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2日目の夜【時間に歩幅をあわせてく】

朝起きると知らない場所でびっくりした。そういえば、昨日は目的地の手前で降りて宿に泊まったんだった。あんまり美味しくないコーヒーを飲んでのんびりする。

今日も電車の長旅はずっと続いていて、かたんことんと揺れている。たまにプーっと汽笛のような不思議な音がする。今日は目的地を通り越して海の近くまで向かった。初めて見た北の国の海は冷たくて大きくて飲み込まれそうで少し怖かった。

その土地のご飯を食べて、見たかった海を眺めてからは、また長い時間をかけてもと来た道を戻っていった。何時間も電車に乗ることが当たり前になっていく。普段の生活からは考えられないほどの、ゆっくりとした時の流れに、当たり前のように対応していく自分が心地よくて不安。

無事に目的地に着いて、最後の小さな電車を降りる。青春18切符、お疲れ様でした!

そこからは、街中をひたすら歩く。偶然見つけた古い料理屋さんで郷土料理をたんまり頂き、勢いに任せて梯子酒。途中で日帰り温泉を挟んで引き続き友達と美味しいお酒を飲み続ける。

「えーやばい、たしかに!」
「たのしー!おいしー!」
「しあわせすぎる〜」

キラキラ溢れる能天気な言葉はしっかりちゃんと本心だ。乗っていた電車が途中でとまって、次の電車が来るまで置いてあった短い小説を読みながら無人駅で1時間半過ごしたり、乗り換え時間が短くてご飯が食べられず仕方なくお煎餅を急いで齧ったり、大変なこともあったけど、何はともあれ「しあわせすぎる〜」と溶けていく嬉しい時間のうちなのだ。

ホテルに戻って、最後の夜を過ごしている。

「来年の抱負はある?」

流れる電車内でふと聞かれた、年末らしい問いには、なかなか答えられずに夜がふける。もう峠を超えて朝も近い。夜更かしをして頭が回らない。寝ようかな。

また明日、そのときまた考えよう。

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