見えない唄
今日はもう夕飯も済ませていて、本当はそのまま寝るつもりでいた。
でも、日付が変わるまで少し時間があって、それまでが何となく『余っている』ように感じた。
そうして、また気まぐれにこのページを開いている。
最近はといえば、相変わらずろくでもない大人を相手にしながら、いろんな人の日常を垣間見ながら、ふらふらと迷子をしている気分である。
いつの間にやらバンドメンバーが別バンドを組んでいたり。
ダイエットを頑張っている知り合いがとても可愛くなっていたり。
相も変わらず世界というのは勝手に回っている。
まぁ、こちらもこちらで人知れず勝手に歌詞を綴ってはいるし、スピーカー作ったり線作ったり。人知れず唄を歌ったりしている。
よくよく考えてみれば、ある意味普通に戻っただけである。
皆人の見ていないところなんて沢山あるし、見られたくないこともあるだろうし、その時間全てで何かが出来ていく。
昔の私はといえば、何となくそれをすべて知りたがってしまったし、知っても欲しかったんだなと思う。その自分の作品やらなんやらの中身を見せる人間になりたかったようで、その実ただ通信媒体の海に溺れていたのかもしれない。
ある意味、今すごく静かに日常が進んでいる。正直退屈だとは思うし、これに慣れてはいけないなと思うところから、やはり自分は人と何かしているほうが好きなのだなとは思う。
しかしその実人望が皆無に等しいというか、そもそもあまりに影が薄すぎるので、結果的に一人で勝手に日常を回している。
特に最近はバンドのリハもないし、仕事中に知り合いが来ることもめっきり減ったため、何となく、面白さというものはなくなった。
その代わりというか、反動なのか、家が充実し始めている。
防音カーテン買ったり、掃除機買ったり、ソファもらったり、今これを打ち込んでいるPCも実は2か月前くらいに買い替えたものである。割と高性能なのでそこそこのグラのゲームが余裕でできる。やる暇も大してないが。
そうしてまた一人での自由を広げていて、何から身を守るでもなく閉じこもり始めている。殻の中、というよりは教室の中でいう廊下側の端の真ん中くらいでぼさっとしている感覚である。別に距離をとるでもなく、そこかしこに誰かの日常があるけれど、踏み込まれもせず、別に無理に踏み込むでもなく、何となく閉じた虚無がある感覚。
そんな中で、なんかやってみようかな、というのが、ある種自分の創作の原点なのかもしれない。
別に知られるでもなく、でも何もしないのも勿体ないし、その中で生み出せるものがあるならと。
『価値』というものは、実際問題『共有』を伴って意味を成すものであるが、上記したような感覚と、最近の自分とで言えば、そこの『共有』はすっぽり抜け落ちた。否定が怖い、というより、そもそも否定されるほど今の自分では触れられることもないので、一喜一憂すらなく別に共有する意味がない。
勿論自分の中で良いな、と思ったものから具現化していくわけだが、最近はそこの具現化の部分がどうもうまくいかない。鈍ったか。
そうして誰も知らない、見えない唄がまた一つ増える。
本当は、歌詞だけでも公開してみればいいのかもしれない。ある意味その時点でも自分の気に入った散文の形は成しているのだから。
それでも、その気が起きないと悟ったとき、自分はまだ音楽を作る人間、及び歌う人間なのだな、と何となく思う。
昨日だったか、一昨日だったか、『人について』という曲が出来た。
曲が出来た?いや、構想と歌詞が出来た時点で曲が出来たとするのも大分総計な気もするが何となくできた気になっている。またしても『共有』を伴わない作品である。
そのうち伴わせるつもりはあるが、何時なのか、という確約はできない。なぜなら今の私はあまりに無干渉なのだから。
本当はもう少し干渉しようかなと、色々リプライを送りたいようなこともちらほら見えたし、好きなものは肯定したいし、と思うこともある。
が、ここまで無干渉をしてしまうとどこか急に干渉することに対して違和感を感じてしまう。
確固たる意見も、考えも、自分の中にあるが、自分が分かってればいいや、というか。
自分から見たら阿呆なこと言ってる人もそのうち勝手に阿呆見ればいいや、みたいな。
そうやって、動じなくなったことは良いことかもしれない。
けれど、そうして忘れられていくことで、自分の中に住む強烈な嫌悪が、全てを止めたくなったりする。
何度でも言うが、自分は音楽と、周りの好きな人たちと楽しいことが出来なくなるようならこの世に興味はない。
内心、忘れられた時点で、『好都合だ』と身を投げたっていい。
そう考えると、何時までも無干渉ではいられない。
面倒でも、まだ背負うべきものがあるので、身勝手に投げるわけにはいかない。まだ約束に繋がれている。
そうして、また見えない唄は増える。
これら一つでも、誰かの唄に出来たら変わるだろうか?
そんなことも思う。
しかし、今はまだ私の唄が増える。
とても曖昧で、しかし大きな感情を持った、私の唄が。
この部屋で、人知れず。
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