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【おいしい食パンを買いに行こう!】

父は、東京生まれの都会っ子。昭和一桁とはいえ、東京の中心地で生まれたので、その当時にしては、比較的、おいしい店、おいしい食べ物には、アクセスしやすい環境にあったのかもしれない。また、仕事で年に数回か、国内出張もあり、そのせいなのか、食べ物やレストランに関する知識、情報が豊富だった。

新婚当時は都内のアパートに住んでいたが、母の実家の都合により、田舎に引っ越し、その後、姉と私が生まれた。したがって、根っからの田舎生まれ、田舎育ち、しかも、”衣食住”の中で、食に対する興味/関心が一番薄い私からすると、父の東京のレストランや地方の食べ物の話が始まると、「また始まったよ、ハイ、ハイ。。。」と心の中で鬱陶しく思っていた。

そんな父の33回忌を終え、母と食事に行った際、「そういえば、”横浜においしい食パンを売っている店があるから行こう”って言い出して、食パンだけを買いに行ったことがあったわ」と、母は思い出話をし始めた。

これは50年以上の前の話である。今のように、グルメサイトやグルメ本などなかった時代。両親が新婚時代に住んでいたアパートから横浜まで、今よりはアクセスは断然悪く、何回か電車を乗り継ぎをして、ゆうに1時間以上はかかっただろう。中華街に食事にいくならまだしも、食パンだけを買いに出かけたとは、どれほど、食への執着が強いのかと、私はドン引きした。

また、父は事あるごとに、「俺は誰よりもウナギを食べている」と豪語していた。だから動脈硬化になって、倒れたんでしょう。そんな自慢にもならない話は、私たち家族の前だけであったと、切に願う。

ちなみにわが姉は、父の気質をしっかり受け継ぎ、日夜、グルメ情報をチェックし、ウンチクを語っているようだ。血は争えぬ。

追記:bokuchibi0501さんの画像を使わせていただきました。ありがとうございました。



「人生経験の引き出し」がいっぱいあります。何か悩み解決のヒントになる話が提供できるかもしれません。