見出し画像

「よくこのガン見つけられたね」と言われました

転院先の先生から、こんな言葉が出たのだった。
ゆきさんのガンは、本当に初期の段階で見つけることができたのだ。
それは彼女が、こまめに検診をしていたおかげである。

40歳の時、自治体から届く乳がんクーポンではじめて検診を受けに行った。
初回の検診から、石灰化しているところがあるので経過観察ということで、6ヶ月に1回の検診を続いけていた。
石灰化はなくなったり、良性のものという診断になったりと経過観察ということは言われ続けたものの、特にそれ以上の進行は見られなかった。

数年後、生検してみようかと先生より提案があり、生検も2回受けた。
特に悪性ということもなかったので、先生から生検の打診があった時、スキップしたこともあったが、数ヶ月前の検診で大きくなっているような気がするということで、また生検を受けた。その時の検診は、エコー見ながら生検するもうまくできず、7回ぐらい刺されたことを覚えている。

検査結果の予約日になる前に、彼女の電話が鳴った、それは病院からだった。
すぐ旦那さんへ相談し、これって、良くないってことなのかなと、内心不安を抱えながら、一緒にふたりで病院へ向かった。

画像3

結果は、"ガンの疑い"

通っていた病院は、全摘のみ、再建もできないという理由から、他の大きい病院へ転院することにした。
転院先の新しい先生から「よくこのガン見つけられたね」と言われたことを、今でも覚えている。
自覚症状も全くない、ガンの大きさも1.1ミリと本当に小さいガンだった。
そう、ゆきさんがこんなに小さなガンを見つけられたのは、定期的にこまめに検診に行っていたからこそなのだ。

転院があったものの、2021年4月の乳がん疑いから、翌月入院・手術、そして、6月頭に病理結果が出た。早期発見ができ、ステージ1、抗がん剤もやらなくていいと思っていたが、結果はトリプルネガティブと診断、できる治療が限られ、再発の可能性が高い。そして、予想もしていなかった抗がん剤治療はすぐ始まった。ECを4回、その後ドセの流れだったが、ドセの1回目の5日後に肺炎、緊急入院2週間をし、彼女の抗がん剤治療はそこで終わった。ドクターストップが出たのだ。トリプルネガティブで限られた治療の中、ドセは1回で終了、それでも彼女の声は明るい。

彼女へ、乳がんになって何か変わったと聞くと、「全然何も変わってないよ」
高校生と中学生のふたりの息子さんを持つゆきさん、多感な時期、母親が病気になって、家庭内で、何か変化があったのではと思っていたが、ふたりの息子さんたちも何も変わってないという。そう、彼女は乳がんになっても何も変わらず息子たちと接している。そこには、彼女ならではの子育てがあったのだ。
どんなことがあっても、どんな状況でも、変わらない毎日を過ごすこと。

ふたりの息子たちは、それぞれ性格も違えば、成長過程で人やモノに合う合わないなど様々なことが起こる。彼女はふたりのそんな性格や考え方、人とはちがうところは個性として、接している。母ゆきさんは、どんな時も、いつも通り変わらず、息子たちの身支度をして家事をして、送り迎えをする。
そう、乳がんになったことは、特に大きなイベントではない、幸い彼女の場合は、副作用がほとんどなく辛い姿を息子たちに一度も見せることなく、過ごせたのだ。
旦那さんからも、あっけらかんとしてくれてて助かると言われるほど…

そうは言ったって、容姿の変化に戸惑うのではと、問いかけると、
「髪の毛抜けることの抵抗感はなかった、元々坊主に憧れてたし、この時がきたか」と、笑いながら話すゆきさん。

そう、彼女は偽って生きることが好きじゃないと、家族にもそう、友人にもそう。

彼女は乳がんになったことも、治療で髪の毛が抜けたことも、誰にも隠していない。ガンになってから、昔の友人にも連絡をしたり、周りの人たちへ自分のガンのことを話したり、本当にオープンなゆきさん、「こういう時、人間の本質が見えるよね」と彼女はユーモラスに話をしてくれた。
さらに、疎遠になる友達もいれば、最近趣味で仲良くなった新しい知り合いから声をかけてもらったり、本当に常に飾らなく、みんなと平等に接する彼女は、とてもステキだ。

自分の人生は、乳がんになって経験値が上がったし、普通がいつでも普通ではないことや、その普通に対して感謝する気持ちができるようになったと…
そして、彼女は、ガンのイメージを変えたい、抗がん剤治療中も本当に元気に過ごせたし、辛いというイメージばかりではない。ガンになって、気持ちが沈むことがあったが、そんな時こそ、沈むのがもったいないという思いの方が強かったと、自身のガンについて振り返った。

そんな彼女の趣味は、5年ほど前にちょうど仕事をやめて、始めた雑貨やアクセサリー作り。元々作るのが好きだったこと、人とは違うものが好きだったり、自分のためだけに始めた趣味は、いつの間にか誰かのために作るものへ、そして、今は販売するまでになった。

画像1

最近の作品のテイストが変わったりした?と聞くと、変わらないよ!っと、彼女の返事は変わらない。ただマクラメ編みは、同じようなものに見えてしまうから、どうそこに個性を出せるかという課題かなと。

画像2

アクセサリー作りにも、彼女のオープンなマインドが存在すると感じた瞬間だった。そう、彼女は、人それぞれ違う、モノもそれぞれ違うという個性を大事にする人なのだ。違いというのは、ひとつの個性、ステキな価値観である。
これからの彼女の生み出す作品がさらなる個性を発揮し、オンリーワンな存在になることだろう、とても楽しみである。


ゆきさんの話を聞いていて、ガンになること、病気になることも、日常でいいんだって思えました。なんだか自分が病気になったことを一大事にしていたのは自分なのかなと気づかされました。そう、病気になっても、オープンに偽りなく生きられたら、きっともっと楽になれるのかもしれないと感じました。自然体ってステキだなって、彼女の話を聞いて、とてもその魅力に惹かれました。ワタシも自分のガンになったことは一個性だと考えているので、本当に個性って大事だと思うゆきさんからのお話でした。

最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?