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いいから黙ってCHAIを聴け、話はそれからだ。

 今やYouTubeでの活動はいわゆるユーチューバーのものだけではない。芸能人も積極的に活動範囲をYouTubeまで広めている。芸能人がYouTubeに挙げる動画は、テレビを介していない分、より当人のありのままの姿を映し出したものが多く、ゲーム実況やコスメ紹介系、暴露系などそのジャンルは多岐にわたる。そんな中最近僕がよく見るのは、四千頭身・都築拓紀氏の個人チャンネルだ。ファッションにこだわりを持つ彼の挙げる動画は、10分服紹介や服好きあるあるなど、彼の趣味全開のものが多い。

向かって左が都築拓紀氏
ワタナベエンターテインメント公式HPより

 いつも楽しく拝見しているのだが、最近見たある動画のコメント欄を見て、一介の服好きの私ははらわたが煮えくり返ってしまった。物凄く脱線するが「煮えくり返る」とかいうはらわたにしか使えない動詞なんだよ。他にも使い方知ってるぞという有識者は是非愚生に教えて頂きたい。

 話を戻そう。僕が憤ったコメントが寄せられた動画は『何か言いたげな服好きの人間』というもので、ファッションのトレンドばかりを追う友人を服好きがやんわりと揶揄するというものだ。ここのコメント欄がまぁひどかった。もちろんほとんどの視聴者がこの動画をネタだと分かったうえで楽しんでいるということは念を押しておく。

「安っぽいセットアップとかオープンカラーシャツ(笑)着てる大学生を見る俺の心で草」「これに関してはマジで思う」などが連なるコメント欄で、中でも今回の記事を書く原動力をくれたもはや感謝すらすべきコメントは、
「都築、君は容姿に恵まれてない分、ファッションを頑張っている」
である。これにはアルカイックスマイルに定評のある僕も閻魔にならざるを得なかった。

 イキっている自称服好き達に3点伝えたい。
 第一に、トレンドを追う人を馬鹿にしてはいけない。各メディアが「今年は○○がくる」「今○○がアツい」と大々的に報じているのだ。ファッションに関して右も左もわからない人々が、とっかかりとしてその情報を頼りにするのは当たり前だろう。そこを批評する暇があるのならば、服に興味を持ったという事実を受け入れ歓迎すべきではないだろうか。
 第二に、この動画は、人のファッションを揶揄する人を更生させるためのものだと思う。「気持ちはわかってしまう、でもこれはよくないよね」という感情にさせたいはずだ。都築氏は共感のみを求めているわけでは決してない。無条件で「わかるわかる」と言うのは、自らが更生される対象だと挙手するようなものだ。もう少し考えてから発言したほうが良い。
 第三に、ファッションを楽しむのに容姿は一切関係ない。男性だろうが女性だろうが、高身長だろうが低身長だろうが、子供だろうが老人だろうが、日本人だろうがアメリカ人だろうが、一重だろうが二重だろうが、着たい服を着ればいい。そこになんの制限もない。そして何より、容姿に劣っているも優れているもない。


 このままの熱量では第八十五くらいまでいってしまいそうなので、話題を一度変えよう。
 皆さんはCHAIというバンドをご存知だろうか。双子のマナ(Vo.&Gt.)とカナ(Vo.&Key.)、ユウキ(Ba.&Cho.)、そしてユナ(Dr.&Cho.)からなる女性4人組バンドだ。彼女らの素晴らしいところは、双子である事を活かした親和性の高いツインボーカルや、それを支えるグルーブのあるリズム隊など山ほどあるのだが、やはり特筆すべきは全人類を抱擁する歌詞だろう。

髪型超かっけぇ~~
CHAI公式HPより


「NEOかわいい」「コンプレックスはアートなり」という彼女らのコンセプトを前面に押し出した楽曲に今まで何人の人が勇気づけられたのだろうか。かくいう僕もその一人で、更に誰に対してもそういった考えが出来るようになれた。NEO、つまり新しいかわいさを提唱し、コンプレックスも個性のひとつであり、ありのままの自分が一番良いと気付かせてくれる。そんな彼女らの曲はどれも名曲ばかりだが、印象的な歌詞をいくつかあげよう。

What a cute girl I am! わたしがわたしをかわいくするの
What a cute girl you are! Everybody is wonderful  All right!
アイム・ミー/CHAI
目ちっちゃい 鼻低い くびれてない 足太い
ナイスバディ オーライ! NEOかわいい! Change the world!  
N.E.O./CHAI
私の思いは厚めのファンデーションを落として
So fly away  Your charming is freedom
飾らない素顔の 私を認めてよ
So fly away  Your charming is freedom
sayonara complex/CHAI

 そうなのである。結局全人類はみなかっこよく、みなかわいいのである。「二重のほうがかわいい」「色白のほうがかわいい」「痩せているほうがかわいい」などと決めているのは美容業界だ。商業的なかっこよさ・かわいさに踊らされてはいけない。容姿の優劣でファッションや化粧を楽しんでよいかどうかなんて決まってないし、そもそも容姿に優劣なんて全くない。それぞれの個性を持った全員が素晴らしく、全員に自分を好きになる権利がある。そしてさらに好きになるために努力する権利がある。
 そんな当たり前のことをわかっていない人々がまだまだいることを悲しむとともに、CHAIをはじめとする自分に自信を持つ人々のかっこよさに改めて敬意を感じた良い機会だった。


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