある。人には言ったことはないが、自分でも意識してないスキルや興味を経歴から読み取り、”今のスキルや経験をこんな風にすると、キャリアアップになりますよ”と、具体的な提示してくれるのであれば、ちょっと話は聞いたみたいと、スカウトにも返信をする。だが、そんなスカウトをもらったことは一度もない。企業の採用担当としても、「なんてこの人を推薦してきたんですか?」と、人材紹介会社の担当に聞き返すことはちょいちょいあるが、「あー、やっぱり駄目ですよね」という回答ばかり。”やっぱり”とは何がやっぱりなのか。確たる自身や根拠がない推薦は、企業、候補者との信頼を失墜させる行為以外、何もにも出ない。

ただ、わかっている条件がいくつ当てはまるかのマッチングから脱却し、まだ見ぬ才能、スキルを発掘し、企業の、人の成長をサポートする、そんな人材紹介会社を求む。


「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。