【ホラー小説】鈴のね

こんばんは、移常 柚里です。

タイトルに【ホラー小説】と記しましたが、夜に投稿する内容ですので、読みたくない方はくるっとUターンでお願いします。

そもそもこれはホラーの部類なのか?
と思ってはいますが、私自身、こういう内容を寝る前に読むと夢に出てきてしまうタイプの人間ですので、私は読みたくないと思いつつも投稿しています。

まあ、夏の夜ですしね。こういう内容も書いてみたくなりました。

では、前置きはこの辺にして、何を読んでも平気だよ、という方は是非お読みください。


目が覚めたら、またお会いいたしましょう。


ガチャ。

チリン…チリン…

玄関の鍵を閉めると、奇妙な音が小さく響いているのが聞こえた。
これは……鈴の音か。

チリン…チリン…

近づいて来るその音を不思議に思っていると、うちの前の道を、女性が歩いているのが見えた。

なんだ、あのヒトの鈴か。
家の前の道は、隣の家の塀から先は見えないから、姿が確認できるまでどこから音がしているかわからなかった。

それにしても、なんだろう。この違和感…


そんな事を考えていると、その女が勢いよくこっちに振り向いた。

目を背ける余裕もなく、私は目を合わせてしまった。

その表情に、背筋が凍りつく。
誰かに助けを求めたいのに声も出ず、指先が震えるだけだ。

チリン…チリン。
嫌な音と共に、あの女が近づいてくる。

逃げたい。
逃げないといけない。
それなのに体は動かない。

頭が混乱しているうちに、私は気を失った。


ーーー


ガチャ。

外は薄暗く、空気がどんよりとしている。

「いってきます。」
なんとなく、小さな声で呟く。

チリン…チリン…
鍵をかけていると、どこからか鈴の音が聞こえた。

その音にすぐに体が反応した。
体が“逃げろ”と言っているような気がする。

だけどいくらドアノブを引いても押しても玄関は開かないし、外へ出る唯一の道の方から音が聞こえている。

ひとまず道からは視覚になるポストの裏に隠れよう。

出来る私の姿が見えないように、ポストの裏に身を小さくして隠した。

チリン…チリン…
鈴の音が近づいてきて、どうやら家の前の道を通っているようだ。

…チリン…チリン
その音が徐々に遠のいていき、ホッと安堵する。

どうやら通り過ぎたみたいだ。


…チリン…チリン

まただ。
また、近づいてきた。
しかも、初めに歩いて来た方と同じ方向から。

…チリン…チリン
だんだん音が近づいてくる。

また、家の前を通り過ぎるまでここにいよう。

…チリン。
音が止まった。

あれ?もう通り過ぎたのか?
私は塀の際から少しだけ顔を出した。


あの女は、こっちを見て立っていた。

薄暗い道の真ん中で立ち止まり、私がここにいることを初めから知っていたかのように。

ああ、もうだめだ。
そう思った瞬間、また記憶を失った。


ーーー


…ガチャ
玄関の扉を閉めた所で、しまったと思った。

私はこの後、自分がどう感じるか、わかっている。
『外は薄暗く、空気がどんよりとしている。』

その次に
『いってきます。』
そう、小さくつぶやく。


ああ、だめだ。
私はまた、眠ってしまったのか。

この夢の中に来たら、あの女に見つかるまで起きられない。

チリン…チリン…
来た。

どうにか見つからずに逃げないと。

ひとまず、1番近いポストの裏に隠れた。

…チリン…チリン
よし、取り敢えずはやり過ごした。

ただ、またあの女はまた戻って来る。

…チリン…チリン

そして、音が止まるはず。

…チリン。
やっぱり。
まだだ。まだ出ちゃだめだ。

……チリン…チリン
よし、音が遠のいていく。

次の音が聞こえるまでに、出口の方へ移動しなくちゃ。

私は身を屈めたまま駐車場まで走り、車の影に身を隠す。

…チリン…チリン

たかが数メートル走っただけなのに、肩が大きく揺れ、息遣いが荒くなる。
そもそも、夢なのに息が上がることってあるんだ。

…チリン…チリン

いやいや、そんなことを考えている場合じゃない。

…チリン。

あの女から、なんとか逃げなくちゃ。


ああ、だめだ。
すでに車の横には、あの女がこちらを見下ろして立っていた。


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