マガジンのカバー画像

坊ちゃん文学賞 応募作品

2
坊ちゃん文学賞に応募した作品です。 少し不思議なショートショートのつもりで書きました。 少し歪んだ少女の恋の話です。
運営しているクリエイター

記事一覧

貯金箱釣り

貯金箱釣り

「料金は一時間千円です。もし時間内に一匹も釣れなかった場合はお好きなミニ貯金箱を差し上げております」
 ビニールプールの中には握り拳大のカラフルな魚が泳いでいた。
「本物の魚に見えますね」
「泳ぐ貯金箱、『ぱく貯くん』です」
 赤い出目金が水面の上まで来て、ぱかっと口を開けた。
「あっ」
「見えましたか? そのぱく貯くん達にはあらかじめ五十五円分を貯金してあります」
「そうなんですね。可愛いです」

もっとみる
遺骨にドロップ

遺骨にドロップ

 ピアノ教室の清水先生が事故で死んだ。誰にでも優しく、分け隔てなく真摯に向き合ってくれる先生だった。今日はその先生のお別れの会に親友の茜と来ていた。茜とは高校のクラスが一緒で、偶然同じピアノ教室だったこともあり気が許せる数少ない友達だった。
「先生、何で飲酒運転なんて」
 瞼を腫らした茜は、普段の先生からは想像出来ないのは当然だった。先生を知る人間は皆口をそろえてあんな慎重な人間がなぜ、と疑問を口

もっとみる