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幸せになることと、欲しいもの以外を犠牲にすること

最近、立て続けに周りの人がサンフランシスコエリアから出て、別のところに引っ越していった。

共通する理由は、「家が高すぎて買えないから」。

場所にもよるが、サンフランシスコとその周りのベイエリアでは、普通の3〜4ベッドルームの家を、治安がよく学校もいい場所で買おうとすると、1億2千万から1億5千万円くらいの価格帯になる。確かに20代後半とか30代前半の人が買うには高い。

賃貸でも、市内だと治安の悪い地域を除いて、1ベッドルームの最低家賃が30万円くらいする。

もっと住みやすい場所を求めて、これから家族を作りたい人や、小さい子供のいる人が、オレゴン、アリゾナ、ユタなどの別の州に行ったり、同じカリフォルニアでも州都サクラメントの近辺や、ロサンゼルスやサンディエゴなどの南カリフォルニアに引っ越していく。

いま、サンフランシスコ付近では、若い独身の人がテック系の仕事を求めて入ってきている一方、30代以上のファミリー層が出て行くという現象があるそうだ。

私が家を買った15年前でもかなり高い気がしたが、それからバブルがはじけたのに、また高騰してこういう状態になった。

私も夫も、特に大きい家とか大きい敷地とかが重要だと思っていないので、どこか別の土地に引っ越して豪邸を買いたいとか思わない。だが、アメリカンドリームというのはいまだに健在で、若い人でも大きい敷地に豪華な家を買いたいという人は多いらしい。

私が今若くてお金がないなら、とりあえずコンドミニアムでも買ってルームメイトを募集して、家賃を取って住宅ローンを払っていくという方法をとると思う。6000万円くらいのコンドミニアムなら、ホームオーナープログラムを使えば200〜300万円の頭金で買えて、月々の支払いは30〜40万の間になる。普通にアパートを借りる値段で、自分の家が持てる(もちろん住民税とかは余分にかかる)。その1部屋をルームメイトに15万円で貸したとしても、ルームメイトは格安の値段で住む事ができて、自分も住宅ローンの支払いが少なくてすんで、ウィンウィンではないか。

でも実際こういう裏技を使っている人は少ない。

アメリカ、特にサンフランシスコのような土地の限られた場所は、新築や再開発の余地があまりないので、住宅の値段は長い目でみれば上がっていく。私の知り合いは、1億円で買ったコンドミニアムが、数年で3億円まで上がった。なんとも夢のある話ではないか。ただ、それを手に入れるのにはある程度の犠牲をともなう。でもその犠牲を払いたくない人が大半なのである。

結局、人生において何を犠牲にして、何を手に入れるか、ということにつきるのだろう。私自身は、偶然にカリフォルニア西海岸でアメリカ生活をスタートしたのだが、いったん住み始めると、あまりの居心地の良さに動く気がなくなってしまった。

私にとっては、とにかく、この地域は、自然の美が圧倒的すぎる。

外に出て、毎日「この世界は美しい」と思える人生は、幸せではないだろうか。

もちろん、日本にいるときも、通学しながら途中で見た朝日を見て同じ事を考えた記憶はあるのだが、目に入るものほとんどすべてが美しいという経験を毎日できるのは、とても幸せなことだ。

もちろん、そんなことは全くどうでもいいと思う人はいるだろう。

ただ、私にとっては、この目に入る景色の美しさというのは、大きな価値を持つ。その美しさの中で生活するために、色々犠牲にしている。たとえば大きい家とか、新しい車とか、贅沢な食事とか、その他もろもろ。上を見ればきりがないし、下を見てもきりがない。

人間、幸せになる能力とは、自分が何をもっとも幸せだと思うのか、その基準を知って、他のものごとすべてをプライオリティに従って切り捨てていける能力だと思う。自分の幸せの基準は、他人から見たら取るに足らない事かも知れない。その軸をしっかり持って、他人に流されずに生きるというのは難しい。

ただ、もしもすべてを手に入れられなくとも、これだけは手に入れたいと思うものがあることは、幸せへの第一歩だと思う。




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