見出し画像

≪わたしごと64≫罪の文化・恥の文化

日本人って何だろう?と思って、米国の人類学者ルース・ベネディクトの "菊と刀" を読んでみた。この著作は戦時中の調査研究をもとにしていて、日本文化や価値体系の解明が試みられたものだ。

賛否両論あるようだが、実際に行った事の無い国の文化へのその洞察力と観察力に驚かされ、考えさせられる所、耳が痛い所、ハッとさせたれる所が満載だった。

少しづつ咀嚼しながらぽつぽつ書いていきたいが、まず有名な "西洋の罪の文化・日本の恥の文化" について考えてみた。

その趣旨は、一人一人が内面的な罪の自覚に基づいて行動を律しているのに対して、日本人の恥の文化は,世間という外的な要因に基づいて自らの行動を律するというものだ。さらには、罪は許しを請えば消え去るのに対して、恥は許しを求めても消え去らない。しかし、世間に晒されなければ恥に思う必要は無い。

この様な対比が為されていて、なるほどと思った。これをもっと個人の感情面への影響という観点で考えてみた。

罪と恥は、言い換えると、罪悪感と羞恥心ではないだろうか。羞恥心をWikipediaで調べてみたら、この様な一文があった。

羞恥心はしばしば罪悪感と比較される。罪悪感が自己の起こした特定の行動の相対的評価を問題視するのに対し、羞恥心は自己全体への否定的評価を問題視する。(Wikipedia) 

これはなんだか重要な事を言っているような気がする。それは、罪というのは特定の行動の相対的評価であるのに対して、恥というのは自己全体への否定的評価を問題視するという事だ。

それは自分の人格を否定するか、自分の行った行動の部分だけを問題にするかで、どっちの見方をするかによって、結果が全然異なる。

菊と刀の中で、ベネディクトはこのような内容を言っている。

日本人は失敗すること、また人から悪く言われたり拒絶されたりすることに対して傷つきやすい。その為、他人を責めるより自分自身を責めがちである。

確かに日本人は、間違いや失敗、受け入れられない事を極度に恐れる。それは、恥を掻きたくないからだ。どうして恥を掻きたくないかというと、上のロジックで行くと、自分の人格に✖をしてしまうからだろうか。

逆に言うと、西洋の人は間違いをしても失敗しても受け入れられなくても、自己肯定感がありそこに傷はつかないので、人格は守られるという事かも知れない。

これは一般論の話で、実際ヨーロッパ人でも受け入れられないとへこむ人もいるし、誰でも失敗したくないとは思っている。でも、多分もっと間違っても良い風潮だし、確かに根拠なく自分が悪いと思い込んでしまう人は少ないかも知れない。

更にベネディクトは、岡倉由三郎の "日本の生活と思想" から、"日本人は清潔さを好み、またその裏返しとして汚れを嫌う日本人のいわゆる心的特性" という引用について、こう述べている。

本来人は、自分が侮辱されたと考えない限りは侮辱されようがない。また人を汚すのは、本人の内部からにじみ出てくるものであって、その人に対する悪口や嫌がらせではない。だが日本人の価値体系はそのようなことは教えていないのである。

ここで共通しているのは、間違いや失敗を恥だと思って自分にマイナスをつけてしまうのも、侮辱されたとか汚れた・穢れたというのも、自分の判断だということだ。外部からやって来るものでも、客観的な事実でもない。自分はそう捉えるということだ。

" 価値体系" と書かれているが、正に教育は何に価値を置き、それをどう促していくのかという事を考えなくてはいけないのだと思う。どこを直せば、個人のポテンシャルがもっと活かせて、どうしたら、私たちは良く生きられるのだろう?

話はずれるが、日頃思う所を書いてみると、私はもっと" 楽しい" の価値は見直されるべきだと思う。楽しみや楽しいと思う事をすることは、単なる人生の横に置かれるエクストラでは無い。 

楽しいとかワクワクするとかという事はどうして大事かというと、それは自分の心と繋がっているからだ。ポジティブになれるその事は、自然とやるし、もっとやりたいと思うし、それに関連する事もやってみようとする。仲間にも出会うだろうし、学び合うだろう。

"楽しい" が人からの有り難うにつながって、"嬉しい" になれば最高だし、それが生き甲斐だったり、この現代に生きる力となるのではないだろうか。そういった事を、自分に合う形で行動して自分に合う生きる方法を獲得していくのが、主体的に生きるとか自分軸で生きるという事なのではないだろうか。 

長くなってしまったが、色々考えさせられる事の多かったこの著書について、また他のnoteで書いてみたい。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?