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【書評】あやうく一生懸命生きるところだった

韓国で、ベストセラーになったエッセイ。
たまたま手に取りました。
ウソです。
最近、頑張れない、頑張ることの意味がわからなくなってしまった私は、こういう本を求めていました。
そして、大切な韓国人のお姉さんが、人生の岐路に遭遇し、私は混乱していました。

本の話の前に、私の気持ちの整理を。
韓国人のお姉さんと出会ったのは、今から約3年前。
日本ではないところで、コロナのせいでマスクをしていて、年齢は読み取れなかったのですが、おそらくは同世代と思いました。
そして、私の日本の故郷にお姉さんが留学していたことが分かって、一気に距離が縮まりました。
メッセージしたり、お互いのお仕事でサポートしたり。

折しも、コロナのせいで、お互いに母国に一時帰国はもとより、外出すらままならない退屈な毎日。
やっと少し外出が解禁されたところで、島への旅行に誘ってくれました。
私は嬉しくて嬉しくて大喜びでした。
それからも、お姉さんは私のことをいつも気にかけてくれて、大切にしてくれました。

それから約半年後。
私は突然、日本に帰ることになりました。
最後のサヨナラのとき、お姉さんは帰国を喜ぶ私を見て、寂しそうに言いました。
「残されるほうがつらいんだよ」
その言葉に心が凍りつきました。
私は今まで、去ることばかり繰り返してきたな。
見送る側の気持ちを考えたことがあっただろうか。
自分勝手な私に、失うことの寂しさと、切なさと、やるせなさと、そして何より、うらやましいという気持ちと抗議を、その潤んだ濃い黒い瞳が訴えかけていました。
私は目を合わせていることがつらくなって、うつむきました。

私は日本に帰国して、久しぶりの日本生活を満喫しながら、時々、韓国人のお姉さんと連絡するのを楽しみにしていました。

実はお姉さんは、ずっとずっと職場の人間関係に悩んでいました。 
ずっとずっとずっとずっと長い間、理不尽な嫌がらせに耐えていました。
私もそれを知っていましたが、同じ職場にいないので、お姉さんの話を聞いて、一緒に腹を立てたり、悲しんだりすることぐらいしかできませんでした。

突然のメッセージは、仕事を辞めるという連絡でした。
お姉さんは、1週間ほど韓国の故郷に一時帰国していたそうです。
ちょうどお姉さんが一時帰国する前くらいに、私にメッセージが届いていました。
でも、そのメッセージは送信取消されていて、読むことかができなくて、連絡しようか迷っていましたが、忙しさにかまけて、そのままになっていました。

その時、お姉さんは決断していたのです。
もう、仕事を辞めて、国へ帰ろうと。
この一時帰国で、すべてを決めようと。

あんなにお世話になったのに、みんなが敵になって追い詰められていた私を、お姉さんだけが守ってくれたのに、私はそのお姉さんが苦しんで、つらくて、耐えきれなくなって、最後の決断を下すその瞬間に何もできなかったのです。
否、虫の知らせを感じていたのに、それを無視したのです。

なんて、都合のいい。
なんて、残酷な。

私は自分を責めました。
あの時、メッセージの送信取消に気づいた時、連絡をしていたら。
すぐに、お姉さんに会いにいっていれば…
こんな悲しい結果にはならなかったかもしれない。

いや、きっと違う。
これでいいんだ、これがいいんだ。
お姉さんには休息があってもいいんだ。
こんなに長い間、1人で苦しんで我慢してきたのだから。

お姉さんは自分を責める必要ないし、私も自分を責めることはない。
ただ、なるようにしかならない。
今の自分を大切にできるのは、自分しかいない。
そう思わせてくれた1冊でした。

ありがとうございます! 短編集の制作に使わせていただきます!