痺れるぜ。🇮🇹スタートアップで役員面談
緊張のフィードバック面談
サボ太郎がイタリアのスタートアップでインターンとして働き始めて、もうすぐ二ヶ月経つ。このインターンの契約は来月いっぱいで満了となる。そろそろ今後について気になり始めたタイミングで、COOのマッツからSlackが来た。
マッツ「今日時間あるかい?トニーも含めて少し話がしたいんだけど。」
CEOのトニー、COOのマッツ、サボ太郎の三人での面談なので、大体内容は察しがつく。今後の契約をどうするかという話だろう。イタリアでフルタイムの仕事を見つけるのはイタリア人でも簡単ではない。まして、英語でのコミュニケーションですら完璧ではない日本人であればなおさら。これまでの働きぶりが認められない限り、フルタイム契約はありえない。サボ太郎は急に不安になり胸がキュッとなった。もし、ここでネガティブな結果になったら、また一から仕事を探すことになるからだ。なかなか痺れる状況だぜ、サボ太郎。
質問の嵐
サボ太郎は大きく深呼吸をして、時間通りにリモートMTGに入った。トニーもマッツも入室してこない。どうやら、投資家とのMTGが長引いていて遅れるそうだ。結局、50分遅れで面談が始まった。
マッツ「まず、トニーと話をして、サボ太郎、君の働きに満足している。君と一緒に働けて嬉しい。基本的に、うちとしてはポジティブな姿勢だ。PMのポジションはうちにとってとても重要だ。だから、いくつかクリアにしたい点があるんだ。」
ポジティブな結論で、サボ太郎はほっと肩を撫で下ろした。だが、マッツの質問にうまく答えないといけないので、まだ油断はできない。
マッツ「これからのキャリアについてどう考えているの?」
サボ太郎「これからもPMとしてキャリアを進めていきたいと思ってるよ。特にプロダクトのアイディエーションは最も好きなパートだからさ。それに取り組めている今の仕事をエンジョイしているよ。」
マッツ「いいね。何度も言うようだけど、PMはとっても重要なんだ。PMには長く働いてもらいたいと思っている。日本に帰ってしまう可能性はあるのかい?」
サボ太郎「少なくとも5年、10年は日本に帰るつもりはないよ。イタリアかどうかはわからないけど、ヨーロッパにいるつもりだよ。」
マッツ「そうか、それなら安心だね。うちで働いてみて、どう?良い点と悪い点を教えてほしいんだ。」
サボ太郎「良い点はオーナーシップを持って働くことができることかな。前の会社ではマイクロマネジメントがあって、とても働きにくいことがあってね。悪い点は、どこにどの情報があるのか分かりにくいところだね。調べたいことがあるとき、ちょっと困るんだ。」
マッツ「なるほどね。悪い点については、まだサボ太郎がインターンだから開示していない情報もあるんだよ。だけど、言いたいことはわかったよ。」
マッツ「ところで、うちは一応英語でコミュニケーションをとれる会社だけど、やっぱりイタリア語が第一言語なのは気づいているよね。複雑な議論の時はイタリア語を使ったりする。その点について、どう思ってる?」
サボ太郎「それは仕方がないことだと思ってるよ。イタリアに住む以上、イタリア語は勉強しないといけないと思ってる。時間はかかるとは思うけど、イタリア語を習得するつもりだよ。」
マッツ「OK。それから、知っての通りうちのクライアントの多くはイタリア企業だ。今後PMとして働いていく上で、ユーザーとの間にトニーやマーケティング、カスタマーサクセスのメンバーを挟むことになると思う。それについてフラストレーションを感じるかい?」
サボ太郎「いや、特にフラストレーションは感じないと思うよ。もちろんイタリア語を習得して、ユーザーとダイレクトにコミュニケーションを取れればベストだけど、疑問があればみんなを介して聞くこともできるし、なんとかなると思う。」
CEOからのフィードバック
マッツは納得した様子で質問を終えて、トニーに他に何かあるか話を振った。サボ太郎はトニーの仕事を一部引き継いでいるので、頻繁にコミュニケーションをとっている。なので、トニーが一番サボ太郎の働きぶりを知っているのだ。
トニー「質問とその回答についてはクリアだよ。」
トニー「せっかくだから、これまでの仕事についてフィードバックをしたいんだ。まず、我々がポジティブに評価した点はプロダクトの改善アイデアだ。サボ太郎に任せたモジュールについて、ユーザー分析やタスク分析をして機能やインターフェースのアイデアを提案してきてくれた。これは、とてもよかった。」
トニー「それから、開発プロセスの改善提案もよかったね。サボ太郎が加わることによる開発フローの改善提案をしてくれたよね。今のうちの開発プロセスがベースだからクリアだったし、提案してくれたアイディエーションフェーズのプロセスは今後採用したいと思っている。」
トニー「それから、ソフトスキル面で言うと仕事のオーナーシップを持てるのが良いね。独立して仕事を進められるし、ディスカッションが必要な場面では適時話せているから心配しないで仕事を任せられるね。僕はCEOの仕事に集中できるから、とても助かっているよ。」
トニー「あと、そうだね。一つ改善点を挙げるなら、場合によって考えすぎなところがあるね。例えば、ペーパープロトタイプの作成でA案とB案を提案してきたことがあっただろ?あれはデザイナーに任せた方がいい。君にはもっとコンセプトを定義するところに集中してほしいんだ。」
トニー「とにかく、サボ太郎、君の働きには満足している。一緒に働けることを誇りに思うよ。」
サボ太郎「ありがとうございます。」
トニー・マッツ「今日は話せてよかったよ。特に質問がなければここで終わりにしよう。これからパルマに移動しないといけないからね。あっと、今後の契約についてはプロポーザルを作ってそれをベースに後で話し合おう。じゃあ、またミラノで会おう。チャオ。」
サボ太郎「ありがとうございました。チャオ。」
面談を終えたサボ太郎
こうして、エグゼクティブとのフィードバック面談が終わった。ポジティブな評価を得て、フルタイム契約ももらえそうでサボ太郎はほっとした。サインを終えるまでは油断できないが、これで、しばらくヨーロッパでキャリアをつくれることになりそうだ。
妙なことに、サボ太郎はうれしい気持ちと同時に不安を感じた。なぜ不安を感じたのか、サボ太郎はうまく分析できなかった。おそらく、フルタイムコミットのインターン契約なのに、フルリモートワークをいいことにちょいちょいゴロゴロしてる(サボっている)ことに申し訳なさを感じているのだろう。そして、その成果に対する評価が思いのほか高かったことに困惑しているのではないだろうか。
サボ太郎の仕事は頭脳労働だ。それは時間ではなく成果で評価されるべきもの。だが、日本の長時間労働で生産性の低い環境で育ってきたサボ太郎は、まだまだ労働時間の呪縛から抜け出せないのだった。
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