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クリス・オウエンのツイート - なぜロシアの兵士はウクライナでの戦闘をやめて家に帰るのか? パート2

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なぜロシア兵はウクライナでの戦闘をやめ、故郷に帰るのか?この短期連載の第2回目では、プーチンの戦争に兵士が見切りをつけた要因について、ロシアの翻訳された記述を見ていくことにしよう。

ロシア兵が戦場で辞めるというのは珍しいことだが、それが可能なのは、プーチンが総動員を望んでいないからである。平時のルールで動いているのだ。”契約兵“はいつでも辞められるが、ペナルティーが課されることもある。

一方、ウクライナの兵士は、戒厳令下にあるため、国で動員をかけ、完全な軍規の下にある。逃げ出すことはできない。つまりロシアには、兵士の確保と維持の両面において、2つの動員上の不利があるのだ。

このスレッドでは、あるロシア兵の戦争準備の記録を見てみることにする。なお、これは2月24日に侵攻が開始された後の話である。侵攻軍の準備の悪さは有名だが、数週間後、数ヶ月後にも多くの問題が残っていたようだ。

2022年3月に入隊し、2022年4月から5月にかけてウクライナで戦ったロシアの契約兵、ヴィクトル・シャイガが、ウクライナでの体験をLiveJournalに書き込んでいる。彼によると、元徴用兵としても契約兵としても、ほとんど訓練を受けていない。

「(以前)徴兵期間中に4回射撃訓練に行き、1回につき6発を撃った。学生時代から、10年生の時に2週間ほど軍事訓練所に行った時は、呆気に取られた、戸惑い、驚いた。

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- 何で、そうなんだ⁈ 何で6発しか撃てないのだろうか?確かに、アサルトライフルを「体感」するためには、弾倉に最低15発は必要なので、その人は単発を2~4発撃った後、4~5発のバーストを試すことができる。

しかし、それをきちんと行うには、当然ながら弾倉ごと、つまり30発の弾丸が必要なんだ。俺の考えでは、ロシア軍で大量に使われている6発の弾丸による標的射撃は...軍事訓練をおちょくってるとしか思えない!」

ロシア兵は以前から、通り一遍の訓練しか受けていないと言われている。教官の質にばらつきがあるだけでなく、指揮官には訓練を途中で切り上げたり、放棄したりする個人的な金銭的動機がある。

腐敗が蔓延しているため、指揮官が訓練費用に充てるはずの資源を盗んだり、上級将校やその「商売仲間」のために、徴兵者を家の建設や工場労働に従事させたりすることがよくあるのだ。

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2022年3月に契約兵士として入隊したシャイガは、2週間にわたる「加速サバイバル訓練コース」に参加し、「少しづつ鍛え上げ、グレネードランチャー、マシンガン、スナイパーライフルなど、あらゆるものの撃ち方を教える」と言われた。

それどころか、「これは全て嘘だとわかった。俺達(22人)は誰一人として何も教えてもらえなかった。武器を試すことさえ許されなかった。」4月に装備を受け取った時、アサルトライフルの「単発・連射モードの設定方法さえ覚えていなかった」と言うのだ。

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「4月6日の午後にアサルトライフルを受け取った時、7日にはもうウクライナに着くと確信していたから、アサルトライフルを支給していた当直員に、”単射モードはどこか?“と尋ねたんだ。これが、俺が受けた訓練の全てだよ。」

訓練を受けていないのは彼だけではなかった。PKM機関銃を渡されたが、装填の仕方が分からないという者もいた。シャイガは、何とかしてあげようとしたが、うまくいかなかった。

「俺は”弾は銃身に入ったか?“と(他の奴に)聞いた。俺自身、機関銃のベルトの挿し方を知らなかったんだ。」

「俺はただ安全装置のはずし方 と撃ち方だけは知っていた。その男は何も知らず、(ヴァルイキの)自分の部隊では運転手になれと言われたと言っていた。俺はスターシナ(一等軍曹)を呼んだ。彼は銃身に弾を込めようとしたが失敗した。機関銃が詰っちまったんだ。」

「それで、チェチェンで戦った先輩のプラポルシク(少尉)がやってきた。彼は機関銃に装填するのに2分かかったが、彼はやってのけたよ。」

これは、訓練不足だけでなく、ロシア軍の下士官部隊の欠如を浮き彫りにする、極めて明快な逸話である。

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米中央情報局(CENTCOM)のフランク・マッケンジー上級大将が述べたように、ロシア軍には「中間管理職レベル:下士官や幕僚といった、我が軍の屋台骨を実際に形成している人々がいないのだ。彼らは、実際に物事を確実に遂行する人達だ」と述べている。

シャイガの部隊は、戦闘経験のある40代と思われるキャリア組の兵士に頼らざるを得なかった。本来なら、作戦立案に専念すべきところを、戦場で部下に基礎的なことを教えなければならない。

また、訓練不足は、兵士の身体的な要求に対応する能力にも影響する。シャイガもそれを目の当たりにした。

「マシンガンを持たされた兵士は38歳で、あまり体を動かすことに慣れていない。

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機関銃、アサルトライフル、装甲ベストを持って行軍し、走り回ったのでひどく疲れ、心臓が痛くなり始めた。」

これも、新兵の健康問題が広く知られているのと同じである。

例えば、ウラジミール・ミハイロフ空軍大佐は2007年、ロシア空軍に毎年徴兵される1万1000人のうち30%以上が “精神的に不安定”、10%がアルコールと薬物の乱用、15%が病気や栄養失調であると発言している。

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シャガイの話から、ロシア軍は人手不足のため、基本的な健康診断がおろそかになっていることがわかる。「俺達の後に来た有志の契約兵士は、全員とは言わないまでも、その多くが健康診断にさえ合格していなかった。」

人手不足のためか、シャイガの仲間の多くは、資格もなく、訓練もされていないのに任務に就かされた。前線に出ることはないと騙されながら:

「ある教官が地域の契約(兵)選考オフィスで、運転免許のレベルがBかCかを事前に知っていたのに「師団長の運転手が必要だ」と大の大人があからさまに嘘をついたという話を個人的に聞いたことがある。

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運転手は殺されることが多いから、誰もなりたがらないからだそうだ。また、ロシアの他の地域から来た人に話を聞くと、多くの人が入隊の際に、”前線には行かない“と言われたと......。

だが、(新兵は)検問所の警備、輸送隊の護衛、既に占領した地域の都市や村の警備を行う第2(軍)部隊になる。」

シャイガによると、偵察や後方部隊に配属されるはずだった専門家も、全員が歩兵に放り込まれた。彼らは皆、「機動中隊の最前線で小銃手や機関銃手、更には擲弾筒手となるために放り込まれた。」

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シャイガは彼の部隊の装備品についての問題についても語っている。「ベストだとは言えない - 寝袋も弾薬入れも支給されなかった。」このような問題は、しばしば汚職に起因する。ロシアの貯蔵庫担当の兵士は、しばしば機材を盗み、ロシアのeBayに相当するAvitoで売っている。

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物資の盗難は、シャイガが故郷のロシアで経験したことで、「みんな、(どいつもコイツも)飼い犬までが盗んでいた」状態だった。「ウクライナの部隊に食糧を運んでいた徴用兵が、缶詰の肉を3箱盗み、部隊で1つ70ルーブルで売っていた。」

「それから、連隊の本部で、そこで働く女性が大きな木箱から「ローゼン」というお菓子を食べている様子も、個人的に目にした。俺の知る限り、あれは前線に直行するはずのものたが、そうはならなかった。」

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ロシアに占領されたウクライナでは、盗難は更にひどかった。「イジュームでは、いつも後方にいる奴らが、ロシアのある地域からの援助が入った木箱にジャッカルのように飛びついたと、それを見た奴らも言っていた。この援助は前線のためのものでもあったんだ。」

「奴らは全て引き抜いて、中のものを抜いた - チョコレート、缶詰、いいタバコ、いい服を全て持って行った -  最悪のタバコを含め、必要のないものは全部残して行った。」

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結局、トラック1台から3箱しか生き残らず、1つは我々の752連隊に、もう1つはボギチャリに送られ、最後の1つはどこかに押し込まれた。後方の野郎どもが荷物を物色しているところを見た者は、外から見るとひどく嫌なものだったと言っていた...」

そのため、シャイガとその仲間達は前線に出る前から、装備は不十分で、多くの場合、ほとんど訓練を受けていない。また、リクルーターに騙され、物流サプライチェーンの関係者に騙されたことに既に憤りを感じていた。

次のスレッドでは、シャイガの戦場での経験が、彼や多くの同僚を辞めさせることになった経緯について見ていこうと思う。

シャイガの記録を翻訳してくれた@wartranslatedに感謝する。

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